「先生、1ヶ月もの間、殆ど横になったきりで動けず大変なことになってました。」と診察室に入るや否や元気な一声。85歳になるTさん。長年、大動脈弁狭窄症による心不全の治療で診ている患者さんである。「何が大変なことでしたか?」「先月、布団を押入れに上げようとしたら、そのまま後ろ向きにひっくり返ってしまいました。骨折はなかったようですが、背中などあちこちが痛くて動くのが苦痛で、この1ヶ月間は殆ど寝たきりに近い状況でした。」「Tさん、大変なことが起こったわけではないですね。後ろ向きに尻もちをついてひっくり返ったくらいのことなど大した問題ではありませんよ。しかし、この程度で1ヶ月も寝込むことになったのは、もはや体の方が大変なことになっているわけですね。自分では元気と思っていても、体はかなり大変なことになっているので、これからも無理せず体のかなりの老化を自覚しないといけませんね!」85歳で布団の上げ下げをするなんて、凄い時代になってきましたね。そういえば、小生の84歳になる母親も自転車に乗って毎日元気に買い物に出かけている。半世紀前では想像もできない現実である。脚元に注意して、いつまでもお元気で!