10月26日に「作るぞ宣言」をしてから間が空いたが、ようやくほぼ日週間手帳カバーが出来上がった。
手帳とメモの2冊が収納されている。
狙い通りの薄さになった。カバー分を含め12mm厚なので、背広のポケットに容易に入る。
前の週間でないほぼ日手帳は25mmもあって、とても入れられなかったのだ。
自分の制作物に製品名をつけることはあっても、作品名は滅多につけないのだが、これには「10・5(イチマル・ゴ)」という作品名を付けた。
その理由は手帳作りの構想過程を紹介することによって明らかになる。
設計にあたってまず全体像をつかむために、手帳本体の寸法を測っていたら、カバーのサイズはタテ15cmヨコ10cmでいいことが分かった。
ちなみに、私は人に好きな数字を問われると「10」というくらいに10が好きで、「ひとケタでなければダメ」と返されると「じゃあ、5」というくらいに5が好きである。
「これも天からの何かの指示かも」とお得意の都合のいい空想をし、いっそのこと「15」も合わせて「10」と「5」から構成されるモノにしてしまえ、と製品コンセプトを定めた。
さて、タテヨコ以外に10と5を盛り込むにはどうしようか、と考えて以下のようにした。
・ ペンホルダーの全長を10cmとする
・ メモ等を挟む内側の差し込みのサイズをタテ10cmヨコ5cmとする
これだけだとイマイチ面白くない。ということで「背」の部分を3分割し、5を3つ作ろうと考えた。
構想しているうちに、「これでこの手帳が完成したら、どこでも5cmと10cmを測ることができるぞ」などということに気づき、「待てよ、どうせ『測れる機能』があるなら目盛りをつけてしまえ」という発想に至り、1cm(実は10mmと言いたい)間隔の目盛りを打刻することにした。↓
この手帳には前手帳の作成時に編み出した「実用新案」である「スナップしおり」を引き続き設置。
前の手帳ではこのしおりで月間スケジュールと日次ページを行き来したが、今回は週間スケジュールとメモの直近ページの行き来が簡単にできるようになる。
補足すれば、このしおりにつかったスナップの直径は10mmであったりする。
ペンも新調した。
選択に当たっては、
・ 全長が15cm未満でありつつ、できるだけ15cmに近いもの
・ ペンホルダーが10cmもあるので、出し入れがしやすい直線的デザイン
・ ペンホルダー収納時の「収まり」を考慮して、ペンクリップの差込位置がペンの最上部から25mm程度のもの
・ できれば多機能ペン
を条件とした。
定規を片手に大手文具店のペン売り場をあやしく徘徊し、結果、プラチナの「DOUBLE 3 ACTION (型番:MWB-1000BS-9)」という、条件にぴったりのペンを見つけたのだった。ボールペン黒赤2色+シャープペンの多機能ペンである。価格は税込み1050円とリーズナブル。
くしくも軸径は10mm。「まさに天の巡り合わせ」と文具店でひそかに小躍りした。
例外はあるけれども、自分のモノづくりにおいてはいかにも装飾然とした仕掛けを施さないようにしている。
色は、オジサンサラリーマンのビジネスユースということで早々に「黒と茶の組み合わせ」と決めていた。今回、3分割した「背」の真ん中だけちょっと違う色にした点については装飾的意識が入り込んでいるのだが、それもあくまで「味付け」くらいの意識である。
コンセプトを定めて設計し忠実に製造していくと、装飾とは違う方向でデザインの独自性とか機能美のようなものがかもし出されてきて面白い。
突飛でなくとも独特のコンセプトがありさえすれば、オリジナリティのあるモノが出来上がるのだ。
振り返れば、自分の家づくりもそのような過程で独自性をかもし出したように思う。コンセプトを定めながら建築家を選び、装飾的仕掛けがほとんどない家にもかかわらず、装飾的仕掛けが随所にある周囲の家より存在感のある家になっていると思う(たぶん)。
さて、今回の反省は工程管理である。
手帳本体を購入した時点で、年内に仕上げたい手ごわい受注案件(ナイフシース作り)をひとつ抱えていたのと、年賀状の作成、餅つきをこなせばならず、休日にまとまった時間がとれなかった。
通勤途中を構想時間として、昨年内に基本構想は出来上がっていたが、そのまま年越しとなり、正月は例によって高額の酒税の納税作業に励み、3日の夕方からやっと型紙を作り、染色をし、4日に裁断から縫製、仕上げまでもっていった。5日の仕事始めに間に合わせるためである。
4日も年始回りの来客があったり、お年玉を使うための子供の買い物につきあったりで時間はあまりなかった。したがって「やっつけ」的仕事になってしまった。もう少し時間をかけて丁寧にやりたかった。来客中にちょっぴりアルコールを摂取してしまったので手もふらついていたかもしれない。
建築のように設計・施工分離なら監理者が怒ってくれたことだろうが、設計・施工(製造)・監理一括どころか、施主までも同一というモノづくりでは、油断すると妥協が入り込むのであった。
デザイン的には構想時にイメージしたより「シブい」感じになったので、もっと丁寧にやっていれば高級感を付加できたろうに、と悔やんでいる。
人から依頼の声がかかったときに、「あらかじめ納期を約束できない」としているのはこうした事態を防ぐためである。プロとしての環境がないのでプロ的な流れで仕事はできないのだ。したがって時間的余裕のある奇特なやさしいクライアント(例1、例2)からしか受注できないのである。