財布を新調した。
かれこれ10年も使っている現在使用中の自作財布は一部に「ほつれ」もあり、換え時になっていた。
痛んできたなと意識するようになって半年以上経っていて、いつ作ってもいいようなものだが、この時期に新調したのには意味がある。
それはなぜか?
財布は春に新調するのがよいと聞いていたからである。
「春財布」すなわち「張る財布」という縁起かつぎらしい。
たくさんお金が入って十分に張ってくれることを願って3月から使う財布を作った。
さて、「財布はピストルと似ている」と言ったのは作家の赤瀬川原平である。
玉を込めて懐に忍ばせておき、いざというときにさっと取り出して打ち出すという使用過程をなぞらえていた。その文章を読んで、「たしかに」と膝をたたいた記憶がある。
その赤瀬川原平の言葉を思い出し、取り出しやすく、玉(お金)を込めやすく、撃ち(出し)やすい財布を作ろうと思った。
本体を取り出しやすくするにはスリムな形状にし、厚みや突起物を抑えればいい。その上でお金を入れやすく出しやすくする。
市販の財布でもそこまでは実現できているものが数多くあるので、あらたな工夫をする必要はないようにも思える。
しかし、工夫余地はまだ残っている。それはカード類の収納だ。
財布の中には様々なカードが入っている。それぞれの用途を考えるとあることに気づくだろう。
そう、オンとオフでは使うカードが異なるのである。
例えば、会社の近くの食堂のポイントカードはオフには使うことがない。自宅近所のレンタルビデオ屋の会員カードはオンには使わない。
カード収納ポケットがたっぷりある市販の財布もあるが、カード類すべてを財布の中に入れているのはムダが多い。財布がその分厚くなって取り出しにくくなるだけでなく、目指すカードを探す手間もかかるので、「早撃ち」ができない。
ということで、このムダを排除する方式を考えた。
私はかつてシステム手帳を愛用しており、いまでも未練があるくらい(関連エントリ→LINK)なので、リフィルを交換するシステムを財布に導入することにした。
まず、カード類(サービスチケット含む)を以下の3つに分類する。
A:オンでもオフでも使うもの
B:オンでしか使わないもの
C:オフでしか使わないもの
財布本体には、紙幣と貨幣とAを収納できるようにする。そして、Bを入れるオン用のリフィルとCを入れるオフ用のリフィルを作って、それぞれを本体から差し替えて使えばいい。
弾丸カートリッジを取り替えるようなイメージもあり、まさにピストル。「これはいける」とほくそ笑んで作った。これが極私的製品開発の醍醐味である。
以下、作品を紹介しよう。
<本体部分>
収納するリフィルによって全体の厚みが変化するので本体と「かぶせ」を分離したパーツとし、間を柔らかい皮(シープスキン)でつなぐ形式とした。
柔らかい革でつないだため、開いて机上に置くとフラットな形になる。
紙幣と貨幣、そして6枚のカードが入るようになっている。
ピストルをイメージして全体の色調は黒としたが、ステッチとマチのパーツは黄色とした。黄色は金運があがるという風水に乗ってみた。全体を黄色にするほどあからさまなのは上品には思えないので部分的に導入。黒と黄色とすることで寅年に作ったことを象徴するという意味もある。
マチをもっと幅広にしておけば良かったと思えるくらい金運が上昇すれば良いが・・・。
小銭入れ部分は長めのファスナーを使い、大きく開くようにした。
<オン用リフィル>
本体のポケットに差し込んで使用する。オンで使うカードはオフより多いので表裏にカードホルダーを設置。計10枚入る。コーヒーショップのサービスチケットなどを入れるポケットも設置した。
<オフ用リフィル>
差し込んで使うのはオン用と同じ。私の場合、オフで使うカードはあまり多くないので、カードホルダーは片面(写真の裏面)のみで計4枚を収納。
一方、もう片面(写真の図)にはジョッター(参考エントリ→LINK)とちいさなペン、そしてレシート入れ用の収納を設置した。オフの場合、夕食材料の仕込みなど買い物用途の場面が多いからだ。
ここからさらに発展させ、
・切符、チケット類を収納する旅行・出張用リフィル
なども構想したが、目先のところその必然性は高くないので2つのリフィルからスタートする。
「本体のみ」と「全部(2つのリフィル)入り」の比較
全部入りはものすごく一杯お金が入っていそうにみえる(笑)。
ここへきて急に春らしい陽気になってきた。財布の新調日よりである。