フジテレビ系列の関西テレビが制作(下請けは「日本テレワーク」)した「発掘!あるある大事典Ⅱ」でデータの捏造が発覚した。納豆にダイエット効果が期待できるとした実験データは大半がウソであった。
なぜこんなことがおきるのか。
東京新聞の解説記事↓から一部引用
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070122/mng_____hog_____000.shtml
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制作会社は一般に、潤沢でない制作費で短期間に仕上げることをテレビ局側から求められる。業界関係者によると、制作費と納期を切り詰める傾向はますます強まっているという。久世部長も「時間と予算の問題がないとは言わないが…」と苦しい胸中を語った。
数多くの人気番組を手掛ける老舗制作会社「東阪企画」の澤田隆治会長は「テレビ局が下請け任せにして、チェック機能を真剣に構築しないから起きた。このままでは同じことがまた繰り返される」と警鐘を鳴らす。
民放各局の番組制作は年々、下請け依存の割合が高まっており、関係者は「今は九割ぐらい」と分析する。澤田会長は「(待遇に恵まれず、仕事がきつい)制作会社志望の若者が減っている時代。質が下がっているならば、再教育しないといけない。制作サイドは緊張感を持ち、番組は視聴者の信頼で成り立っていることを忘れてはならない」と語った。
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これを読んで軽い既視感にとらわれた。
耐震強度偽装事件と構造が良く似ている(関連エントリ
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「制作費と納期を切り詰める傾向」とは「設計・施工費と工期を切り詰める傾向」とそっくりではないか。それが下請けにしわ寄せされている点も、チェックが甘い点も同じだ。
双方とも「誠実なモノづくり」を差し置いて「効率的に稼ぐモノづくり」「世間にうけるモノづくり」を優先した結果でもある。
ただし耐震強度偽装事件と異なり、今回の釈明番組で、「あるある」に無関係のアナウンサーが出てきて説明しただけなのは納得いかない。
耐震強度偽装ではマンション販売業者の社長も釈明の場を持った。日本テレワークの社長はもちろんのこと、関西テレビの社長、フジテレビの社長も出てしかるべきではないのか。総務省に報告が求められたようだが、視聴者への弁明は足らない。国会での説明も必要かもしれない。
また、スポンサー企業は信用を傷つけられたわけだから、スポンサーを降りるだけでなくこれまでに支払ったCMの放映料を返却するよう申し入れるべきだ。
こんな釈明だけでとどまるとすれば、テレビ業界はマンション業界をとやかく論評する資格はない。
情報の受け取り手としての立場から今回の事件を眺めると、あらためて
リテラシーが重要であると思う。
現代は情報があふれすぎているゆえに、各個人がそれぞれ情報を吟味する力を持たなければならなくなっている。
その点テレビ番組は安易に信じられすぎている。「あるある」放送後、納豆がバカ売れし店頭から消えたことが信じる人の多さを物語っている。信じるほうがバカと切り捨てている人もいるが、信じる人が多いのも無理はない。放送法には「報道は事実を曲げない」という規定があって、それゆえに信頼性を得ていた側面があるはずだから。
実際のところ、ある事象の正誤・善悪・優劣を判断するのにテレビ番組を根拠とするのはリスキーである。ニュース番組ならまだしもバラエティ番組ならなおさらだ。引用した制作サイドの人の発言からもうかがい知れる。
「あるある」に関して言えば、初期のマイナスイオンを特集した回あたりから、私は「話半分」と解釈すべき番組と位置づけている。
「マイナスイオンがもたらす効能」のいかがわしさはちょっと調べればすぐ分かるのだが、まだ信じる人は多い。
プラシーボ効果くらいは期待できるだろうから、私は周囲のマイナスイオン肯定者をしらけさせないよう話をあわせてはいるけれど。
今回の事件を契機にぜひ過去の放映分まで調査すべきである。はたしてマイナスイオンまでさかのぼるだろうかちょっと興味がある。
いずれにしろ、「テレビ番組を簡単に信じるな」という姿勢の正しさをあらためて実感できた事件であった。
一方でネットから情報を得るほうがリテラシーを発動しやすいように思った。最初から玉石混交であると分かったうえで情報に接することができるからだ。情報は自分で探さなければならないということは情報を吟味するという行動につながる。
ネットという巨大なライバルメディアに対峙するテレビ関係者は信用力を維持してそれを武器にビジネスすべきなのに、自らそれを貶めるようなことをして力を弱めているともいえる。
ホリエモンがフジテレビを支配下に置こうというネット陣営の試みは失敗におわったが、このままでは資本の出所がどうなろうと、社会への影響力という点でネットとテレビの力関係が逆転するのは遠くなさそうだ。