ー白銀の巫女ー桂木透子ー
宇宙戦艦ヤマト2202外伝
第三話
ヤマトが土砂に埋もれて、数時間が過ぎた。
この惑星の上空には、一万五千を超すカラクルムが集結していた。
超巨大な大砲"レギオネル・カノーネ"を成形してゆく。
ヤマトは動こうとしない。
動けるのに動かない。
続々と集結するカラクルムの対抗策でも、考えているのか?
「まあ。どちらにせよ。私はカラクルムが集結を終える寸前に成った頃、ヤマトのクルーに、この惑星からの脱出する方法のヒントくらいは、教えてあげるわ。」そう心に決めていた。
あと一時間もすれば、夜が明ける。
私は、そろそろと思った時、ヤマトは動き出した。
「……ヤマトが射つ。」
「そう。この惑星(ほし)から脱出するには"波動砲"しかない。」
「たった一隻で、あのガミラスを蹴散らし、自分たちの地球(ほし)を救った波動砲を使うしかないのよ。」
「レギオネル・カノーネの使用を遅らせる事が、この惑星(ほし)を脱出する方法。」
「今や、二百五十万ものカラクルムを殲滅する事は不可抗力だけど、使用を遅らせれば、ヤマトは助かる。」
「そのあと、避難民を盾に大帝に跪ずかせれる。」これで終わりを告げる。
「私があの地球を欲しい。」と大帝に話せば地球も、地球人も救う事が出来る。」
私の股の下を潜る事に成るが。
屈辱?そうではない。
生きる希望を与える為だ。
「さて、ヤマトの、ヤマトのクルーたちのお手並みを拝見させて貰うわ。」
◆◆◆◆
見事な戦術だった。
私の予想を超えた戦術であった。
まさか、この惑星(ほし)を照す"人工太陽"を撃ち抜くとは、想像すらしていなかった。
人工太陽を撃つ事で、膨大な干渉波を発生させて、行動不能にした。
それも、二百五十万ものカラクルムを。
私はこの時、大帝が何故、ヤマトを、ヤマトのクルーたちに興味を抱いたか納得した。
同時に、たとえイスカンダルからの技術提供があったにせよ、たった一隻でガミラスを打ち破った事も納得がゆく。
ヤマトはゆく。
堂々とした風格で、大宇宙(おおうなばら)を・・・
私は、いや、大帝も思う事は同じであった。
「敵ながら良くやった!」
「誉めてやる!」
「だが、次はどうする?ヤマトよ。」とね。
大帝は、次なるプランを実行させた。
◆◆◆◆
第十一番惑星を脱出した宇宙戦艦ヤマト。
そのヤマトは、避難民二百名を乗せたまま、改めて、惑星テレザートを目指した。
地球も焦っているのか?と、私は思う。
何故、避難民を迎えに来る事もしない?
何故、二百五十万ものカラクルムを放っておく?
ヤマトのクルーと、地球に残る民は違うのか?と。
疑問は残るが、大帝が興味を抱いたのはヤマトのクルー。
私はヤマトのクルーを監視する事に徹した。
ヤマトに同乗するガミラス人。
『クラウス・キーマン』も今のところ、あまり派手な動きを見せていない。
だけど、監視はヤマトクルー同様に必要。
彼には私と同じ匂いがするのよ。
"同じ匂い"がね。
◆
ヤマトは、第十一番惑星と惑星テレザートのほぼ中間点に存在する惑星シュトラバーゼを目指した。
そこで、避難民たちを迎えに来た船に乗せ変え、地球へ送り届けて貰う事と成った。
"惑星シュトラバーゼ"。
私は知っている。
私には先代から受け継いだ能力と知識が有る。
私はこの惑星シュトラバーゼを知っている。
かつて超高度な文明を有する民が、暮らしていた惑星(はし)。
今は、見るも無惨な変わり果てた惑星(ほし)。
だけど、見た目と異なり、大気は安定している。
船外服が無くても過ごせる惑星(ほし)。
"アケーリアス"の遺跡が、文明や民が滅んで千年以上も経った今でも、残っている。
私はヤマトに残る為のある事を思い付いた。
今はまだ、行動出来る範囲が制限されている私たち。
私は暇潰しに、動ける範囲でヤマトの艦内を探索する事にした。
「お姉ちゃん。」
「お姉ちゃん、何処に行くの?」
「ヤマトの中でお散歩よ。」『イリィ』と云うあの娘が付いてくる。
私と居る時は笑顔を絶やさない。
私は大展望室までを探索した。
外部との通信が可能な通信室、医療室、大浴室、トレーニングルームと場所は把握した。
大展望室には、ちょっとした娯楽設備が有る。
当初、私には理解が出来なかった。
"戦艦"に通信室は別として、こんな設備が要るのかと。
十六万八千光年の航海は"旅"でもあったのかと知るまでは。
不思議な艦(ふね)不思議なクルー。でも、何処か懐かしい。そんな記憶がくすぐられた。
大帝が興味深く抱いた理由が、解った気がする。
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つづく。
使用している画像はイメージです。
一部、ネット内に出回っている拾い画像を使用しています。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
一部、公式より引用。