space.battleship.yamato
ー新たなる戦士たちー
第七話
航跡をトレースし、ワープアウトした宇宙戦艦ヤマトは、漆黒の闇に包まれていた。
デス・ネェビュゥラァ=死(暗黒)の星雲内にワープアウトしていたのだ。
※【デザリアム星雲】
「……ここは……」レーダーを監視する相沢が誰よりも早く、口を開いた。
「第三艦橋。データを。」相沢につづき、土方が口を開いた。
第三艦橋:全天球レーダー室からの報告よりも先に、エリカ少佐が告げた。
「おそらく暗黒星雲ね。」
「暗黒星雲?」相沢が聞き直した。
「そう。暗黒星雲。」
「例として、地球から観測した場合、暗黒星雲に含まれる塵やガスによって背景の星や銀河などの光が吸収され、あたかも黒い雲のように見えるため、「暗黒星雲」と名付けられ、散光星雲が馬の頭のように蝕まれたように見えるオリオン座の馬頭星雲が有名ね。」
「星間ガスにおいては「重力によって収縮する傾向」と「熱運動により拡散しようとする傾向」がある。
多かれ少かれ、………。」
「エリカ少佐。説明は良く解った。続きは後程、伺うとしよう。」得意気に話すエリカ少佐を気遣いながら土方は、話を止めた。
うつむき加減で舌を出すエリカ少佐。
「此方、第三艦橋:全天球レーダー室。」
「報告します。第十一番惑星からアンドロメダ銀河方向へ約10万光年の位置、デス・ネェビュゥラァ=死(暗黒)の星雲内にワープアウトしたと思われます。」
「うむ。」
「引き続き調査と解析を頼む。」
そんなやり取りの中、漆黒の闇の中に一際、輝き目立つ光点をキャッチした。
濃密度なガス体が、漂うよいに流れている。
ヤマトがワープアウトした時点では、たまたま被さっていただけに過ぎなかったようだ。
「航海長。あの光点へ進路を取れ。」土方の新たらな指示が飛んだ。
蒼く輝く光点、それはヤマトのクルーの眼を疑わせた。
10万光年以上も離れたはずの地球が、目の前に浮かんでいたのだ。
「地球……我々は地球に戻って来てしまったのか?」
「ボソッ」と呟くように航海長が口を開いた。
「………。」腕組みをする土方は一度、目を閉じ、再び開けると、第二格納庫に待機する大地と船務長:祭中佐に発艦命令を下した。
回転式の駐機台がゆっくりと動き出した。
二番機の位置に有る祭中佐が搭乗する機体から、ターンテーブルに下ろされ、そのまま機体一機半分、前進したところで一度、停止した。
発着口が15度の角度で開いてゆく。
同時に対熱シャッターが機体上を防いでゆく。
機体後方のブラストデフレクターが競り上がり、中佐搭乗機のエンジンの回転数が上がると、甲高いエンジン音へと変化した。
ヤマト艦内管制室と祭中佐搭乗のモニタとリンクされた。
「管制へ。コールサインは"薫子さん"だからな。」
「間違っても祭や中佐でコールするなよ。」
「此方、管制。了解した薫子さん。」
「薫子さん。発艦進路、クリア。」
「オールグリーン!発艦よろし!」
「ラジャー。薫子、コスモタイガーⅡ発艦する!」
「薫子さん。の発艦確認!ご武運を!」
「続いて、コスモタイガーⅡ38番機、発艦位置へ!」
先に発艦した薫子と同様の手順を踏み、発艦体制に入る大地。
「管制。此方、大地。発艦準備完了。」
「発艦指示を。」
「此方、管制。了解した。」
「38機。そのままあと0.5メートル前進せよ。」
「0.5メートル前進完了。」
「ブラストデフレクターON。」
「38機!エンジンの回転数を上げろ!」
「シミュレーションじゃないんだ!やり直しは死に繋がるんだ!」
「ヤマトを自沈させる気か?ポンコツ!」
「俺はポンコツじゃねぇ!!エースパイロット森 雪の息子、大地だッ!!」
「管制も大地も、何をやっているッ!!」
「ヤマトは幼稚園じゃないんだ!」インカムを通し、薫子の叱責が飛んだ。
「管制!構わん!強制射出しろ!」
「どうなっても知りませんよ!」
「強制射出ッ!!」
サーカスの曲芸さながらの射出劇に失神寸前の大地。
ようやく体制を建て直し発艦は、成功した。
「大地。聞いているか?」
「任務が無事に終了したら、足手まといに成らないぐらいの技術は、教えてやる。」
「お前が、あの雪さん。の息子ならトップガンも夢じゃないからな。」
薫子はそう告げると、土方からの指示を待った。
だが、土方からの指示よりも先に、あの未確認の宇宙船が姿を表し、再び幻影通信を発したのだ。
「私はサーダ。」
「あなた方の時代より200年未来の地球人。」
「あなた方の目の前に浮かぶ惑星こそが、200年未来の地球。」
「私の後に続き、降下なさい。」
「武器は必要ない。」
【暗黒星雲】
散光星雲が馬の頭のように蝕まれたように見えるオリオン座の馬頭星雲が有名。
星間ガスにおいては「重力によって収縮する傾向」と「熱運動により拡散しようとする傾向」がある。
多かれ少かれ、星間ガスは常に放射を出しているので、外部からエネルギーが供給されない限り内部エネルギーは減少して分子を形成する。
また重力によって収縮する傾向が強まるため密度が増加する。
これを分子雲の形成と呼ぶ。
実際には様々なメカニズムによって分子雲形成が促進されたり抑制されたりしていると考えられている。
銀河や星が形成されるまでの期間に密度がほとんど一様だったにも拘らず分子雲が短期間で形成された理由や、銀河や星が形成されたあとの期間で、すなわち外部からエネルギーが供給された状態で、どのように分子雲を生じて銀河や星が進化したのかについての研究は、いずれも現代の天文学の重要なテーマであるが、完全に解明されている訳ではない。
分子雲はさらに自身の重力で収縮していき、最終的には中心部で原子核融合がはじまり恒星が生み出される。
すると恒星を孕んだ暗黒星雲は、恒星からの紫外線によって中性水素ガスが電離され、光り輝く雲のような様態を見せる。
このような星雲を散光星雲またはHII領域と呼ぶ。このため、散光星雲と暗黒星雲はしばしば隣接して存在する。
散光星雲は非常に高温であるため、周囲の暗黒星雲を押しのけながら膨張していく。
この過程で周囲の暗黒星雲でも連鎖的に恒星の誕生が起こっていく。
このようにして若い恒星の集団である散開星団やアソシエーションが誕生する。
散光星雲を輝かせているような大質量星は最終的に超新星爆発によって一生を終えるが、その際の衝撃波によって暗黒星雲は吹き飛ばされて拡散し、再び元の星間ガスへと戻っていく。
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第八話へ
つづく。
この物語は、もし私がspace.battleship.yamato(実写版)の続編を作るとしたら的に、二次創作したspace.battleship.yamatoの物語です。
私的設定が混ざっています。
使用している画像はイメージです。
また一部、過去に集めた拾い画を使用しています。