「SNS選挙元年」とも呼ばれた昨年、ネットの政治への影響はすさまじいものがあった。
衆院選では20代から30代の約半数が「インターネットを見て投票先を決めた」と回答したほど。
その中で、特に存在感を示したのが「政治系切り抜き動画」だ。政党の記者会見や国会中継などを短く再編集したもので、各業界で切り抜き動画が注目を集める今、収益を見込んで「政治系」に参入している人も増えている。
無数にあるエンタメ系などと比べて、まだ競合が少ないところに目をつけた人は、月に最大300万円、年収にして2〜3000万円を稼いだ猛者もいる。
また、特定の政治家を追いかけ続けるために会社を辞めたが、YouTubeの動画だけで会社員時代より収入が倍になった人もいる。
「ABEMA Prime」では、この政治系切り抜き動画を作っている当事者とともに、なぜ反響を得られているのかを語った。
■競合少ない政治系に注目したYouTuber
都知事選にも立候補した石丸伸二氏の動画だけを扱うYouTubeチャンネルを2023年12月に開設したうしさん(30代・仮名)。
論理的に語る石丸氏に感銘を受けて15年間勤めた会社を退職。
今は動画一本で生計を立てている。「会社員の2倍は稼いでいる。
ただし、働く量も2倍以上。1日に長尺動画を1本、ショート動画を1本というのを自分のノルマにしている。
だいたい16時間ぐらいはアベレージで働いている」。
うしさんの場合は、切り抜きだけではなく、自ら素材を得るために取材にも出かける珍しいケースでもある。
一方、石川さん(30代・仮名)は、応援している政治家・政党があるわけではなく、あくまで事業の一環として始めた。
現在は登録者10万人以上の政治系チャンネルを、複数運営するほどにもなっている。
切り抜き動画を始めた理由は2つ。
①「1つは完全に事業目的で、SNSで何か稼げるものはないかと思った。YouTubeはよく見ていて、ひろゆきさんの切り抜き動画もたくさん拝見した。➁2つ目の理由は、もともと小さい頃からなんとなく政治に関心があったか
ら」。
収益が見込めるコンテンツとして政治を見たところ「いろいろ競合分析をしていく中で、ここはまだ空いているという状況だった。
国会中継の動画を見ないのは大きな損をしていると思っていて、このつまらないものをどうやったら見てくれるかを考えた。
若い世代の方々の関心が日本を変えるために必要。
そこの一助になれればと始めた」と、そのままでは地味でおもしろさに欠ける国会中継も、切り出し動画にすることによって若い世代に広められると始め、成功を収めた。
開始1カ月で収益化に成功、今では年収2〜3000万円を稼ぎ出すまでになった。
■切り抜くのはテレビも一緒?
「切り抜き動画」と聞くと、何かしら楽をして儲けるというイメージを持つ人も少なからずいる。
ただし文筆家・情報キュレーターの佐々木俊尚氏は
「切り抜きはけしからんというイメージもあるが、国会中継を全部やっているのはNHKだけ。
(地上波の)ワイドショーも同じ」とコメント。
またお笑いコンビ・ぺこぱの松陰寺太勇も「(テレビも)技術的には切り抜きをやって、それをニュースで流している。
それでネットの方がバズっているわけだから、切り抜き方もテレビより切り抜き動画の方がうまいんだなと思う」と述べた。
また佐々木氏は、テレビ各局が似たようなシーンを切り抜いてニュースにする理由に「記者クラブ」の存在を指摘する。
「テレビでも新聞でも似たような論調が多い。
記者クラブという仕組みがあるので、1つの切り抜き方を、みんながこぞって同じようにする。
そこにYouTuber的な人が違う切り方をすると“そんな見方もあったのか”と驚きがある。
ネットの違う切り方にみんながなびいて、
有権者が世論のバランスを取るという装置として、
切り抜き動画は全然アリだと思う」。
ネットに公開するコンテンツとして近年、ファクトチェックに関して語られることも増えている。
誤った情報などを切り抜いて拡散してしまうことも考えられるところだが、題材が国会、政治家といったものだけに、そのリスクは小さいと当事者は語る。石川さんは「基本的に街頭演説や国会中継が題材。
既に流れているもので、
私の場合はそんなにファクトチェックどうこうは関係ないと思う」。
その中で、極端に偏った意見などを発している人は取り上げない方針だ。
またうしさんも「スピーカーの方がいい加減なことを言っているなと思うことはあるし、僕はそういった方は取り上げたくない、取り上げるに足らない」と言い切った。
2ちゃんねる創設者で、自身の切り抜き動画も多数拡散しているひろゆき氏は「ウソをつくと、そのチャンネルは通報が入って潰される。
石川さんやうしさんみたいにまともに儲けている人はヤバいことをしないで儲けている。
まだ収益化できていない人が、結構デマとかで再生数を稼ぐことをやりがちだ」と説明。
さらに「『いいね』が多くなる動画の方が、関連動画として出やすくなるので、結果的に再生数は増える。
まともに稼いでいる人ほど、まともなものを作っている構造がある。(フェイクも)動画も政治家がしゃべっているものを使っている分にはめんどくさいないし、まともな方だ」と、
コンテンツとして健全なものが収益を生むという理想的な循環を生んでいると述べた。
■選挙の度に存在感増すネット
出演者たちは、今後も選挙が行われる度に、ネットの存在感は大きくなるものだと意見が一致した。
ひろゆき氏は、ネットで起こる問題点も考えた。
「この先起こることとしては、テレビは中立性があるので、基本的に政治家の人たちは自由にしゃべれない。
結果としてYouTubeで政治家の意見を聞く、
切り抜きで見るのが当たり前になる。
そうなると過激なこと、人が乗っかりやすいことでどんどん再生数を増やしていき、地道でまともに政治に向き合っている人よりも、むしろ迷惑系インフルエンサーがバカバカと票を取る時代になり、これが止まらない気がしている」。
この意見に佐々木氏は有権者たちが、そこまで極端なものにはまだなびいていないと語る。
「現実の今の世論調査を見ると、極右・極左と言われるような、極端なポピュリズム政党は支持率が高くなくて、せいぜい1%ぐらい。
一方で国民民主党みたいな、割に中道な現実的な路線を取っている政党が票を取っている。
ヨーロッパとかの危機的な状況とは全然違って、民主主義的な世論が成立し得る現実がある」。
選挙期間中は、普段よりも再生数が伸びることを実感している石川さんは「兵庫県知事選挙がマスメディア・オールドメディアに、新しいSNSが勝ったみたいなことはあったと思うが、それがどんどん認知されてきている」とし、その上で「入りはマネタイズ事業、収入目的だったが、今はちょっと変わってきている。
選挙期間中は、普段よりも再生数が伸びることを実感している石川さんは「兵庫県知事選挙がマスメディア・オールドメディアに、新しいSNSが勝ったみたいなことはあったと思うが、それがどんどん認知されてきている」とし、その上で「入りはマネタイズ事業、収入目的だったが、今はちょっと変わってきている。
実際に選挙に興味を持つようになった。
それこそ政治家の方から直接メッセージをいただいたり、自分があげているもの、やってきたことが誰かに影響を与えているんだと、やりがいを感じている。
お金目的というより、小さなマスメディアとして今起こっている事実をしっかり届けたい」と思いを語った。 (『ABEMA Prime』より)