「国内事情を考慮しての“コメ禁輸”、その判断にチラつく「覇権国家」の影」
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青沼 陽一郎のプロフィール
1968年長野県生まれ。
早稲田大学卒業。
テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。
著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。
@Wikipedia
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中国を抜いて、人口が世界一になったインド。
国連人口基金によると、今年半ばにはインドの人口は14億2860人、中国は14億2570人と、インドが約290万人上回ると推計される。
インドの食文化は特異でもある。
伝統的に主食が2つあるからだ。
コメとナンに焼いて食べる小麦だ。
そのインドの動向によって、世界が食料危機に見舞われる脅威が浮かんできた。
〇インドがコメ輸出を禁止した途端、貧困国で食料危機に
インドは世界最大のコメの輸出国で、世界全体の4割を占める。
22〜23年度の輸出量は2250万トンだった。
それも第2位のタイの850万トンとは大きな開きがある。
ところがインドは、7月20日から高級種を除いてコメの輸出を禁止してしまった。
輸出の増加で国内のコメの価格が高騰していることから、「価格引き下げと国内市場での供給確保」を理由としている。自国の事情を優先した。
たちまちインドに次ぐ輸出国のタイやベトナムの輸出価格も急騰。
食料価格が上がることで、食料を輸入に頼る貧困国では、食料が買えない危機に直面する。
一方で、ロシアがウクライナから黒海を通じて運び出される穀物の輸出を容認する合意を7月17日で停止させたことで、小麦の価格も上昇している。
コメと小麦の同時高値は、ますます世界の食料危機が現実味を帯びる。
〇大国の都合で食料難が
こうしたことは過去にもあった。
インドが発端となってコメの輸出価格が高騰し、貧困国で餓死者が出て、暴動が相次ぐ事態にまでなっている。
それが2008年のことだ。
私はその当時、まだ世界第1位のコメの輸出国で、いまでも輸出価格の国際指標となるタイを取材している。
そこでインタビューに応じたタイのコメ輸出業協会の当時の会長が、はっきりこう断言していた。
その当時も、すでに小麦価格の高値が続いていた。
オイルマネーなど投機筋が流れ込んだことが一因とされる。
物量はあっても高くて供給が不足する。
そこにインドの食文化が影響する。
主食はコメとナンに焼いて食べる小麦の2つがある。
そのため、小麦の価格が上がると、コメの価格も上がる傾向にある。
当時から経済成長の著しかったインドでは、年間のインフレ率が15〜16%とみられていた。
小麦価格の上昇に連動して、米価も高騰し、国内供給とインフレーションの悪化を懸念したインド政府は、国内の米価の維持を優先して、コメの輸出を全面禁止してしまったのだ。
インドは、まだタイに次ぐ世界第2位のコメの輸出国だった。
ところがそこへ、第3位の輸出国だったベトナムも輸出を止めてしまった。
コメの不作見通しを理由としていたが、当時のベトナムも年間のインフレ率が19%とされていた。
コメの輸出需要の増大による国内米価の高騰を抑えようとしたのだ。
それで小麦の後を追うようにコメの取引価格も高騰した。
自国のインフレ懸念から輸出をストップさせることで、世界的な食料インフレーションを引き起こしてしまう。
それが食料危機を招く。
小麦とコメの同時高値は、2008年と重なる。
当時の国連の食糧問題の担当部署は、これを「静かなる津波」と呼び、1億人が食料不足の危機にさらされているとしていた。
今回はエルニーニョ現象によるタイやベトナムの東南アジアの干ばつで、コメの不作も懸念される。
〇大国が覇権主義に走り出したときの恐ろしさ
グローバルサウスの盟主として台頭するインド。
人口が世界一に躍り出たばかりでなく、世界の食料事情にも影響が及ぶ。
IMF(国際通貨基金)によると、インドのGDPは2027年に日本を抜いて、米国、中国に次ぐ世界第3位になる見通しだ。
インドは非同盟を伝統とする「全方位外交」でも知られる。
ロシアは兵器の輸入を依存する長年にわたる友好国で、ウクライナへの軍事侵攻を国連総会で非難する決議を棄権したばかりでなく、欧米諸国の経済制裁が続く中でむしろロシアからの原油の輸入を拡大させている。
一方で、日本、米国、オーストラリアとクアッド
の枠組みで安全保障や経済分野で連携しながら、中国、ロシアが主導する上海協力機構(SCO)
のメンバーでもある。
軍事費は米中ロに次ぐ第4位。
欧米にも中ロにも肩入れしない。
国益を優先し、国連の常任理事国入りも目指している。
かつて中国は、途上国の盟主を自任していた。改革開放政策で「世界の工場」として機能し、10億人を超す人口が経済成長を支えた。
食料をめぐっては、途上国の食料危機の懸念を払拭するために、「中国は95%の食料自給率を維持する」と1996年の世界食糧サミットで宣言したことが、そのまま国策になった。
増え続ける人口に、食料輸入を増加させることで世界を危機に陥れることはないと約束した。
それが世界第2位の経済大国となると、習近平指導部の発足で手のひらを返したように覇権主義を強め、経済支援と債務で途上国を取り込むようになり、世界中から食料を買い漁る。
米中対立は深まり、新しい国際秩序の主導権を握ろうとまでしている。
インドの行末を、いまの中国とどこか重ねて見てしまうのは私だけだろうか。
少なからず、欧米にとっても、中ロにとっても、その存在は無視できなくなっている。
〇もしもインドが覇権主義に駆られたら…
コメの輸出禁止で世界が混乱することも、インドはわかっているはずだ。
15年前にも国益を優先して、食料インフレーションを引き起こした。食料供給の不足は餓死者を出すだけでなく、2010年のロシアの小麦輸出禁止措置が「アラブの春」を招いたように、暴動や政情不安につながる。
同年のロシアは、干ばつによって穀物の生産量が減少していた。
食料が武器になることも繰り返し解説してきたが、コメと小麦の輸出国でもあるインドも、それは知っているはずだ。
インドが自国の食料供給を優先した措置だとしても、世界の4割を占める第1位のコメの輸出国であるからには、世界に与える影響を見過ごすわけにもいかない。
国益を優先して世界を混乱に突き落とすのなら、こんな厄介な国もない。
いつかインドも、影響力を誇示する時代がくるのではないか。
再びのコメの輸出禁止が食料価格の高騰を招いている現実を踏まえると、そんな未来図が浮かんでくる。
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「暗いと不平を言うよりも、進んで灯りをつけ、希望を見出しましょう」「世界標準の現場・現物・現実取材客観情報から正しい判断が得られる!」
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https://tomoshibi.or.jp/radio/r-program.html
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★★★
(。>﹏<。)日本のもろさ ウクライナ侵攻で見えた食料の危機的状況 2023年02月21日山下一仁
★★★
他人=隣・他国と過去は変えられないが、自分=自国と未来は変えられる、
現状分析し、未来志向へ! PDCAか
You cannot change others or the past.
You can change yourself and the future.
https://www.ogasawara-office.net/blog/20210529/3583/
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