2020/03/04
くらし・健康
【出演者】
張さん:張賢徳さん(日本自殺予防学会理事長、帝京大学医学部附属溝口病院 精神神経科教授)
森田デスク:森田智之ニュースデスク
山田キャスター:山田康弘キャスター
菅野キャスター:菅野真美恵キャスター
張さん:張賢徳さん(日本自殺予防学会理事長、帝京大学医学部附属溝口病院 精神神経科教授)
森田デスク:森田智之ニュースデスク
山田キャスター:山田康弘キャスター
菅野キャスター:菅野真美恵キャスター
森田デスク:菅野キャスター:山田キャスター:張さん:菅野キャスター:張さん:森田デスク:張さん:菅野キャスター:張さん:山田キャスター:張さん:森田デスク:張さん:菅野キャスター:張さん:菅野キャスター:
去年の年間自殺者数は、速報値で1978年の統計開始以来、初めて2万人を下回りました。しかし、日本の自殺率が世界的に見て高いことに変わりはありません。 |
そして毎年、3月の月間自殺者数は他のどの月よりも多くなることから、厚生労働省は3月を自殺対策強化月間と定めています。身近な人の自殺を防ぐために何ができるのか、日本自殺予防学会理事長で帝京大学医学部附属溝口病院 精神神経科教授の張賢徳(ちょう よしのり)さんに伺います。 |
日本で3月に自殺が多くなるのには、どんな理由があるのでしょうか。 |
この時期になぜ自殺が多いのかを説明するために、まずは、自殺がどのようにしておこるのかというプロセスについて説明させていただきます。 一般に、自殺はある日突然起こるのではなく、段階を経て自殺に至るものと考えられています。プロセスの入り口はライフイベント、ネガティブな出来事が多いです。そして途中段階で大事なポイントが、サポートが得られるかどうかということです。サポートが得られなければプロセスは進んでいってしまいます。そして最終段階に至ってしまう。最終段階で自殺を図ってしまった人の90%以上の人が、うつ病や適応障害などの精神科の診断がつく状態だったということが分かっています。これが自殺のプロセスです。 そこで3月に自殺が多いことを考えてみると、このプロセスの最終段階に近い状態にある人にとって、負担感が増すようなこと、例えば転勤や配置換えなどの多さ、支払い関係の請求などがありがちなのが年度末の3月ということですね。また年度末の忙しさが、サポートの不足にもつながると思います。 |
「自殺を図る人の90%以上は、うつ病など何らかの精神疾患にり患している」というデータは、衝撃ですよね。 |
世界の精神医学会ではよく知られていることなんですけれども、実際に自殺で亡くなってしまった人の調査、あるいは、亡くなってもおかしくないような重症を負った自殺未遂を図った人の調査でも分かっていることですけれども、9割以上の人で精神科の疾患の診断がつくというのは日本でも分かっています。ただ日本の場合には、私は強調したいんですけれども、これはあまり知られていないと思います。 一般の方はもしかすると、切腹文化の名残で自殺というものを「覚悟の死」だとか、自らが理性的に判断して選んだ道だというような考え方、ときには尊重さえするような風潮があるということを私は懸念しています。安易な自殺につながることを心配しているので、自殺の実態について、是非みなさんに知っていただきたいと思っています。自殺は容認するものではなくて、まずは治療や予防の対象であると考えることが大事じゃないかと思っています。 |
自殺を防ぐためには、周囲の人が気付いて止めることが必要になると思います。われわれは身近な人に対して、どんなことに気を付けるといいでしょうか。 |
自殺を防ぐ役割を果たす「命の門番」とも言える人のことを「ゲートキーパー」と呼びますが、ゲートキーパーの基本的な対応法として推奨されているものに「TALKの原則」というものがあります。英語の「Tell、Ask、Listen、Keep safe」の頭文字をとって「TALKの原則」と言われています。 |
「Tell、Ask、Listen、Keep safe」 。それぞれ、具体的にどんなことなんでしょうか。 |
まずは、Tell。「声をかける」。 ご自分の身のまわりの人を見渡していただいて、ちょっと何かが普段と違うな、何かあったのかな、と心配になったなら、素通りするのではなくて、「どうしたの?」「ちょっと元気ないね」というような声をかけていただきたい。そしてアンテナを張っていただきたい、というのが、Tellになります。その際に「何もないよ」と言われたら、「よかった。でも何かあったら声をかけてね」と言っておくことが大切です。 |
次はAsk。「たずねる」ということですが、何をたずねるのでしょう。 |
Tellよりも一歩踏み込んで、「具体的に質問をする」ということです。気になることを聞いてみるわけです。 例えば元気がなかったら、「何かあった?」「何か心配ごとがあるの?」「何か変わったことがあった?」というふうに、踏み込んでいただきたいと思います。本当に元気がない、落ち込んでいる人の場合には、もしかしたら自殺につながる危険性を秘めているかもしれませんので、勇気をもって、「もしかしたら『死にたい』と思うこともあるの?」とか、「『消えちゃいたい』と思うこともあるの?」とか、是非たずねていただきたいと思います。これがAskです。 |
続いては、Listen。「聴く」ということですね。 |
Ask、質問をした以上、素通りすることは当然できません。ここで、「耳を傾ける」。傾聴ということがとても重要になってきます。 自殺する人に多い心理で一番大きいのは「疎外感」です。自殺に向かうこの疎外感に対して、自分に寄り添って話を聞いてくれる人がいることは、大きな心の支え・助けになります。傾聴の際にぜひ実践していただきたいのは、相づちをうったり、ねぎらいの言葉をかけてあげたり、「積極的傾聴」と言うのですけれども、是非これを心がけていただきたいです。逆に、これはやってはいけませんよ、ということとしては、その人の考えを否定したり自分の考えを押し付けたりするのは良くないと言われています。 |
「TALKの原則」にはもう1つありますね。Keep Safe。「安全確保」ということですが、これは? |
もうちょっと平たく言うと、「つなぐ」ということになります。声をかけて話を聞いた人が、すべて1人で背負い込む必要はありませんし、実際できるものでもありません。関係機関、関係する人に応援を求めてつないでいくということが大事になります。 自殺対策として、各自治体でいろいろな相談窓口が整備されてきています。是非活用していただきたいし、弁護士さんなどのボランティア活動で法テラスという法律相談なども設けられています。あるいは本当に差し迫った自殺行動が心配になったらば、是非遠慮せずに警察に応援を求めてほしいと思います。警察はそういう場合に動いて助けてくれることになっています。 また、眠れない、食べられないなどの兆候が見受けられれば、うつ病も考えられますから、精神科をはじめとした医療機関につないでいただきたい。可能であれば、受診に付き添っていただきたいというふうに思います。 |
張さん、ありがとうございました。 |
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