統一性があり画一的な「共産党一党独裁政府」中国と、多様な「自由民主主義大統領府」米国。
銀行に挑戦する中国、共存する米国
また、米中のモバイルフィンテックには、「銀行のビジネスモデルに対する挑戦か共存か」という、重要な違いがある。
「AlipayやWeChat Payにおいては、銀行は使用額が引き落とされる預金口座を担当する機関に過ぎない。顧客の消費行動やデータを把握するアリババやテンセントなどのプラットフォームが、ユーザーが信用を置く対象になっている」と指摘するのは、香港の決済企業ジオスイフトのデイナ・ニーノ副社長だ。つまり、中国モバイルフィンテックは銀行の意義を相対化させてしまったのだ。
これに対して、Apple Payなど米国型モバイルフィンテックにおいては、消費データ処理や決済の中心が銀行であることに変わりはなく、7月に発表されたApple Cardにおいても、顧客の消費行動やデータを把握・分析する役割を担うのは米金融大手のゴールドマン・サックスだ。この協業モデルにおいては、少なくとも現時点において金融機関の立場がテック大手に脅かされることはない。
こうした中で7月に登場したのが、モバイル決済を内包するフェイスブックの暗号通貨Libraだった。米決済大手のVisaやMasterCard、PayPalがプロジェクトに創設メンバーとして参加しており、送金だけでなく決済も可能であるため、中国型のQRコード決済や米国型のスマホ非接触型決済の脅威になり得る。米国の銀行業界が慎重な態度を示しているのは、驚きではない。
また、中国国家金融発展実験室理事長の李楊氏も7月12日、「人民元だけでなく多様な通貨に対応するLibraの登場は、AlipayやWeChat Payの優位性をも脅かすかもしれない」と述べ、中国型のモバイルフィンテックの優位性が侵食される恐れへの警戒心を隠さなかった。
このように、米中ではお互いのモバイルフィンテックに対する警戒感が強く、両陣営におけるモバイル決済の違った方式が必要となっているのである。
また、米国はその「モバイル決済後進性」ゆえに、完全なキャッシュレス店舗になるはずであった無人コンビニAmazon Goでも、銀行口座を持たない低所得層が現金で支払いができるように仕様が変更されるなど、新旧あらゆる決済手段が併存する「多様性のある社会」の性格が明確になってきた。
統一性があり画一的な「先進」中国と、バラバラで多様な「後進」米国。
フィンテックの本質が、「金融の主体が銀行からテック大手に移ること」であるとするならば、モバイル決済の実現のプロセスに表れたお国柄は、中国こそが「真のフィンテック超大国」であることを物語っているのかもしれない。
また、米中のモバイルフィンテックには、「銀行のビジネスモデルに対する挑戦か共存か」という、重要な違いがある。
「AlipayやWeChat Payにおいては、銀行は使用額が引き落とされる預金口座を担当する機関に過ぎない。顧客の消費行動やデータを把握するアリババやテンセントなどのプラットフォームが、ユーザーが信用を置く対象になっている」と指摘するのは、香港の決済企業ジオスイフトのデイナ・ニーノ副社長だ。つまり、中国モバイルフィンテックは銀行の意義を相対化させてしまったのだ。
これに対して、Apple Payなど米国型モバイルフィンテックにおいては、消費データ処理や決済の中心が銀行であることに変わりはなく、7月に発表されたApple Cardにおいても、顧客の消費行動やデータを把握・分析する役割を担うのは米金融大手のゴールドマン・サックスだ。この協業モデルにおいては、少なくとも現時点において金融機関の立場がテック大手に脅かされることはない。
こうした中で7月に登場したのが、モバイル決済を内包するフェイスブックの暗号通貨Libraだった。米決済大手のVisaやMasterCard、PayPalがプロジェクトに創設メンバーとして参加しており、送金だけでなく決済も可能であるため、中国型のQRコード決済や米国型のスマホ非接触型決済の脅威になり得る。米国の銀行業界が慎重な態度を示しているのは、驚きではない。
また、中国国家金融発展実験室理事長の李楊氏も7月12日、「人民元だけでなく多様な通貨に対応するLibraの登場は、AlipayやWeChat Payの優位性をも脅かすかもしれない」と述べ、中国型のモバイルフィンテックの優位性が侵食される恐れへの警戒心を隠さなかった。
このように、米中ではお互いのモバイルフィンテックに対する警戒感が強く、両陣営におけるモバイル決済の違った方式が必要となっているのである。
また、米国はその「モバイル決済後進性」ゆえに、完全なキャッシュレス店舗になるはずであった無人コンビニAmazon Goでも、銀行口座を持たない低所得層が現金で支払いができるように仕様が変更されるなど、新旧あらゆる決済手段が併存する「多様性のある社会」の性格が明確になってきた。
統一性があり画一的な「先進」中国と、バラバラで多様な「後進」米国。
フィンテックの本質が、「金融の主体が銀行からテック大手に移ること」であるとするならば、モバイル決済の実現のプロセスに表れたお国柄は、中国こそが「真のフィンテック超大国」であることを物語っているのかもしれない。
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在米ジャーナリスト 岩田 太郎
岩田太郎(いわたたろう)
- 在米ジャーナリスト
執筆記事はコチラ
京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、ウェブメディアにも進出中。研究者としての別の顔も持ち、ハワイの米イースト・ウェスト・センターで連邦奨学生として太平洋諸島研究学を学んだ後、オレゴン大学歴史学部博士課程修了。先住ハワイ人と日本人移民・二世の関係など、「何がネイティブなのか」を法律やメディアの切り口を使い、一次史料で読み解くプロジェクトに取り組んでいる。金融などあらゆる分野の翻訳も手掛ける。昭和38年生まれ。
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