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西大陸,リスク 人民は李克強の露天商経済政策か 習近平の大国崛起路線か 支持が分かれる

2020-06-12 14:13:59 | 連絡
<中国共産党内で習近平とアンチ習近平派の権力闘争が激化か>
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2020.6.11(木)
福島 香織
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス、2020)、『習近平の敗北 紅い帝国・中国の危機』(ワニブックス、2020)、『中国絶望工場の若者たち』(PHP研究所、2013)、『潜入ルポ 中国の女』(文藝春秋、2011)などがある。メルマガ「中国趣聞(チャイナ・ゴシップス)」はこちら。
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CCTVと人民日報は党中央宣伝部の直属メディアで、政治局常務委員でいえば王滬寧の管轄だ。蔡奇と王滬寧、ともに習近平に忠実な人物だと考えると、これは党内の李克強と習近平の対立を反映している、という風に見えるのだ。
 首相が全人代で打ち出し、その後、地方視察でも身をもって宣伝した政策を、党の喉舌(宣伝機関)がこき下ろし、首都の党委員会機関紙が真っ向から否定するなど、文革と天安門事件以来、めったに見られる現象ではない。
 チャイナウォッチャーたちの間では、中国共産党内で習近平とアンチ習近平派の権力闘争が激化しているというのは、ある意味常識である。ただ、それが政権の安定を揺るがすレベルか否かは意見の分かれるところだ。
私はこうした内部の路線対立が、朝令暮改のような形で庶民生活を巻き込むこと自体、そうとう末期症状だと思っている。こうなってくると、世論がさらに党内対立に反映されることになり、大衆動員式の権力闘争に発展しかねない。
文革も天安門事件も、実はその根底に「毛沢東 VS. 劉少奇、林彪」「鄧小平 VS. 胡耀邦、趙紫陽」の権力闘争があり、それに大衆が巻き込まれた面もある。
 思い返せば今回の全人代の政府活動報告で、李克強がGDP成長目標を挙げなかったのも、閉幕記者会見で中国の6億人の平均月収が1000元程度だと暴露したのも、習近平は面白くなかったはずだ。
それは、習近平が掲げていた2020年の「全面的小康社会」実現が無理だ、と暴露されたのと同じことだったからだ。
全面的小康社会の実現としては、2020年までにGDPと国民の収入を2010年比で倍増させることが1つの達成基準となっていた。そして、それを達成するために必要なGDP成長率を目標値として算出していた。それによると今年は最低でも5.7%の成長を達成しなければ目標を達成できない。だが、とても達成できる状況ではないので、李克強は目標値を政府活動報告に入れることに反対したと言われている。達成できない目標値を掲げると地方政府のデータの捏造につながり、現実的な政策立案の妨げになる、ということだった。
 習近平が理想とするのは、大国崛起(くっき)路線。中国が中華民族の偉大なる復興の道を順調に歩んでいると宣伝してきた習近平からすれば李克強のちまちました露天商経済政策は、自分への挑戦と受け止められたのかもしれない。両者が対立したなら、人民は李克強を応援するのか、習近平を応援するのか。
 だが、李克強が露天商経済をあえて打ち出したのは、それだけ中国の実態経済が追い込まれており、深刻な失業問題が起きている、ということだろう。
中国の本当の失業率は20%以上、7000万人以上が職を失っている、と中泰証券のアナリストが4月下旬に指摘している。
 失業者が増えると、社会が不安定化する。集団事件と呼ばれるデモ、抗議活動やテロのように、貧困の恨みを社会全体に対する報復行動で晴らそうとする事件が起きやすくなる。李克強の経済政策は、こうした庶民の不満軽減を重視して打ち出されたと思われる。
 巨大な債務・不動産バブルを抱えている中で、じゃぶじゃぶとあふれるような財政出動することはむしろリスクが大きい。庶民が直面するひっ迫した状況をなんとかするには、生まれながらの商売人、とも言われる中国庶民の困難を生き抜くバイタリティに頼るしかない、と判断したのではないだろうか。
 この政策を擁護する専門家もいて、東北財経大学中国戦略・政策研究センターの周天勇主任は、露店経済や農貿市場と呼ばれる青空市場の発展と都市の現代化は矛盾しないという。もし都市で露店経済、農貿市場が促進されれば、失業者の受け皿として非常に重要な役割を果たし、およそ5000万人の雇用問題が解決できるだろう、という。中国国内にはおよそ7.7億人の労働人口があり、15%にあたる1億人が非正規就業だ。
また、露天商ビジネスは意外な産業にも波及しうる。たとえば露天ビジネス向けに販売された、五菱汽車(広西チワン族自治区柳州市)の電動小型移動販売用車「五菱栄光」(5.68万元)は、1台購入につき3000元の補助金が出るとあって、生産が間に合わないほど売れている。この補助金制度が打ち出されて、香港市場の五菱汽車株は6月4日、この1年で最高値を記録した。要は制度設計ということだろう。
 露天商経済の発展は、税収アップにはならないかもしれないが、庶民にとっては商売する方も消費者も歓迎するだろう。みんな露店と屋台が大好きなのだ。そうすると、李克強こそが俺たちを食わせてくれる、と大衆の間で人気が出るかもしれない。

政策において失敗ばかりしてきた習近平にとっては、まずそこが気に食わず、そして恐ろしいのではないのではないか。
 露天商経済がこのまま推進されるか否かは、ポストコロナの中国経済の回復の趨勢を決めるだけでなく、習近平路線が維持されるか否かにもつながるので、引き続き注意してみていきたい。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60870?page=4



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