世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

株大暴落で春節を祝う気になれない中国人、中国版紅白は「台湾上陸作戦」。。。#2024.2.16(金)#福島 香織

2024-02-20 14:58:11 | 連絡
「中国人が大晦日を祝う「除夕快楽」というメッセージに秘めた「危ない」意味とは? 」
:::::
福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。
上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。
2009年に産経新聞を退社後フリーに。
おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。
主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。
 
 
:::::
  • 例年ならお祝いムードの中国の春節(旧正月)だが、今年は不穏なムードに包まれている。
  • 1月末から2月頭の中国株の大暴落で、多くの中国人は祝う気になれない。中国版の紅白歌合戦では「台湾上陸作戦」を連想させる演出があり、地方のある村では無差別殺人が起きたという噂も。
  • 多くの中国人は旧暦の大晦日に「除夕快楽」(大晦日を楽しくすごしてね)というメッセージを送りあったが、そこには口には出して言えない、危ない意味が込められていた。
  • 今年の中国の春節はどうも不穏なムードに包まれている。中国人の知り合いからも、あまり「新年快楽」「春節快楽」(あけましておめでとう)といった挨拶が送られてこない。
  • その代わり、旧暦の大晦日に「除夕快楽」(大晦日を楽しくすごしてね)というショートメッセージをいくつか受け取った。
  •  そもそも中国経済があまりに悪いものだから、「おめでとう」という気分ではないのだろう。
  • 対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の電子マネー・ウィチャットペイの紅包(お年玉)をチャットグループ内で配りまくるという風景も例年より少ない気がする。
  • 1月末から2月頭の株の大暴落は「新年株災」と呼ばれるほど激烈なものだった。
  • 国有企業チームに国内外資金をかき集めて株を買い支えさせることで、なんとか春節休みに入る直前は反発したものの、多くの中国の小金持ちは、春節どころの気分ではなかっただろう。これは中国の経済政策に対する信用の絶対的欠落が原因にあるので、春節明けにまた一波乱くるのは必至と言われている。  
  • さらに、不穏な社会事件も続いている。たとえば旧暦の大晦日の2月9日に山東省日照市莒県のある村で、一人の男が村民数十人をナイフや銃で襲い死傷させるという凄惨な大量殺人事件が発生。


  • ただし、その事件は徹底的な情報統制が発動されて一切報道がなく、ネット上で都市伝説のように噂だけが拡散されている。 
  • どうやら、いわゆる「報復無差別殺人」、つまり自分に降りかかった不条理に対し、社会を無差別に攻撃して恨みを晴らすタイプの事件らしい。そういう事件は中国では決して珍しくなく、どうしてここまで情報統制されているのか、それが逆に中国社会の不穏さを伝えている。
     一説によると、解雇された武装警察の警官が、逆恨みして上官の家族を皆殺しにし、近所の家も巻き込み、救援に駆け付けた救急車の救急隊員も殺害した、という噂だ。
  • あるいは、冤罪で投獄されていた男が釈放後に、自分を陥れた人の家を襲い皆殺しにした、という説もある。
  • いずれにしろ、その村に通じる道路が完全に封鎖されているらしい。
  • そしてさらに不気味なのが、毎年恒例のCCTVの春節特番、中国版紅白歌合戦と呼ばれる春節聯歓晩会(春晩)だ。
  • 春晩は日本でもYouTubeのCCTVチャンネルで見ることができるのでご覧になった日本人読者もいるだろう。
  • どのように感じただろうか。私は何とも言えないきな臭いものを感じた。

  • 中国版紅白歌合戦の演出は「きな臭さ」満載

    まず、5時間に及ぶ春晩のプログラムの中で、一番話題になったのは解放軍作戦部隊による上陸作戦をモチーフにしたパフォーマンスだった。
     軍用ヘリの爆音とともに兵士たちがロープを伝って舞台に滑り降り、高い壁を乗り越えてみせて、「どこか」に上陸する様子から始まる。
  • そして小銃を掲げた隊列が現れて、軍歌「決勝」を歌いながら、さまざまな陣形を見せるのだ。
  • 背景のスクリーンにはミサイルや戦闘機、揚陸艦やタンク、軍用ヘリなど最新の猛々しい兵器が次々と映し出されている。
  • 明らかに台湾上陸作戦


  • をモチーフにしたような演出のプログラムだった。
  • 確かに春晩では、解放軍がほぼ毎年、なにがしかのプログラムで出演している。
  • だが、これまでは文工団(文藝工作団、解放軍のうち、戦場にいかない文職者の軍団。宣伝や慰問のためのパフォーマンスを行うダンサーや歌手、俳優、監督、作家などが所属。
  • 少将などの階級はあるが、戦場で戦う軍人とは徽章が異なる)に所属する歌手やダンサー、あるいは儀仗隊などの出演で、しかも新年の晴れ舞台にふさわしい華やかな衣装、軍服正装で登場、祝賀ムードのプログラムが普通だった。
  •  例えば、昨年の春晩では、文工団の歌手やダンサーが、赤や白、金色の衣装で、プロとしての歌や踊りを披露していた。背景の大画面には空母など勇ましい映像が映し出され、国威発揚がテーマにはなっているものの、さほどきな臭い印象はなかった。
  •  
    だが、今年の春晩の解放軍プログラムに出演したのは実際に戦闘を行う本物の兵士たちだった。
  • 具体的には北京に駐在する装甲部隊66477部隊だ。
  • こうした実戦部隊の兵士による春晩でパフォーマンス、現実の上陸作戦を連想させるような出し物が行われるのは初めてという。
  • しかも兵士たちは舞台衣装ではなく、作戦行動用の迷彩服と装備をまとっている。
     兵士たちが謳う軍歌「決勝」は「使命を肩に、忠誠は私の告白」「強い志を胸に抱き、永遠に負けたとはいわない」などという、祖国のために命を懸けて忠誠を誓うという内容の歌詞。
  • さらに「戦場で夢を追い、絶対に未来を勝ちとる」という歌詞もあり、これは戦争を非常に肯定的にとらえたフレーズで、兵士や人民を戦争へと鼓舞する内容にもなっている。
  • 新華社は「兵士子弟が祖国を守ってくれるので、安心して春節を過ごせる」とポジティブにこの春晩プログラムを報じていたが、外国人から見れば、なんともきな臭いメッセージを受け取ってしまうだろう
  • 海外の一部華人の間でも「血腥い殺戮を連想させる」と大変不評で、新年を祝う娯楽番組でここまで戦争を想起させる出し物は初めて、という声が相次いだ。 
  • 解放軍が習近平への「忠誠」を演出
  • 今年の春晩に文工団が出演しなかったのは、近年の軍制改革によって、文工団が大幅に縮小されたからだと思われる。
  • 現在、一般の解放軍兵士にも手当が削減されたり、支払いが遅延したりして、その予算不足が表面化している。
  • このため、直接戦力にならない文工団の文職者たちはどんどんリストラされており、今残っている文工団は3つだけらしい。
  • 春晩に実戦部隊が登場するようになって、ますます文工団はその存在意義を失ってしまった。
  •  この春晩の解放軍プログラムについて、米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授はボイスオブアメリカに「台湾を恫喝するだけでなく、同時に米国の顔色を窺って、中国共産党の野心を表明している。中共はある種の微妙なシグナルを発し、台湾、あるいは南シナ海で、西側自由世界と軍事的に衝突する可能性をほのめかしている」とコメントしている。
  • 1月の総統選で与党副総統の頼清徳が当選したことに対する、中国側の恫喝行為という見方もある。 
  • 2023年は、すでにこのコラム欄でも紹介したように国防部長やロケット軍幹部十数名が一気に失脚する事件が起きており、解放軍の習近平に対する忠誠と戦闘力に懸念が生じる状況だった。

  • 今回の春晩の解放軍によるこのプログラムは、実戦部隊に戦争への意欲と習近平体制への「忠誠」を宣伝する狙いもあったかもしれない。 
  • 中国メディアによれば、今年の春晩の視聴率は最近の6年間で最も高く、平均視聴率は30%を超えたという。だが、ボイスオブアメリカがSNSのXを通じて中国人ユーザーにアンケートをとったところでは、春晩を見ない、という回答は例年よりも多く69.2%で、24.9%は今年の春晩の出し物は好きではない、と回答。今年の春晩のプログラムを好きだ、と答えたのは6%にとどまった、という。
    「春晩を見るのは、春晩を嘲笑するため」「春晩に対して、最も良いのは見ないこと、話題にしないこと、視聴率を上げないこと」「春晩は指導者に見せるためのもので、庶民の娯楽のためではない」などといったコメントが集まったとか。
  •  
    ウイグル人が春節を祝う様子を放映した理由
  • もう一つ、春晩の不穏なムードを濃くしたのは、春晩開始以来、
  • 初めて新彊南部のカシュガルに分設会場が設置され、ウイグル人のダンサーや歌手たちの出し物がふんだんに出されたことだろう。

  • スラム教徒のウイグル人に春節を祝う習慣はない。
  • 春節は漢人の習慣だ。だが、ウイグル人が春節を祝って見せる様子を、カシュガルからライブで全国に放送したのだ。 
  • カシュガル地域は、ながらく新疆独立派が多い地域として中国当局からの警戒が強いところであったが、春晩分設会場が設けられて、除夕(中国の大晦日)に全国で生放送できるということは、中国メディアの立場からいえば、「この地域の安全が大幅に改善されたことのアピール」ということになる。
  • だが、ウイグル側、人権派にとっては「ウイグル人の漢族化に成功したこと、エスニッククレンジング成功のアピール」と言えるだろう。これも、ウイグル人に対するジェノサイドを非難する西側国家に対する、中国なりの一つのメッセージともいえる。
  • こうして竜の年の春節は、中国の西側社会に対する恫喝を含む、なんとも不穏なムードの中で幕があけた。
  • 春節休みに日本にくる中国人旅行者もずいぶん減った印象だ。
  • 一部報道によると、2019年比の4割くらいに減っているようだ。
     今年の春節はなんか暗いねぇ、と知り合いの中国人や、中国とかかわりの日本人の友人たちに言うと、だいたい似たような返答がきた。
    「まあ、今はじっとがまんですよ。習近平体制が永遠に続くわけじゃないから」。そうして、また「除夕快楽!」というのだった。
     そこではたと気付いた。「除夕快楽!」は大晦日を楽しく過ごそう!という意味ではなく、「除習快楽!」(習近平がいなくなったら楽しいのに!=「夕」と「習」の中国語の発音は同じ)という意味が込められているのだ。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿