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中国習近平政権、いくら何でもゼロコロナ政策に緩和と政策転換の兆し2022.11.16石 平

2022-11-19 15:21:29 | 連絡
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1962年、中華人民共和国四川省成都市生まれ。
北京大学哲学科卒業、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。
日本留学中に起きた天安門事件で、中国に失望、日本に残り、研究、評論活動を行う。
2007年、日本国籍取得。
『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』で第23回山本七平賞受賞。ほか著書多数。

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〇表向きは堅持だが
11月10日、中国共産党政治局常務委員会は習近平総書記の主宰でコロナ対策会議を開いた。
会議はコロナ感染拡大の状況に対する報告を聞き、今後の政策方針・対策について検討し決定するものであったが、3期目に入った習近平政権の下で最高指導部が開いた最初のコロナ対策会議であることから、その内容は国内外から大きく注目された。 
翌日の人民日報が1面で掲載した会議内容の公式発表を読むと、今までのゼロコロナ政策が、それが中国におけるコロナ対策の「総方針」であることを再確認の上、政策の堅持と継続を強調されている。つまり、物理的な封じ込めを基本とするゼロコロナ政策が当分の間継続されることはこれで明確となった。
 しかしその一方、発表された会議内容にはいつくかの変化も現れている。
コロナ対策を議題とした政治局常務委員会会議が前回開かれたのは今年5月5日であったが、その内容と比べてみれば、実は今、変化が起きていることが明々白々になる。
変化の1つはこうである。前回の政治局常務委員会議は一方的なトップタウン方式で、最高指導部が方針を決めて、その執行と貫徹を下の方に命じる形だったが、11月10日会議はまず、「コロナ対策にかんする報告」を聞くことから始まり、少なくとも形的には「下から」の現状報告と意見を重視する姿勢をとった。
 そして5月5日会議は、政権のゼロコロナ政策について、「われわれの拡散防止政策は科学的であって有効であり、党の性格と宗旨に基づくものである」と述べていた。それは、政策の有効性を高く評価し「党の性格と宗旨」というイデオロギー的高次元から政策の重要性を強調する表現であったが、11月10日会議の内容発表からはこのような大そうな表現が消えている。 
もう1つ、5月5日会議が「わが国のコロナ政策を歪曲し懐疑し否定する一切の言動と断固として戦う」と、ゼロコロナ対策に対するいかなる異議も絶対許さない超強硬姿勢を示したのに対し、11月10日会議の内容発表からこのような戦闘的な表現も消えて、全体的により「穏やかに」なった。 
〇「科学的でない」と認めた?
その一方、今回の会議内容の発表では、5月5日会議内容になかった次のような注目の論調が現れた。
「(今後のコロナ対策において)われわれはより科学的・精確的措置を講じ、疫病対策の有効性を高めるべきである。リスクを正確に分析した上、対策の調整と優良化を図るべきである」。
これは明らかに、今までのような乱暴にして極端な封じ込め策への「反省」から、対策の調整・改善を強く示唆したものである。
中国共産党的表現法では、「これからより科学的精確的な措置を講じる」といえば、それは要するに、「今での措置は科学的・精確的ではない」ことを暗に認めていることになる。
そして「疫病対策の有効性を高めるべきだ」というのであれば、そこにはやはり、「今までの疫病対策は必ずしも有効ではない」との意味合いが含まれているのである。 
独特の表現で反省の意を示した上で、政治局常務委員会会議はさらに、「対策の調整と優良化図るべきだ」と述べたが、それはまさに、今までのコロナ政策に対する調整と改善の姿勢を明確に示したものであると理解できよう。 
そして、「対策の調整と優良化」のために、会議は「二十箇条の措置」を討議しそれを決定した。
翌日に発表されたこの「二十箇条措置」の中身を見てみると、国内の隔離基準の緩和や海外からの入国者に対する隔離期間の短縮が明確に記載されているから、政策の「調整と改善」は単なるポーズではないことが分かる。
「二十箇条措置」が公表された時点で、ゼロコロナ政策はすでに緩和されているのである。
〇実は緩和に動き出している
実は政治局常務委員会議開催前日の11月9日、いくつかの地方でゼロコロナ政策の行き過ぎに対する是正の動きがあった。
例えば重慶市共産党書記の陳敏爾氏が市の対策会議で、「コロナ対策の簡単化・一律化を避け、政策に温かみを持たせるべきだ」と発言したことはその一例である。
あるいは同じ9日、湖北省長の王忠林氏が緊急の対策会議で、「簡単化・一律化を避け、封じ込めの範囲と時間を随意に拡大してはならない。
リスクの高い区域でも人員の流動を保証すべき」と発言したが、これは、今までのゼロコロナ政策の行き過ぎに対する批判にも聞こえる言い方であり、前述の政治局常務委員会会議よりも一歩踏み込んだ形で、「対策の改善」を具体的に示したものである。
もちろん、党大会後に習近平総書記の独裁的地位がさらに強化された中での、地方からの「ゼロコロナ政策緩和」の動きは中央の指示によるものであって、習総書記の意向を反映しているものでしかない。
このように、11月10日の政治局常務委員会議を前後にして、中央と地方は一斉に、ゼロコロナ政策の緩和に動き出したのである。
〇国民全体の忍耐度はすでに限界
以上の動向から見れば、党大会後の習近平指導部は、ゼロコロナ政策の緩和と政策の転換に傾いたことが明らかである。その理由として考えられるのは以下のものである。
①まずは、今までの乱暴にして極端なゼロコロナ政策に対し、国民全体の忍耐度がすでに限界に達しつつことだ。
厳しすぎた政策の継続は、広範囲な反発を招き、社会動乱の導火線になる恐れがある。
➁もう1つの理由はやはり経済だ。
ただでさえ経済が沈没している中で、ゼロコロナ政策の長期的継続は、結果的に中国経済の破滅を招きかねない。
それを避けるためにもどこかの時点で、政策の緩和と転換を図るしかない。
➂その一方、政治的側面として、党大会で習近平氏が反対派を排除して独裁的地位を強化したことで、政策転換の政治的リスクがかなり軽減されたことも理由の1つと考えられる。
党大会以前の状況下では、習総書記が自らの看板政策であるゼロコロナ政策から撤退することとなれば、それが政敵に習近平批判の材料を与えてしまう恐れがあったが、今になってはこのような心配はない。
〇直ちに行われる可能性はもちろんない
このようにして、習政権は行き過ぎたゼロコロナ政策の緩和から、まず政策転換の第一歩を踏み出したが、だからといって急速な政策転換が直ちに行われる可能性はもちろんない。
今の時点でゼロコロナ政策を直ちにやめてしまったら、爆発的な感染拡大を招く恐れがある一方、政策の性急な転換は逆に、国民に大きな犠牲を強いた厳しい封じ込め策が果たして必要だったのかとの疑問を生じさせ、政権に対する国民の不信感を増幅させることもありうるからである。
それでは政権は一体どのようなタイミングで政策の根本的転換を行うのか。
それに関しては、前述の11月5日政治局常務委員会議が「冬期・春期の気候的要因で感染がさらに拡大する恐れがある」と強調している点は注目すべきであろう。
ここでの「冬期」と「春期」は当然、この冬と来年の春を指していると思われるが、どうやら習政権としては、今から来年春までには基本的にゼロコロナ政策は、その行き過ぎに対する緩和・是正は行うものの、堅持する方針であるが、来年春(3月)の全人代が終わったら、根本的な転換を断行する腹づもりのようだ。
ただし、ゼロコロナ政策緩和によって爆発的な感染拡大が起きてしまうような事態となれば、政策転換のタイミングがさらに遅れてしまう可能性もあろう。今後の情勢は依然として流動的である。
https://gendai.media/articles/-/102239?page=5


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