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ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

弧状列島,世界化,スーパーブロードバンド IEEE 802.11ad はミリ波帯を使う無線 LAN 規格 

2020-09-16 14:19:39 | 連絡
802.11adのはなし
2016年6月29日 10:00
IPv6仕様制定20周年企画から始まってしばらく「無線以外」の話が続きましたが、今回は60GHz WiFiこと802.11adの話です。
IEEE 802.11ad はミリ波帯を使う無線 LAN 規格です。仕様上は 45GHz から上の領域を使うと定義されていますが(IEEE 802.11ad-2012 3.1)、一般的には各国における電波規制の関係上 60GHz 帯(57~66GHz) で運用されます(※註)。
IEEE 802.11 規格では PHY に略称を付けており、元祖 802.11 に対して 802.11b は HR (High Rate)-PHY, 802.11a/g は HT (High Throughput)-PHY、802.11n は VHT (Very High Throughput)-PHY と呼ばれてきました。ミリ波の PHY は 802.11ad 仕様書で DMG (Directional Multi Gigabit)-PHY と呼ばれていますが、HR だとか VHT の用語が殆ど一般に知られなかったように「DMG」も仕様書上だけの用語で、一般には「802.11ad」あるいは「WiGig」の呼称のほうがよく知られています。

※註:この帯域は大気中の酸素分子共鳴によって電磁波が減衰しやすいため長距離通信では使い物にならず、それゆえに「好きに使っていいよ」と開放されている事情があります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Extremely_high_frequency
802.11ad のトポロジー
一般的に、2.4GHz や 5GHz の Wi-Fi はアクセスポイント(AP)を中心にしたスター・トポロジーで運用されます。アクセスポイントは一定間隔でビーコンフレームをブロードキャスト送信して自分の存在をステーション(STA)に知らせ、STA は原則として AP とのみ通信、STA-STA の通信も AP を介した中継で行われます。
ミリ波帯の 802.11ad でも基本的に AP-STA モデルが継承されています。ただし電波の指向性が強く通信距離の短いミリ波帯では「建屋の何処かに AP を置き、全員がそれを共用する」という運用は難しいと予想されるため、STA 同士が通信するピア・トゥ・ピアのモードも用意されておりこれを PBSS (Personal Basic Service Set)と呼んでいます(IEEE 802.11ad-2012 4.3.2a)。PBSS においてはどちらか片方が簡易 AP のような格好でネットワーク管制を司り、これを PCP (PBSS Central Point) と呼びます。PBSS はいわゆる Wi-Fi Direct と似ていますが、Wi-Fi Direct があくまで従来の AP/STA の接続プロトコルに基づいているのに対し、PBSS は 802.11ad DMG 専用であり DMG Beacon や DMG Information Request などの拡張フレームを使用して通信することが定義されています。
なお 802.11ad 仕様書には IBSS (いわゆるアドホックモード) も可能という記述がありますが(IEEE 802.11ad-2012 4.3.17)、どこまで本気なんでしょうか。仕様上はアドホックモードでの WPA2 相当セキュリティも制定はされていますが(IEEE 802.11i-2012 8.4.4)、ほとんど使われていないのが現状だと思いますけれど...。
802.11ad の MAC
802.11ad の MAC フレームフォーマットは基本的に従来の Wi-Fi と上位互換です。ただし 11ad 特有の機能を実装するため、従来の予約領域を割いて DMG ビーコン(type=3) と拡張制御フレーム(type=1, subtype=6) を定義しています(IEEE 802.11ad-2012 8.2.4)。
従来の Wi-Fi では単フレームの MSDU が最大 2304 バイト、連鎖フレームの A-MSDU が 3839~7935 バイトとなっていましたが、11ad では最大 MSDU 長が 7920 バイトに拡張されアグリゲーションを使わなくても大きなフレームを送信できるようになりました(IEEE 802.11ad-2012 8.2.3)。連鎖データフレームの A-MPDU に関しては最大 65535(64K) バイトから 262143(256K) バイトにまで拡大されています(IEEE 802.11ad-2012 8.6.1)。
従来の Wi-Fi では、各ステーションは基本的に「自分が送信したい時に送信する」DCF (Distributed Coordination Function) で運用されていました。802.11ad では PCP/AP がもう少し時間制御に介入します。ステーションは「自分の好きな時」送信できるわけではなくビーコンに同期する必要があり、PCP/AP から割り当てられたデータ転送時間(Data Transfer Interval, DTI)の間だけ相互通信を行います。DTI は更に Service Period (SP) と Contention Based Access Period (CBAP) に細分化され、前者は予約された帯域での転送(802.1p/802.11e における Transport-Stream に相当)、後者は Best Effort での機会的通信に割り当てられます(IEEE 802.11ad-2012 Figure 9-43)。DTT-CBAP 内での衝突制御は従来の Wi-Fi 同様、DCF あるいは HCF (Hybrid Coordination Function) で行うと定義されています。PCP/AP が中枢となって通信タイミングを制御する PCF (Point Coordination Function) モードは「non-DMG STA」のみのオプションと定義されており、802.11ad DMG は PCF に対応しないことになっています(IEEE 802.11ad-2012 9.2.1)。
802.11ad のセキュリティ
802.11ad のセキュリティモデルも従来の Wi-Fi の延長線上にあります。すなわち 3-way handshake による鍵交換、PSK ないし EAP ベースの認証という基本構造はそのまま引き継がれています。
11ad では従来の AES-CCMP (Counter with CBC-MAC Protocol) 暗号フォーマットに加えて AES-GCMP (Galois/Counter Mode Protocol) が追加されました(IEEE 802.11ad-2012 11.4.5)。Galois というのは 19 世紀フランスの数学者エヴァリスト・ガロア(Evariste Galois)によって発見されたガロア体(Galois field)と呼ばれる数群を用いていることに由来します。CCMP も GCMP も暗号エンジン本体は同じ AES 128bit ですが鍵の生成と認証子の演算手順が異なり、CCMP 方式では認証値を逐次演算で算出するため並列処理ができないのに対し、GCMP では事前算出したガロア体の参照として記述できるため認証演算が並列処理できることが利点...のようですが、なかなか難解でよくわかりません。
ちなみにガロアは数学的業績もさることながら、その短くも激烈な生涯でも知られています。歴史上に奇人変人の天才は少なくありませんが、「数学者および革命家、決闘による腹膜炎によって死亡、享年 20 歳」のような略歴を持つ人はそういないでしょう。
まとめ
以上、IEEE 802.11ad-2012 仕様書でキーとなりそうなポイントを手短に解説してみました。技術的には従来の Wi-Fi の枠組みを可能な限り応用し、冒険を控えた現実的な仕様と評することができるかと思います。
さて、ならば 802.11ad は商業的に成功するでしょうか?未来を占うのはいつでも難しいです。(注1)
「近距離限定・超高速無線」をうたい期待された UWB (Ultra Wide Band) が無残に失敗する現場を目の当たりにした経験があれば尚更のこと。UWB の場合は IEEE 802.15.3a 標準(※註)をめぐる泥試合を筆頭に複数の失敗要因がありましたが、「近距離ならケーブルでつないだほうが安くて速くて確実」「情報の蓄積配布の形態がクラウド化し、ローカルマシン間のファイル転送というユースケースは過去のパラダイム化しつつある」という UWB が直面した問題は、802.11ad にも同じようにのしかかってくるはずです。

※註:実は 802.15.3 WPAN にも 60GHz 帯の 802.15.3c-2009 規格が制定されています。UWB の失敗が明らかになった 2007 年頃には「こっちが本命か?」と話題になったことがありましたが、その後は WiGig/802.11ad の影に隠れて今ではほとんど忘れられています。

「より大きく、より速く」という量的な改良は大抵どこかで飽和点を迎えます。計算速度 0.1 秒以下の電卓や最高速度 200Km/h 以上の自動車は、必ずしもその性能が利便にはなりません。パーソナルコンピュータは長らくそれを先延ばしにしてきましたが、スマートフォンやスマートパッドが登場して「普段使いならこれで充分じゃん!」と気付かれてしまってからは伸び悩んでいます。802.11ad も「Wi-Fi がもっと速くなりました!」というだけでは訴求力に乏しいでしょう。「5G バイトのファイルが 10 秒で転送できます」とか言っても、そんな巨大ファイルの転送を日常的にやらないのならば利便にはなりません。
あるいは、VR (Virtual Reality) や AR (Augumented Reality) 用の三次元ゴーグルなどの新しいアプリケーション分野で使われることになるのでしょうか?ただ「速くなりました」ではない、新しい価値を提供する真のイノベーションに期待したいところです。
(注1)
☆弧状列島,共助,IoT、スーパーブロードバンドモニタリング即時同報多地点伝達テレワーク

☆弧状列島,共助,肺炎ウイルス三密「「密閉・密集・密接」問題解消、平時・非常時の安全なICT環境で安心WEB会議、授業及びコンサート普及促進






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