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北朝鮮の崔善姫外相が痛恨のミス、老獪プーチンの術中にはまる#2024.11.8#西村 金一

2024-11-17 08:23:36 | 連絡
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西村 金一のプロフィール
にしむら・きんいち 1952年生まれ。
法政大学卒業、第1空挺団、幹部学校指揮幕僚課程(CGS)修了、防衛省・統合幕僚監部・情報本部等の情報分析官、防衛研究所研究員、第12師団第2部長、幹部学校戦略教官室副室長等として勤務した。
定年後、三菱総合研究所専門研究員、2012年から軍事・情報戦略研究所長(軍事アナリスト)として独立。
執筆活動(週刊エコノミスト、月間HANADA、月刊正論、日経新聞創論)、テレビ出演(新報道2001、橋下×羽鳥番組、ほんまでっかTV、TBSひるおび、バイキング、テレビタックル、日本の過去問、日テレスッキリ、特ダネ、目覚ましテレビ、BS深層ニュース、BS朝日世界はいま、言論テレビ)などで活動中。
著書に、『こんな自衛隊では日本を守れない』(ビジネス社2022年8月)、

『北朝鮮軍事力のすべて』(ビジネス社2022年6月)、『自衛隊はISのテロとどう戦うのか』(祥伝社2016年)、『自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか』(祥伝社2014年)、『詳解 北朝鮮の実態』(原書房2012年)などがある。
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1. 露朝軍事同盟の今は昔

 旧ソ連と北朝鮮は1961年、「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結した。
 その第1条には、軍事協力について「いずれか一方の締約国がいずれかの一国または同盟国家群から武力攻撃を受け、戦争状態に入ったときには、他方の締約国は直ちにその有するすべての手段をもって軍事的および他の援助を供与するものとする」と明記されていた。
1961年に締結した条約が96年に失効して以降、公式的にはロシアからの北朝鮮への直接的な経済的援助や軍事技術援助はなくなった。
 武器支援はもちろん、兵器などの部品の供給すらしなくなった。
ロシアと北朝鮮は2000年に軍事協力の規定がない「ロ朝友好善隣協力条約」を締結した。
 しかし、その後も冷却した関係は継続し、北朝鮮が要望しても軍事支援はなかった。
 ロシアは、兵器や石油製品の供与に対価を要求したので、
北朝鮮はそれを支払うことはできなかった。
 この状態の関係がこれまでずっと続いてきた。
ところが、ウクライナとの厳しく苦しい戦いを強いられているロシアは、
戦局を有利にするために大量の弾薬や兵員の派遣が必要になった。
 中国やイランからの兵器やその部品の支援は得られるものの、
兵員や弾薬は得られない。それを満たしてくれるのは北朝鮮だけだった。
 そこで、2024年6月「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。
その第4条には、「どちらか一方が、武力侵攻を受け戦争状態になった場合、遅滞なく保有するすべての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と軍事協力について明記されている。 
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は新条約について、1961年締結の「ソ朝友好協力相互援助条約」にあった有事の相互軍事援助に近い内容の条約になったことを明らかにした。 
2.同盟を恒久化したい北朝鮮の儚き夢
軍事協力についての表現は同じだが、
プーチン大統領が1961年の条約と同じだとは言わず、
近い内容と発言したのは、両国の思惑が違っているからだ。
 1961年の条約は北朝鮮の方が軍事支援を強く求めていたが、
今回はロシアの方が兵器や人的支援が必要なのだ。
 ロシアは切羽詰まっているし、
北朝鮮は軍の近代化にロシアの支援が必要であり、
相互の供給がぴったりと当てはまったところである。
ただし、望むのはロシアは戦っている今だけであり、
北朝鮮は戦争の後も続けたい。
この条約には、「自国の法律に従って」と記されている。
 この自国の法律で、戦争中の協力・支援の制限を加えられるのだが、
戦後には、ロシアが自国の法律を書き換え、
あるいは新たに作ることによって、協力・支援を停止する可能性が含まれているようにも思える。
3.旧ソ連から得たのは旧式兵器ばかり
ソ連が崩壊するまでは、北朝鮮軍の主な兵器は旧ソ連と中国から供与されたものであった。
 旧ソ連からは、戦車・歩兵戦闘車×約1000両、装甲車×約600両、火砲×900門、空軍機×約300機、W級潜水艦×4隻、哨戒艇×約20隻など多く供与された。
 中国からは、戦車×約100両、装甲車×約500両、ロメオ級潜水艦23隻と空軍機「MiG-17・19・21」など約300機である。
 潜水艦と空軍機の旧式のものは中国から供与されたものであった。
中露とも、ほとんどが自国で使用しなくなった兵器を北朝鮮に大量に供与したのである。
 ソ連崩壊の前に供与されたのは、北朝鮮空軍の中で比較的新しい「MiG-29」の18機だけである。
 ソ連崩壊後、
金正日総書記は近代兵器の導入のために、
ロシアを何度も訪れ、「Su-27」などの新型戦闘機の無償供与を求めたが、得ることはできなかった。
中露から見れば、北朝鮮は対等な国ではなく、格下の都合よく使える国としか見ていなかった。
 石油製品については、ロシアが1989・90年頃まで約50万トンを無償で供与していた。
 その後は有償となり、石油製品を購入することができなくなった。
 併せて食糧不足にもなり、1990年中頃には、国内に多くの餓死者が出た。
中国は、石油製品50万~100万トンを供与し続けている。
4.2024年、北朝鮮は何を求めたのか
北朝鮮は、核ミサイルの開発を飛躍的に進めてきた。
 だが、短距離弾道ミサイルは、ウクライナ戦争で使用された結果、
目標まで到達できず途中落下しているなどの構造や精度上の多くの問題が明らかになった。
 巡航ミサイルについても、弾道ミサイルと同様の問題がある。
 核兵器については、小型の戦術核の実験が未実施であることから、
開発がまだ完了していない。
偵察衛星の打ち上げや、撮影技術、GPS誘導技術なども、極めて未熟な状況である。
 北朝鮮は、ロシアに戦術核兵器技術の供与を強く要求するだろう。
 しかし、ロシアは核技術の漏洩や北朝鮮が中国に寝返って情報提供することも考えられることから、核心部分の情報提供は渋るだろう。
一方、通常兵器についても、
戦闘機・戦車・火砲・潜水艦・対艦ミサイル・無人機など、極めて特別なほんの一部の兵器を除き、あらゆる兵器が40~60年ほどの前の時代遅れの兵器ばかりである。
 旧ソ連や中国との軍事同盟の締結によって得られた、古くなって使えなくなって譲られたものだ。
石油製品や食料も深刻といえるほど不足している。
 北朝鮮は、兵器や兵士をウクライナ戦争に提供することで、
前述の多くの問題を解決したいと思っている。
 旧式兵器をロシア軍レベルに近づけ、宇宙技術・核ミサイル技術も導入したいと願っている。
それらの支援を戦争後に継続して求めるだろう。

5.ロシアは何を求めているのか
ロシアは兵員の徴集が難しく、兵器・弾薬が欠乏している。
 ウクライナとの戦争で、ウクライナに勝利あるいは今後有利に展開していくためには、北朝鮮の兵器と兵力が絶対に必要である
 それも、できる限り多い方が良いと考えているだろう。
 ミリタリーバランスによると、
北朝鮮には地上軍兵が110万人いる。
ロシアは、そのうちの10~20%を派遣してほしいと考えているだろう。
 現在は1.2万人でも、次には3万~5万人、それから約10%の10万人、できれば約20%の20万人ほどを送ってほしいはずだ。
 弾薬類は、戦争準備のために保管していたものをほぼ全部(現実は保管状態が悪く、不発弾などの不具合も多い)、兵器は生産できる限りの量を求めるだろう。
 ロシアは、北朝鮮の兵器・弾薬、兵員については可能な限り要求する。
 特に、兵員については、北朝鮮の国内情勢や対韓国との関係など、お構いなしに求めるに違いない。
6.軍事技術の提供次第で変わる派兵人数
ロシアは、北朝鮮から多くの兵士を得たいと思っている。
ロシア軍の苦境を直接手助けできるのは北朝鮮だけだからだ。
 両国ともこのことを十分に理解している。
そのため、プーチンはこれまで、自ら北朝鮮を訪問し、金正恩と握手し、金正恩を持ち上げてきた。
 国防大臣や外務大臣も訪問して、友好の姿勢を示した。
 ロシアはこれまで、北朝鮮に対して大国に頭を下げてくる小国の北朝鮮に「支援してやっている」という態度であった。
ソ連が崩壊して支援ができなくなると、
それまでの支援を止めたのがロシアであった。
 両国とも過去の関係を認識しつつ、
ロシアは北朝鮮から多くの軍事協力、特に兵士派遣を頼み、北朝鮮はこの機会を利用して、最大の支援を得ようとしている。
 これまでの露朝関係については、北朝鮮もロシアも十分に認識しているはずだ。
今になって、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務大臣の訪露時に、
プーチン大統領がわざわざ会って握手するなど手厚くもてなしても、
プーチン大統領の笑顔の奥に何が潜んでいるのかを理解している。
ただ、今回ロシアを訪問しプーチン大統領と握手した崔善姫外務大臣は、
「我が国は(ウクライナ紛争で)ロシアが勝利する日まで同志であるロシアを断固支援する」と明言してしまった。
 この言葉は今後、北朝鮮に重くのしかかることになるだろう。
7.危うし金正恩王朝、崩壊の足音
北朝鮮と韓国が睨み合う朝鮮半島は、朝鮮戦争が停止している「休戦協定」の状態である。
 戦争が完全に終結した「平和条約締結」までには至っていない。
両国関係はまだ危険な状態にあるのが実情だ。
 北朝鮮がこの状態を放置しておいて、
露朝の軍事同盟に基づいてウクライナでの戦争に兵員を派遣し、
ロシアの要求にすべて応えることは無謀で危険なことである。
北朝鮮は、このことを深刻に考えているのだろうか。 
ロシアは、朝鮮半島の対立関係や北朝鮮の国内事情を考慮することなく、
お構いなくより多くの兵員の派遣を期待し、要求するだろう。
 地上戦闘を有利に進めるために、
より多くの兵士が必要だからだ。
 国内の金正恩体制への影響を考えると、
北朝鮮の兵士は死亡し帰国できなくなり、国民は戦争実態の悲惨さを知ることになる。
その結果、兵士たちが食料支援や安いお金で身売り同然になっていることなど、兵士派遣への不満が、金正恩氏およびその体制に向けられる。
 そして、国内に反乱の火種を抱えることになるだろう。
北朝鮮は、ロシアからの軍事協力を得て喜んでばかりではいられない。
 ロシアは、できる限り多くの派兵を望むが、それに応えられる限度をどこにするのかが、両国の戦略となるであろう。
 プーチン大統領が、金正恩総書記を持ち上げれば持ち上げるほど、
北朝鮮は、断ることが難しくなる。
北朝鮮人民、特に若者層には、韓国の映画などで北朝鮮が独裁国家で人民が虐げられてきたことを認識している者が一定数いる。
 これに、死地に送られた兵士や派遣した軍の不満が重なり合えば、体制への反発のうねりが高まることになる。
 これまでのような笑顔で人民のために統治するという金正恩総書記の化けの皮は剝がれてしまう。
人民を力でどこまでねじ伏せられるか。今までは国内に危機と敵を作ることにより、批判の矛先を外部に向けさせてきたのが北朝鮮である。
 ウクライナへの軍事協力で、
朝鮮半島の火薬庫に火が付く恐れが出てきた。



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