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日本が「高賃金化」を達成するために必要な4つの仕掛け/2024.01.10/Forbes JAPAN 編集部

2024-01-11 16:14:38 | 連絡
Forbes JAPAN 2024年2月号 (70ページ〜)「新卒年収710万円」実施も 日本が高賃金かを目指す方法 に登場の田尻望氏
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株式会社カクシン代表取締役CEO。
京都府京都市生まれ。
大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。
2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。
大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズまでを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。
その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。
企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。
また、自身の人生経験を通じて、人が幸せに働き、生きる社会を追求し続けており、エネルギッシュでありながら親しみのある明るい人柄で、大手企業経営者からも慕われている。
私生活では3人の子を持つ父親でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』より
 
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がWeb読者向けに特別執筆した記事を紹介しよう。
田尻氏はキーエンスにコンサルティングエンジニア職として在籍した後に独立、経営コンサルタント「カクシン」を設立。
「平均年収2000万円超」のキーエンスに在職した氏が提案する「高収益高給与」実現法とは?
先日、ある日本企業の給与に関して、衝撃的な話を聞きました。
京都大学を卒業し、有名な某大手総合電機メーカーに就職した入社3年目の社員(開発職)の年収が、わずか300万円だというのです。
月収にすると25万円です。
社会保険料などを引かれたら、おそらく手取り額は月20万円を切るでしょう。
京都大学を出て大企業に入社したのに、いったいどういうことなのでしょうか?
〇なぜ日本は賃金を上げることができないのか?
なぜ日本の平均賃金は低いままで「高賃金化」が難しいのか? 
次の図は、同じ100億円の売上をあげている2つの会社を比較したものです。




この図を見たとき、あなたはどちらのほうが良い会社だと思いますか? 
パッと見て、利益が15億円出ている右の会社のほうが良い会社のように見えるはずです。
つまり一般的に、同じ売上に対して原価・販管費を抑えることができ、利益が多いほうが良い会社と見られるのです。
 では、「賃金」はどこに入るのでしょうか? そう、販管費に入ります。
多くの人は、「会社が高収益になって利益が出れば、給与も上がる」と思っています。
しかし、この2つの図を見てわかるように、実際には「高収益化」と「高賃金化」は、本来、相反するものです。つまり、
利益を上げたければ、賃金は下げたほうがいい(そして株価が上がる)
賃金を上げると、利益は下がることになる(そして株価も下がる)
 というのが経営における基本的な考えかたであり、この考えかたのもと(ほかにもさまざまな理由はあるにせよ)、日本では「賃金をめぐって、労使が対立する」という構造を生み出してきたのです。
〇キーエンスで学んだ「賃金の高めかた」
私は、この対立構造に終止符を打つべく、次のような考えかたを提唱しています。
それは、「1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現する」です。
(※そのための具体的な方法=キーとなる仕組みについては、後半で説明します)
これは、現在私がコンサルタントとしてさまざまなクライアント企業に提供し、大きな成果を出している「付加価値」をテーマとした「価値主義経営」のコンセプトを凝縮した結論であり、高賃金化を実現するための、たった1つの方法と言っても過言ではありません。
そして、そのコンセプトの多くは、私がかつて新卒で入社し、4年間在籍したキーエンスという会社で学び、培った考えかたや手法がベースとなっています。
 キーエンスはファクトリー・オートメーション用センサーなど、さまざまな機器を開発・製造販売している企業であり、「従業員の平均年収2000万円超」「社員1人当たりの営業利益額1億円超」「時価総額17兆円」という理想的な会社として、近年大きな注目を集めています。 
私は同社にコンサルティングエンジニア職として入社し、4年間在籍しました。
そしてその間に「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」という、高賃金化を目指すうえで基礎となるコンセプトと、そこを起点とするさまざまな仕組み、および仕組みの連鎖について学んだのです。 
〇本音を言おう、「夢がないんじゃない。お金がないんだ!」と
今は、高賃金化を実現する方法をみなさんに提唱している私ですが、実は、かつて低収入で生活が苦しく、悩んでいた時期があります。
キーエンス退社後、26歳で知人と新規事業を立ち上げて失敗し、その後何とか職にありついたものの、9時から24時まで休まず働いて月収25万円(後で計算してみたら時給計算で666円)しかなかったのです。
当時私は、すでに結婚していて子どもがいたにもかかわらず、収入が少なく、欲しいものも自由に買えない状態でした。実際に、コンビニでコーヒーを買おうとしたものの、手持ちのお金があと2、3円足りず、買えなかったことがありました。
 このとき私は思いました。「将来、子どもが大きくなったとき、この子らの願いを叶えてあげられるだろうか?」と。お金を十分に持っていないと、子どもが「こんな習いごとをしたい」と望んでも、その願いを叶えてあげられない可能性が非常に高くなります。そんな将来に対する不安に直面し、どうしたらいいのかと悩む日々が続きました。
みなさんも、何かやりたいこと、または家族にしてあげたいことがあっても、「時間」もしくは「お金」が足りない、という理由であきらめていないでしょうか。
 「時間」はつくろうと思えば、何とかつくれるかもしれません。
しかし、多くの場合、私たちの思いや行動に縛りをかけているのは「お金」です。
多くの人が、お金に余裕がないため、豊かな生活を送るために必要なお金を稼げていないために、さまざまな困難に直面しているのです。
厚生労働省が公表した最新データによると、日本の相対的貧困率(等価可処分所得が中間値の半分未満の世帯員の割合)は約15%で、6.5人に1人、すなわち2000万人以上が貧困状態にあるそうです。
これはOECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国の中で最悪の状況です。また、国税庁が実施した「令和3年分民間給与実態調査」によると、年収400万円以下の人の割合が5割を超えています。
ちなみに日本人の平均年収は443万円で、その手取り額は349万円(月額29万円)です。











そんな中、「夢がない若者が増えている」とよく耳にします。
しかし、「もっと夢を持って生きよ!」と言われても、とうてい無理な話です。
ここで、彼らの本音を代弁して言いたいのは、「夢がないんじゃない。お金がないんだ!」ということです。 
〇這い上がるきっかけ「経営改善」のために行った「3つのこと」
私が生活に困窮していた頃、雇っていただいていた社長から、ある日「お前、このまま終わるつもりか?」と言われました。
この言葉を言ってもらえたことが、私の人生における転機となりました。
「そんなわけがあるか!」と、自分の現在の状況に対して怒りがわき、取り掛かったことがあります。
社長の会社への経営コンサルティングです。
もちろんその会社に所属しているわけですから、「コンサルティングさせてください」などとは言えません。
「店舗改善をやらせてください」と願い出たのです。 
私は、「売上、コスト、利益、離職率を改善すれば、経営と人の両方にとって良い結果になるはずだ!」と仮説を立て、「何が何でも改善する!」と意気込みました。
最初に改善に入らせていただいたのは、400席以上ある大阪・梅田茶屋町の居酒屋でした。
腕のいい料理人が本格的な料理を作っている和食居酒屋だったのですが、当時は前年対比で大幅にマイナスとなっており、スタッフの離職もとても多い状況でした。 
当時27歳だった私は、飲食店経営に関する知識も人脈も乏しかったので、自分なりにさまざまな仮説を立てながら、店舗改善施策を3つだけのアイデアにしぼりました。
その一つとして始めたのが、「1000人中、999人に無視される仕事」でした。それは、道端で看板を持って立つ「呼び込み」です。
 そのエリアは競合店も多く、その店舗は少し路地の奥まった場所に位置していたので、人通りも少なく、あまり認知されていない状態でした。
またウェブからの集客強化はすでに行っており、それ以上、集客のためのコストは上げられませんでした。 
一方で、その店舗からほんの少し歩くと、ひと晩で約2万人、1ヵ月で約60万人が行き交う道がありました。
そこで私は毎日その人通りの多い道に立って、呼び込みをすることにしたのです。
ちなみに私は当時、昼は社長のカバン持ち(秘書的活動)をしていたので、ずっとスーツ姿でした。
ひときわ明るいLEDのついた看板を手に、ネイビーのスーツにネクタイを締めたビジネスマン風の男が、全力の笑顔と声で「個室居酒屋○○です! 個室空いてま~す! 今すぐ入れま~す!」と叫んでいたので、奇妙に思った人も多かったのではないでしょうか。
大阪梅田では、特定の人への声掛けは客引き行為として違反になってしまうので、空中に向かって声を出すことしかできませんでした。この呼び込みを、雨の日でもビニール傘を看板にかけながら(自分にはかけずに)続けたのです。 
そのかいあってか、結果としてそれまでの推移より「売上27%向上」(年商2億円ほどの店舗だったので、年間約5000万円の改善)、そして「スタッフ離職0」という状態にすることができました。
先ほど、「店舗改善にあたって3つだけのアイデアにしぼった」と言いましたが、その3つとは、
この
①「呼び込み」と
➁「店内のトイレ掃除」、そして
➂「お客様のお出迎えとお見送り」です。
私はこの3つだけを徹底して行ったのです。
〇過去と他人は変えられない
当時、私は社長(当時は専務)から任命してもらい、店舗の改善に来ていたわけですが、店長さんやスタッフさんから見たら、どう考えても、「本社から突然やって来た、やっかいな人」でした。
しかも飲食業経験のないド素人です。
そんな人間が、自分が思いついたアイデアを、
①「店長、あそこで呼び込みしたほうがいいですよ。だってあそこには夜だけで2万人も歩いているんですよ」
➁「店長、トイレ掃除を徹底しないとだめですよ。トイレが汚かったらお客さん来なくなっちゃいますよ」などと、指示だけしていたらどうなっていたでしょうか?
①おそらく店長はスタッフに「本社の人が言っているから、やっといて」と指示し、命じられたスタッフは「なんでこんなことをしなきゃいけないんだ!」と、無表情で呼び込みをしていたでしょう。
➁トイレ掃除も嫌々やったでしょう。その結果、呼び込み分のコストだけが増え、売上も下がるリスクが高まり、離職もさらに増えていたかもしれません。
当時、私が座右の銘にしていた言葉は、「過去と他人は変えられない。
変えられるのは自分と未来だけ」、「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六の言葉)です。
何かを変えようとするなら、まず変わるべきは自分です。
自分自身が一生懸命になっていないのに、何かが変わることはありません。
そして、自分自身がやっていないのに、誰かが動いてくれるはずがないのです。 
〇1人1時間あたりの付加価値生産性」を高めなければ給与は上がらない
話をもとに戻しましょう。

前述したように、私は何とか店舗改善に成功したのですが、その結果、私の給与が一気に上がったか? というと、そうは問屋が卸しませんでした。
私は5000万円の売上向上に貢献したように見えます。
離職損失の面でも、当時の採用費用から考えると、500~1000万円ほどの効果があったと思います。すごい成果だ! と思っていただけるかもしれませんが、これは私だけの努力による成果ではありません。
また、当時この会社は、50億円以上の売上がありましたから、5000万円の改善といっても、会社全体で見ると、わずか1%以下の改善にしかなっていないのです。
そんな状況で給与を大幅に上げることは不可能です。
なぜなら給与とは、「1人あたりの付加価値生産額を、従業員に一定分配したもの」だからです。つまり会社全体の生産性を向上させなければ、給与は上がらないのです。
もし一店舗において「売上27%向上」「離職0」という状態に改善したことを「仕組み化」し、会社全体でも同じ成果を出せたとしたら、給与アップにつながったのでしょうか? それでもまだ微妙です。
では、どうすれば「会社全体の給与を上げる」ことができるのでしょうか?
そのためには、冒頭で述べたように、「最小の資本と人で、最大の付加価値を生み出す」というコンセプトのもと、「1人1時間あたりの付加価値生産性」を高めることが必要です。
それができて初めて、「高収益」と「高給与」が同時実現し、全社員の給与アップが可能となるのです。
売上が増えたとしても、人が増えて、会社として使うお金が増えてしまっては、「1人当たりの付加価値生産額」は増えず、給与も増やすことはできません。
〇「努力は報われる」のではなく「正しい努力で価値をつくれば」報われる
私はキーエンスでの経験と、その後の飲食店勤務の経験、そして両者の比較を通して多くの学びを得ました。
「お客様に提供する『価値』の根源は『感動』である」という学びはその一つですが、もう一つ学んだ重要なことがあります。
それは、「たとえ同じ労力、同じような仕組みであったとしても、『どこにどのような影響を与えるのか』によって、生まれる価値の大きさが変わってくる」ということです。
高収益を実現している企業の人たちは、常にお客様の仕事現場の細部を非常によく見ています。
他社が見つけられない「お客様の困りごと」がどこにあるのか? を的確に捉えようとしているのです。
キーエンスが常にお客様に高付加価値を提供できる秘訣は、その点につきると言っても過言ではありません。
ただし、「お客様の困りごと」を見つけられれば、飲食業でも超高収益企業になれるのかというと、そんなことはありません。
これには、「企業(B)とエンドユーザー(C)の距離」も関係しています。
「価値の最小単位(感動)」を受け取るのは、いつも最終的なお客様(エンドユーザー)です。
彼らが商品やサービスに感動し、「ありがとう」と言って、感動を与えてくれた相手にお金を払うことで、その商品やサービスに関連した会社に利益をもたらします。
飲食業では、目の前で食事をする(感動する)お客様から、直接お金を受け取ります。
それはそれでたいへんありがたいことなのですが、ビジネス的に考えると、富裕層に対して高付加価値(=高額の料理)を提供しない限り、そこに莫大な利益が生まれることはありません。 
 わかりやすい例が、コンサルタントが飲食業のクライアントをコンサルティングする場合です。1店舗だけのコンサルティングをするのと、フランチャイズ本部のコンサルティングをするのとでは、発生する価値が大きく違ってくるのです。
1店舗のみのコンサルであれば、売上1億円の店舗で生産性が10%上がっても、1000万円の売上アップにしかなりません。
一方、フランチャイズ本部へのコンサルでは、本部の下に売上1億円の店が100店舗あれば、10%の生産性アップで合計10億円の売上アップを見込めます。 
このように、たとえ同じ労力であったとしても、そして提供するものが同じ仕組みであったとしても、「どこにどのような影響を与え、その後どれくらいの影響の拡がりがあるのか」によって、そこに生まれる付加価値の大きさは変わってきます。
つまり、「努力は報われる」のではなく、「正しい努力で価値をつくれば」報われるのです。
これを知ることができたのは、間違いなく前述した飲食店の現場です。
そこでは朝9時から24時まで頑張っているのに、生活に対して十分な給与をもらえませんでした。
「なぜこんなに頑張っているのに、給与が上がらないんだ!」と自問自答する日々が続きました。
今であれば、その理由がよくわかります。私がいくら毎日看板を持って呼び込みをして頑張っても、せいぜい月に何百万円、年間で何千万円の売上アップにしかならず、会社や事業全体の付加価値生産性を大きく向上させるまでには至らなかったのです。
繰り返しますが、
本当の高賃金化を目指すためには、会社全体の付加価値生産性の向上=「1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現する」ことが必要なのです。 
〇経営者と社員が共に「高収益と高給与の両立」を目指す仕組みづくりを
1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現するためには、経営者と社員が同じ価値観のもと、両者共に手を取りあって取り組むことが重要す。
そして、「経営者と社員の双方が高い目標を掲げ、その利益目標を達成したくなり、その目標を達成するための『能力アップ』と『行動』、『仕組みづくり』と『マネジメント』をしたくなる」という状態にしなければなりません。
そのために必要な仕組みはいくつかあるのですが、ここではキーとなる、最も重要な仕組みを紹介します。それは、「全社業績連動型報酬制度」です。
「全社業績連動型報酬制度」とは次のようなものです。
・営業利益の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。
たとえば、営業利益が500億円出たら、その10%(50億円)を全社員へ分配する。
・1人1時間当たりの付加価値生産額の向上分の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。
たとえば、1人1時間当たりの付加価値生産額が5000円から10000円に上がったら、その差分(5000円)の10%を分配する。
※この場合、平均時給が500円、年間100万円ほど報酬が増えることになります。
・その他、「ストックオプション」「従業員持株制度」など
全社業績連動型報酬制度は、個人プレーではなく「チームプレー」を基本とし、個人責任ではなく「連帯責任」という考え方が基本となります。
みんなで成果を出せば、みんなの報酬も上がり、みんなで頑張っても成果が出なければ、みんなの報酬も下がるのです。
つまり全社業績連動型報酬は、「チームで価値づくりすることに対しての報酬」なのです。
 全社業績連動型報酬制度について、その特長とメリットを見てみましょう。
 
1 .「高い目標を掲げる」ほうが合理的
まずは「目標設定」についてです。「目標を高くしたところで、自分に返ってくる報酬額がどれくらいになるか見えないので、低く設定しておいて、達成率を高くしよう」「あまり無理せずに目標を達成して、余暇の時間を増やすなどしたほうが合理的」という考えかたがあります。
つまり、粗利5,000万円を達成できる人が、「目標を4,500万円にして、着地5,000万円で、達成率111%になる」のと、「チャレンジングな目標7,000万円を掲げて、着地6,500万円で、達成率93%になる」のと、どちらのほうがいいのか(合理的か)? という話です。 
通常の報酬制度では、目標の達成度で評価することが多く、「いくら粗利を増やしたところで、自分に分配される報酬が増えるわけではないので、前者のほうが合理的」ということになってしまいます。
そのため、みんな低い目標を設定したがるのです。
しかし、全社業績連動型報酬制度があると、粗利額として1500万円の差が出ています。
1000人が全員高い目標を掲げて邁進したらどうでしょうか。1500万円×1000人で、粗利において150億円もの差額が出ます。
 もし、その10%が全社員に分配されたとすると、報酬原資が15億円増えることになります。
それが個人収入にも反映されるとすると、高い目標を掲げたほうが合理的、となるのです。
ちなみにこのとき、粗利も135億円向上しているわけですから、「会社としても(報酬分配後も)win」ということになります。 
2. 人を増やすより「成長する」ほうが合理的
もし、全社業績連動型報酬制度がない会社で、上司が部下に新しいスキルが必要な仕事を命じたとき、部下はどのような反応をするでしょうか?
おそらく、「それ、私の仕事ですか? やったことないんですけど……」とやりたくなさそうにされたり、
ほかの人に任せたり、
場合によっては「私はできないので、新しい人を入れてください」と言われるかもしれません。
その仕事を自分がしたところで、報酬が増えるわけではなく、頭を悩ませることが多くなり、仕事量だけが増えることになるからです。
つまり、
「新しいスキルを身につけて成長するより、人を増やしたほうが合理的だ」
となってしまうのです。
 しかし、全社業績連動型報酬制度があると、そうした考えかたは合理的とは言えません。
なぜなら、むやみに人を増やすことは、個々の従業員の報酬を減らすことになるからです。
全社業績連動型報酬制度のもとでは、「同じ人数で、個々のスキルを高めて成長し、生産性が高まる仕組みをつくり、1人当たりの付加価値生産性を高めたほうが合理的」ということになるのです。
 
3.「みんなに成功ノウハウを教える」ほうが合理的
年間1億円の利益をあげている営業Aさんがいるとします。
その会社にいるほかの営業メンバー10人は、1人500万円の利益しかあげていません。
Aさんとほかのメンバー合わせて、部署全体の年間利益は
1億円+10人×500万円=1億5000万円です。
 通常の報酬制度の会社では、Aさんは自分の達成率が高ければ評価が高く、会社からも一目置かれて大事にされます。
したがって、成功ノウハウは他人に教えず、自分だけのものにしていたほうが合理的です。
しかし、会社が全社業績連動型報酬制度を導入している場合、そのままAさんだけが頑張っていても、自分の報酬もほかのメンバーの報酬も上がりません。
反対に、Aさんが1億円の利益をあげる仕事のやりかたを、社内のほかのメンバーにも教えてあげたとします。その結果ほかのメンバーも、1億円とまではいかなくても、1人5000万円の利益を出せるようになると、Aさんが出している1億円の利益に加えて
5千万円×10人=5億円の利益が出て、
会社全体の利益が1億円+5億円=6億円となります。 
 ここで全体利益の10%をみんなで山分けする場合、全体のパイが1億5000万円÷11人=の場合と6億円÷11人の場合では、どちらの報酬が高くなるのかと考えると、当然後者のほうです。
つまり、全社業績連動型報酬制度のもとでは、みんなに成功のノウハウを教えるほうが合理的なのです。
4. 「的確にマネジメントする」ほうが合理的
全社業績連動型報酬制度は、「管理職のマネジメント」においてもメリットがあります。
たとえば社内に、手を抜いて仕事をしている社員がいるとします。
その社員を上司が指導・教育する場合、多くの管理職は、あまり厳しく言うと「パワハラだ」「職権乱用だ」などと非難されることを心配するでしょう。そうでなくても、部下から嫌な顔をされてしまうので、できれば自分の評価にかかわるマネジメント以上のことはしたくありません。場合によっては「まあ、仕方ないか」と見て見ぬふりをしてしまうでしょう。 
 しかし、会社が全社業績連動型報酬制度を導入している場合、そんな社員を放置しておくことは難しいのです。周囲の人間から、「あの人が利益をあげないせいで、自分たちの報酬が上がらないじゃないか」「あの人はあまり頑張っていないのに、なぜあんなに報酬が与えられるのか?」と批判の目が向けられるからです。
 通常の報酬制度のもとでは、そうした社員を「放っておく」ということも合理的でしょう。
放っておいても、ほかの人たちの給与額に影響しないからです。
しかし、全社業績連動型報酬制度では、そんな人を放っておくと、自分も含め社員全員の報酬にも影響してくるわけですから、その人の成果がもっと上がるよう、しっかりとマネジメントするほうが合理的、ということになります。
通常の報酬制度のもとでは、経営者と社員の双方が対立し、できるだけ低い目標を掲げたくなり、その目標を達成するために、能力アップではなく、人を増やそうとしてしまいます。
その結果、1人1時間あたりの付加価値生産性が低くなり、利益も減り、低賃金になってしまうのです。
あなたの会社も、そんな低賃金化の方向に向かう報酬制度になっていないか、もう一度見直してみましょう。
もちろん高賃金化を実現するためには、全社業績連動型報酬制度の導入だけでは不十分です。
特に大きな組織では、さまざまな仕組みを一つひとつ緻密に組み上げる必要があることを覚えておいてください。
〇誇りある働きかた、生きかたを目指して
最後に、高賃金化に対する私からみなさんへのメッセージをお伝えさせてください。
私が目指しているのは、「働きやすさ」と「働きがい」の両方が追求・実現された世界です。
毎日、毎時間、すべての働く時間が誰かのためになっていることが、最も重要な価値観として大切にされる社会です。
今以上にもっと誰かの役に立つ、もっと誰かの困りごとを解決する。
それができていくと、自分自身に対して「かっこいい働きかた、生きかたをしているな」と誇りを持てるようになるはずです。
そんな考えかた、仕組みが社会全体に広がっていき、私たちの子ども世代も、将来そんな社会の中で働けるようになれば、「お父さん、お母さんたちが、頑張ってこんな社会をつくってくれたお陰だ」と、私たちを誇りに思ってくれるのではないでしょうか。
そんな社会を実現するためには、世の中の大きな仕組みを変える必要はありません。
いくつかの「キーとなる仕組み」を変えることと、一人ひとりが「今日も一日、誰かの役に立とう!」という意思を持ち、そんな働きかたを実践していくことで、社会全体が、そして未来が変わっていくはずです。
そんな社会を実現するためには、世の中の大きな仕組みを変える必要はありません。
いくつかの「キーとなる仕組み」を変えることと、一人ひとりが「今日も一日、誰かの役に立とう!」という意思を持ち、そんな働きかたを実践していくことで、社会全体が、そして未来が変わっていくはずです。
1人が変われば、周りの人が変わります。周りの人が変われば、チーム全体、部署全体が変わります。
チームや部署が変われば、会社が変わります。
一つの会社が変わったら、グループ会社全体が変わり、やがてもっと大きなグループも変わっていきます。
最初は小川のような流れかもしれませんが、それがいつか大河となって大きな流れを生み出せるのです。

※「Forbes JAPAN 2024年2月号」では、初任給710万円の実施に踏み切ったGMOインターネットグループの西山裕之副社長
西山 裕之(にしやま ひろゆき、1964年8月14日 -60歳 )は、大阪府東大阪市出身であり、リョーマ代表取締役社長や、まぐクリック代表取締役社長等を経て 、GMOインターネットグループ最高執行責任者、GMOインターネット取締役副社長である。
  • 1980年3月、大阪星光学院中学校を卒業[1]
  • 1983年3月、大阪星光学院高等学校を卒業[1]
  • 1986年3月、神戸大学経営学部を中退
  • 1986年11月15日、合宿制の運転免許学校の斡旋所 マイライセンスを開業
  • 1987年6月1日、マイライセンスを法人化し、株式会社リョーマを設立。代表取締役専務
―略ー

と田尻望氏
 
の「実施に向けた方法」を対談で掲載(70ページ〜)しています。

 







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