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*私の家の近所のスーパーの話である。
春先だったろうか、私が例によってマイバッグ持参で買い物に行きレジに並ぶと、私のすぐ前のおばさんも「レジ袋不要」の札をレジに渡しポイントを貰っていた。
しかし見ていると、彼女はマイバッグなど持っていないのである。買い物の量は充分レジ袋が必要な量だったが、一体どうやって持ち帰るのかと不思議に思って帰り掛けにそれとなく整理台の彼女を見て私は驚いた。
台には小さい袋のロールが備えられている。豆腐等汁や液が漏れ出る怖れのある物や単品の林檎や玉葱を入れる、あの袋である。名前を知らないのだが、アレはお客が引っ張りピッと切って何枚でも自由に使えることになっている。
彼女は今買ったばかりの品物すべてを小分けして、一生懸命その袋に順次詰め込んでいたのである。
店員は見ていて何も咎めなかったからルール違反ではないのかも知れないし、そんなことを注意しておばさんを他所の店に取られたら大変だという判断が働いたのかも知れない。
しかしあんなにポリ袋(?)を何枚も使われたのでは「レジ袋不要のお客様には5ポイント進呈!」という制度の主旨に反するだろうことは明白である。
などと、別に私は義憤に駆られて(!)こんな話を始めたわけではないが、何か釈然としないものがそのとき残ったので、今でも覚えているわけである。
ちなみにその店ではポイントが500P貯まると、その店だけで使える500円分の商品券と交換してくれる。レジ袋を断わって貰える5ポイントは、通常の買い物では税抜きで¥1,000買わないと貰えないから千円の価値がある(?)と言えないこともないが、金額としては5円分でしかない。
あのおばさんは無条件でその5円が欲しかったことになるが、5円だったら他に幾らでも節約の方法があると考えるのは甘いだろうか? あるいは袋自体も何か用途があったのかも知れない。
街を行くホームレスの老人が、これでもかというくらいレジ袋類を自分の手押し車に括りつけている情景に出くわすことがあるが、あれも恐らくは多彩な用途があるのだと思う。
============
そう言えば昔三益愛子主演(中山千夏が子役)の『がめつい奴』という舞台の芝居が大ヒットしたが、あの中で三益愛子演ずる『おしか婆さん』というコミカルな守銭奴(?)は、ポリ袋が欲しいがために毎日孫(千夏)を豆腐屋へお使いに出していた。豆腐を買うのではなく、オカラを5円買うためである。
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*(参考記事)
以下はgooニュース(朝日新聞8/8)からの引用です。
「がめつい奴」モデルの女性社長、ノミ行為会場提供容疑
競艇のノミ行為の会場に、所有するアパートの部屋を提供したとして大阪府警西成署は8日、大阪市西成区萩之茶屋3丁目、アパート管理会社の大田はる社長(90)を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)などの疑いで書類送検した。大田社長は、菊田一夫原作の戯曲「がめつい奴(やつ)」のモデルとして知られる。
調べによると、大田社長は昨秋から今春にかけて、戯曲の舞台でもある同区のあいりん地区(釜ケ崎)で、山口組系暴力団組員(51)=モーターボート競走法違反などの罪で起訴=が住之江競艇(大阪市)の「勝舟投票券」をノミ行為で販売するのを知りながら、自分のアパートの複数の部屋を1日4万5000円で貸した疑い。家賃は相場の6、7倍とされ、総額で約1000万円になるという。大田社長はこれをアパートの管理人男性(71)と分配しており、同署はこの男性についても書類送検する。
「がめつい奴」は1959年の初演。戦後の混乱が続く釜ケ崎の簡易宿泊所を舞台に、三益愛子演じる女主人「お鹿ばあさん」と住人のたくましい生き方を描いた人情喜劇。映画やテレビ化され、流行語にもなった。
大田社長のアパート管理会社は大阪国税局の税務調査を受け、昨年1月までの7年間で約3億1000万円の申告漏れがあったと指摘され、約7500万円を追徴課税されている。
============
以上引用終わり。
59年初演というと私が10歳のころの話。
「オカラを毎日5円ずつ」と私は書いたが「1円ずつ」の誤りだったと気付いた。
それにしても、これが西成の簡易宿泊所周辺を舞台にした話だとは私はこれまで迂闊にも知らなかった。多分当時の私には、その時代背景がわからなかったせいだと思う。
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春先だったろうか、私が例によってマイバッグ持参で買い物に行きレジに並ぶと、私のすぐ前のおばさんも「レジ袋不要」の札をレジに渡しポイントを貰っていた。
しかし見ていると、彼女はマイバッグなど持っていないのである。買い物の量は充分レジ袋が必要な量だったが、一体どうやって持ち帰るのかと不思議に思って帰り掛けにそれとなく整理台の彼女を見て私は驚いた。
台には小さい袋のロールが備えられている。豆腐等汁や液が漏れ出る怖れのある物や単品の林檎や玉葱を入れる、あの袋である。名前を知らないのだが、アレはお客が引っ張りピッと切って何枚でも自由に使えることになっている。
彼女は今買ったばかりの品物すべてを小分けして、一生懸命その袋に順次詰め込んでいたのである。
店員は見ていて何も咎めなかったからルール違反ではないのかも知れないし、そんなことを注意しておばさんを他所の店に取られたら大変だという判断が働いたのかも知れない。
しかしあんなにポリ袋(?)を何枚も使われたのでは「レジ袋不要のお客様には5ポイント進呈!」という制度の主旨に反するだろうことは明白である。
などと、別に私は義憤に駆られて(!)こんな話を始めたわけではないが、何か釈然としないものがそのとき残ったので、今でも覚えているわけである。
ちなみにその店ではポイントが500P貯まると、その店だけで使える500円分の商品券と交換してくれる。レジ袋を断わって貰える5ポイントは、通常の買い物では税抜きで¥1,000買わないと貰えないから千円の価値がある(?)と言えないこともないが、金額としては5円分でしかない。
あのおばさんは無条件でその5円が欲しかったことになるが、5円だったら他に幾らでも節約の方法があると考えるのは甘いだろうか? あるいは袋自体も何か用途があったのかも知れない。
街を行くホームレスの老人が、これでもかというくらいレジ袋類を自分の手押し車に括りつけている情景に出くわすことがあるが、あれも恐らくは多彩な用途があるのだと思う。
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そう言えば昔三益愛子主演(中山千夏が子役)の『がめつい奴』という舞台の芝居が大ヒットしたが、あの中で三益愛子演ずる『おしか婆さん』というコミカルな守銭奴(?)は、ポリ袋が欲しいがために毎日孫(千夏)を豆腐屋へお使いに出していた。豆腐を買うのではなく、オカラを5円買うためである。
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*(参考記事)
以下はgooニュース(朝日新聞8/8)からの引用です。
「がめつい奴」モデルの女性社長、ノミ行為会場提供容疑
競艇のノミ行為の会場に、所有するアパートの部屋を提供したとして大阪府警西成署は8日、大阪市西成区萩之茶屋3丁目、アパート管理会社の大田はる社長(90)を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)などの疑いで書類送検した。大田社長は、菊田一夫原作の戯曲「がめつい奴(やつ)」のモデルとして知られる。
調べによると、大田社長は昨秋から今春にかけて、戯曲の舞台でもある同区のあいりん地区(釜ケ崎)で、山口組系暴力団組員(51)=モーターボート競走法違反などの罪で起訴=が住之江競艇(大阪市)の「勝舟投票券」をノミ行為で販売するのを知りながら、自分のアパートの複数の部屋を1日4万5000円で貸した疑い。家賃は相場の6、7倍とされ、総額で約1000万円になるという。大田社長はこれをアパートの管理人男性(71)と分配しており、同署はこの男性についても書類送検する。
「がめつい奴」は1959年の初演。戦後の混乱が続く釜ケ崎の簡易宿泊所を舞台に、三益愛子演じる女主人「お鹿ばあさん」と住人のたくましい生き方を描いた人情喜劇。映画やテレビ化され、流行語にもなった。
大田社長のアパート管理会社は大阪国税局の税務調査を受け、昨年1月までの7年間で約3億1000万円の申告漏れがあったと指摘され、約7500万円を追徴課税されている。
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以上引用終わり。
59年初演というと私が10歳のころの話。
「オカラを毎日5円ずつ」と私は書いたが「1円ずつ」の誤りだったと気付いた。
それにしても、これが西成の簡易宿泊所周辺を舞台にした話だとは私はこれまで迂闊にも知らなかった。多分当時の私には、その時代背景がわからなかったせいだと思う。
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