局地的な路線バス事業者でありながら全国的な話題になった金剛バスの事業撤退ですが、9月11日の撤退表明を受けて急遽組織された「富田林市、太子町、河南町及び千早赤阪村地域公共交通活性化協議会」の第1回会合が2023/10/5に開催されました。各メディアでも報道されていますが、ここでは一次資料および(各メディアでは言及されていませんが、当ブログでは実情を紹介している)太子町や河南町のコミュニティバスの動向についても併せて解説することとします。
資料のうちもっとも価値のあるのは、「資料6 金剛自動車株式会社のバス事業の廃止に伴う新たな公共交通の検討について [PDFファイル/4.87MB]」です。
金剛バスの運行エリアを利用客数や地形的な観点から5つに分け、それぞれについて「重要路線として周辺の路線バス事業者(近鉄バスと南海バス)に代替運行を協力してもらうか、自治体内で今後のことを決めるか」をトリアージ?しています。
①太子町エリア
喜志循環線(近鉄長野線喜志駅と太子町の中心部を結ぶ路線)と太子線(喜志駅から太子町の中心部を経由して近鉄南大阪線上ノ太子駅に至る路線)が重要視されましたが、喜志駅側のほうが利用者が多いことから、喜志循環線が路線バス協力事業者による代替運行の対象となり、上ノ太子駅発着については太子町単独の協議会(太子町地域公共交通会議)で今後協議することとなりました。おそらく、現在町域のみを運行しているコミュニティバスを上ノ太子駅まで延長することになると思われますが・・・ その他の太子町内の金剛バスの路線は、コミュニティバスと重複している区間が多くなっています。
②河南町北部エリア
阪南ネオポリスを中心とするエリアで、その住民の足である阪南線(喜志駅~東山~近つ飛鳥博物館前)は当然の如く路線バス協力事業者による代替運行の対象となりました。同じく阪南ネオポリスに発着するが本数が少ない石川線(富田林駅~北大伴南口~近つ飛鳥博物館前)については、当初は代替運行の対象とする可能性があるものの、最終的には自家用有償旅客運送(河南町コミュニティバスを活用?)に移行させる方針です。ちなみに、求人サイトによれば、河南町コミュニティバスの運転手の労働条件は「大型2種必須/時給1500円/週3日~5日勤務/直行直帰OK」とのこと。
③河南町南部エリア
河南町役場周辺や大規模住宅地「さくら坂」を中心とするエリアで、さくら坂循環線(富田林駅~寺田~さくら坂循環)は当然の如く路線バス協力事業者による代替運行の対象となりました。従来からの集落を結ぶ白木線(富田林駅~寺田~芹生谷~東水分、末端部は千早赤阪村に属します)および河内線(富田林駅~寺田~河内)については、石川線同様最終的には自家用有償旅客運送に移行させる方針です。
④千早赤阪村エリア
千早線(富田林駅~森屋~千早赤阪役場前~金剛登山口~千早ロープウェイ前間など)がメインで、他に上記白木線および下記東條線の末端区間が村内を走り、村民の通勤通学に使われるのは千早線<金剛登山口より先を除く>と白木線です。したがって、千早線が路線バス協力事業者による代替運行の対象となり、白木線は引き続き優先的に代替交通を検討すべき存在となります。
⑤富田林市東南部エリア
山間に入る東條線(富田林駅~中佐備~甘南備~吉年(注)、一部に府立こんごう福祉センター<旧金剛コロニー>経由あり)が路線バス協力事業者による代替運行の対象となり、北大伴線(富田林駅~北大伴)は「代替交通の確保に向け、広域協議会で協議が必要」とされています。富田林市では現在いわゆるコミュニティバスは運行しておらず(富田林駅より西の住宅地を運行する「レインボーバス」は市が協力しているもののあくまでも近鉄バスの一般路線)、最終的にどのようなスキームに持っていくかが焦点となることでしょう。
ちなみに、府立こんごう福祉センターへのアクセス手段は長年富田林駅からの金剛バスしかありませんでしたが、2023/6/1に河内長野駅からの南海バスの路線が新設されました。便数は金剛バスと同等で、鉄道駅からの所要時間・運賃とも南海バスが優勢です。
https://www.nankaibus.jp/info/62169/
(注)資料にはサパーファームまでの路線があるように書かれていますが、実際には乗務員不足で運休中です。もともと土日祝のみの観光路線でした。