鳩山政権の誕生から早くも1ヶ月。総理はめまぐるしく良く動くが大臣の活躍はいろいろである。短期間で僭越ではあるが、新政権の閣僚を採点してみた。
新閣僚の中でピカイチに光っているのは前原誠司国土交通大臣。八ツ場ダム問題でキッパリと建設中止を打ち出しただけではなく、川辺川ダムはじめ国土交通省が所管し建設中の56のダムのうち48のダム計画を凍結、これまで流水維持効果などを課題に見積り、建設効果を粉飾していたダム建設計画の方法そのものに切り込もうとしている。
日航問題では、倒産寸前で外資に吞み込まれようとしていた日航に再建チームを派遣し、その一方で経営悪化のもとのなった採算が取れない地方空港の乱立をもたらした社会資本整備特別会計の「空港整備勘定」にもメスを入れる。
沖縄の普天間問題では県内移設は困難と表明、アメリカに「ノー」も言うという彼の手法は論理的ではっきりしている。もともとタカ派論客で知られており、外交防衛政策では考え方が明確に違うが、現在までの仕事は評価に値する。
その次に光っているのは千葉景子法務大臣。キッパリものを言わない八方美人という印象を持っていたが、法務大臣となって、できることはキッパリ言うという姿勢が好印象である。夫婦別姓を認める民法改正、容疑者取り調べの可視化など打ち出した。刑務所での受刑者の待遇改善、死刑廃止の導線となる終身刑導入なども出てくるだろう。
もう一人は亀井静香財政金融担当大臣。就任早々に金融機関への返済猶予法案をぶち上げ、ついには法律の国会上程までこぎつけてしまった。この法案の是非にはいろいろな意見があるが、誰でも返済猶予せよという考え方ではなく、中小企業の将来性を良く判断して貸しはがしや貸し渋りを行なわないようにという、金融機関への釘刺し法案だとすれば意味もある。
一方でどうしようもないのが小沢鋭仁環境大臣。就任早々に九州電力の川内原発増設に対して、経産省は認めるようにという意見書を出すという越権行為を行なうほどの原発推進派らしい。これまで自民党政権ですら、原発推進の経産省に対し、環境大臣はそれにブレーキをかけるという役割を持たせて来た。どうも民主党の環境大臣はブレーキではなくアクセルらしい。
この環境大臣の求めに応じて、直嶋正行経済産業大臣は同原発増設のための環境影響評価に対して「地球温暖化対策のために原発活用を」という意見書を提出した。経産省は原発推進省であるわけなので、「本来の仕事」と言えばそれまでだが、「地球温暖化対策のために原発」という露骨な論理は、歴代自民党の経済産業大臣ですらやったことがないという。
これでは鳩山さんの25%削減というのは、日本中を原発だらけにするということだったの?とも思われかねない。25%削減の具体策は、本当なら経産省が立案し実施すべきなのだが、効果ある対策立案は直嶋さんにはとてもできないだろう。自民党が立案し11月から実施予定の、家庭用太陽光発電のみの固定価格買取制度についても、多くの問題を検証もせずそのまま実施するようで、まあ官僚の言いなりである。環境、経産の両大臣とも、前原大臣のような政治のイニシアティブはカケラも見えない。地球温暖化対策が鳩山政権の最大のウィークポイントになるだろう。
ついでに言っておくと、川端達夫文部科学大臣も所管する高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に意欲的なのだそうだ。1995年にナトリウム漏れ事故で止まったままいまだに運転再開はできていない。その間の維持費総額だけで1000億円以上がかかっているし、運転をまともにできたとしても、収入は年間100億円、運転経費は150億円から200億円と、動かすだけ金がかかるシステムなのである。先の二人と合わせ「原発トリオ」なのだ。
もう一人、あまり批判はしたくないが、期待はずれが長妻昭厚生労働大臣。年金問題しかできないと大臣就任を拒んだという噂もあるが、その年金問題でも期待を裏切っている。社会保険庁が横滑りしてできる日本年金機構について凍結と言っていたが、政権公約に反して来年1月の発足を認める。
何をするのかというと、消された年金記録問題をまだこれから4年も5年もかけて調査するのだという。すでに年金制度が破綻しているのは明らかで、それを追求して来たのが長妻さんだったはず。この問題を「こうする」という回答を持っていなかったのかと不思議である。
私はずっと年金制度そのものを税方式に大転換すべきだと主張してきた。厚生年金も国民年金も、失業保険も生活保護までも一つの制度に集約する。掛け金を払ったから救済されるのではなく、国民は誰でも困ったときには助けられる。逆に困っていない中曽根大勲位に年金を出すような無駄なことはしない。
掛け金以上の年金が保証されるのであれば、もはや消えた年金記録による不利益を国民に押し付けることにはならない。記録を消した役人や担当者たち、これまでの政権の法的かつ道義的責任と処分という課題に移行する。どうしてさっさと、こういう次のフェーズに移行させないのだろう。
厚生労働省は派遣労働に象徴される雇用問題、新型インフルを抱える以前から崩壊状態の日本の医療、その他に児童手当、保育所、障害者福祉、廃棄物行政、食品安全などなど守備範囲は広い。すべてを自分が抱え込むのではなく、適宜副大臣や政務官に完全に職務を分けること、消費者庁の福島みずほ大臣などと役割をきちんと分担するべきだろう。
アフガニスタンを電撃訪問して、マスコミをあっと驚かせたのは岡田外務大臣。ただこれは吉と出るか凶と出るか、なんとも微妙だ。実情視察は重要だが、今この時期にカルザイ氏に会って、もし大統領選が決選投票となりアブドラ氏になったら・・、ということもあるし、日本の支援の内容について、アフガニスタン側から言質を取られたりしたら・・という心配もある。
アフガニスタンでは給油問題に触れなかったようだが、その後に行ったパキスタンで案の定給油継続を求められた。アメリカに仕組まれたのでは・・という気もしてくる。
意外と健闘しているのは北沢俊美防衛大臣。元自民党で現状肯定かと思いきや、制服組の権限を強化する防衛省組織改革をストップ、前石破大臣が崩しかけた文民統制を引き戻した。ブログ検索をしてみると、田母神論文がらみで、参議院の外交防衛委員会委員長として、キッパリと田母神氏を批判する立場での発言が右翼系のブログでいくつも出て来た。
これらの右翼ブログで北沢防衛大臣が筋金入りの平和派であることを教えられた。今後は防衛予算にもしっかり切り込みそうであるし、沖縄の普天間基地移設問題でも、アメリカに押されてぶれる鳩山総理を押し戻す役割を担えるかもしれない。
アメリカもインド洋での給油問題はどっちでも良いが、キャンプシュワブへのヘリポート移設は譲れないと言ってくるだろう。これは実は移設ではなく、アジアでの作戦行動に基づく、新たな基地機能の拡大だとする見方もあるからだ。日米地位協定の見直し、思いやり予算の見直し、などなど、いきなりゼロにすることは困難だが粘り強くアメリカ側への譲歩を迫って行かなければならない課題が、ここには山のようにある。
その他にも、ここのところにわかに出番が増えた仙谷由人行政刷新担当大臣、未だ地下潜航中の菅直人国家戦略担当大臣、手腕はこれからの藤井裕久財務大臣、補正予算の削減では頑張った赤松広隆農水大臣、亀井大臣に押され気味の原口一博総務大臣、ちょっと危なそうな仲井国家公安委員長、そして福島みずほ内閣府特命(消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画)と、まだまだおいでである。(とても全員書ききれない)
福島大臣について言えば、4つの担当のほかに、共生社会政策として「青少年健全育成、食育、高齢化社会、障害者政策、交通安全対策、犯罪被害者対策、自殺対策、銃器対策、薬物乱用対策、定住外国人対策なども担当するのだと言う。
しっかりやれば、さすが社民党となるはずだが、さしたるスタッフも持たずにこれだけのことをカバーできるのだろうか?新設の消費者庁大臣として花王のエコナ問題では「政治のイニシアティブ」を見せるチャンスだったが、華々しく出る前に花王側がなにやら認可を返上して一件落着になった。男女共同参画など得意中の得意のはずだが、追求する立場ではなく自分が実行する立場である。今まで主張して来たことを「やるぞ」と宣言すれば人は動き始めるのだが、「人の活用」ということでは、不得手な人なので前途多難である。
閣僚全体では百点満点はもとより望むべくもなく、まだ皆さん力を出し切っていないということもあるが、現状は期待値にもまだまだ届かないかなという残念な結果である。それでも内閣支持率は高い。来年度予算、そして各政治課題ををどう乗り切るのか、国民は期待値で見守っているのだろう。環境関係はすでに幻滅の気配となりつつあるが、もう一度盛り返しを期待したいところである。
新閣僚の中でピカイチに光っているのは前原誠司国土交通大臣。八ツ場ダム問題でキッパリと建設中止を打ち出しただけではなく、川辺川ダムはじめ国土交通省が所管し建設中の56のダムのうち48のダム計画を凍結、これまで流水維持効果などを課題に見積り、建設効果を粉飾していたダム建設計画の方法そのものに切り込もうとしている。
日航問題では、倒産寸前で外資に吞み込まれようとしていた日航に再建チームを派遣し、その一方で経営悪化のもとのなった採算が取れない地方空港の乱立をもたらした社会資本整備特別会計の「空港整備勘定」にもメスを入れる。
沖縄の普天間問題では県内移設は困難と表明、アメリカに「ノー」も言うという彼の手法は論理的ではっきりしている。もともとタカ派論客で知られており、外交防衛政策では考え方が明確に違うが、現在までの仕事は評価に値する。
その次に光っているのは千葉景子法務大臣。キッパリものを言わない八方美人という印象を持っていたが、法務大臣となって、できることはキッパリ言うという姿勢が好印象である。夫婦別姓を認める民法改正、容疑者取り調べの可視化など打ち出した。刑務所での受刑者の待遇改善、死刑廃止の導線となる終身刑導入なども出てくるだろう。
もう一人は亀井静香財政金融担当大臣。就任早々に金融機関への返済猶予法案をぶち上げ、ついには法律の国会上程までこぎつけてしまった。この法案の是非にはいろいろな意見があるが、誰でも返済猶予せよという考え方ではなく、中小企業の将来性を良く判断して貸しはがしや貸し渋りを行なわないようにという、金融機関への釘刺し法案だとすれば意味もある。
一方でどうしようもないのが小沢鋭仁環境大臣。就任早々に九州電力の川内原発増設に対して、経産省は認めるようにという意見書を出すという越権行為を行なうほどの原発推進派らしい。これまで自民党政権ですら、原発推進の経産省に対し、環境大臣はそれにブレーキをかけるという役割を持たせて来た。どうも民主党の環境大臣はブレーキではなくアクセルらしい。
この環境大臣の求めに応じて、直嶋正行経済産業大臣は同原発増設のための環境影響評価に対して「地球温暖化対策のために原発活用を」という意見書を提出した。経産省は原発推進省であるわけなので、「本来の仕事」と言えばそれまでだが、「地球温暖化対策のために原発」という露骨な論理は、歴代自民党の経済産業大臣ですらやったことがないという。
これでは鳩山さんの25%削減というのは、日本中を原発だらけにするということだったの?とも思われかねない。25%削減の具体策は、本当なら経産省が立案し実施すべきなのだが、効果ある対策立案は直嶋さんにはとてもできないだろう。自民党が立案し11月から実施予定の、家庭用太陽光発電のみの固定価格買取制度についても、多くの問題を検証もせずそのまま実施するようで、まあ官僚の言いなりである。環境、経産の両大臣とも、前原大臣のような政治のイニシアティブはカケラも見えない。地球温暖化対策が鳩山政権の最大のウィークポイントになるだろう。
ついでに言っておくと、川端達夫文部科学大臣も所管する高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に意欲的なのだそうだ。1995年にナトリウム漏れ事故で止まったままいまだに運転再開はできていない。その間の維持費総額だけで1000億円以上がかかっているし、運転をまともにできたとしても、収入は年間100億円、運転経費は150億円から200億円と、動かすだけ金がかかるシステムなのである。先の二人と合わせ「原発トリオ」なのだ。
もう一人、あまり批判はしたくないが、期待はずれが長妻昭厚生労働大臣。年金問題しかできないと大臣就任を拒んだという噂もあるが、その年金問題でも期待を裏切っている。社会保険庁が横滑りしてできる日本年金機構について凍結と言っていたが、政権公約に反して来年1月の発足を認める。
何をするのかというと、消された年金記録問題をまだこれから4年も5年もかけて調査するのだという。すでに年金制度が破綻しているのは明らかで、それを追求して来たのが長妻さんだったはず。この問題を「こうする」という回答を持っていなかったのかと不思議である。
私はずっと年金制度そのものを税方式に大転換すべきだと主張してきた。厚生年金も国民年金も、失業保険も生活保護までも一つの制度に集約する。掛け金を払ったから救済されるのではなく、国民は誰でも困ったときには助けられる。逆に困っていない中曽根大勲位に年金を出すような無駄なことはしない。
掛け金以上の年金が保証されるのであれば、もはや消えた年金記録による不利益を国民に押し付けることにはならない。記録を消した役人や担当者たち、これまでの政権の法的かつ道義的責任と処分という課題に移行する。どうしてさっさと、こういう次のフェーズに移行させないのだろう。
厚生労働省は派遣労働に象徴される雇用問題、新型インフルを抱える以前から崩壊状態の日本の医療、その他に児童手当、保育所、障害者福祉、廃棄物行政、食品安全などなど守備範囲は広い。すべてを自分が抱え込むのではなく、適宜副大臣や政務官に完全に職務を分けること、消費者庁の福島みずほ大臣などと役割をきちんと分担するべきだろう。
アフガニスタンを電撃訪問して、マスコミをあっと驚かせたのは岡田外務大臣。ただこれは吉と出るか凶と出るか、なんとも微妙だ。実情視察は重要だが、今この時期にカルザイ氏に会って、もし大統領選が決選投票となりアブドラ氏になったら・・、ということもあるし、日本の支援の内容について、アフガニスタン側から言質を取られたりしたら・・という心配もある。
アフガニスタンでは給油問題に触れなかったようだが、その後に行ったパキスタンで案の定給油継続を求められた。アメリカに仕組まれたのでは・・という気もしてくる。
意外と健闘しているのは北沢俊美防衛大臣。元自民党で現状肯定かと思いきや、制服組の権限を強化する防衛省組織改革をストップ、前石破大臣が崩しかけた文民統制を引き戻した。ブログ検索をしてみると、田母神論文がらみで、参議院の外交防衛委員会委員長として、キッパリと田母神氏を批判する立場での発言が右翼系のブログでいくつも出て来た。
これらの右翼ブログで北沢防衛大臣が筋金入りの平和派であることを教えられた。今後は防衛予算にもしっかり切り込みそうであるし、沖縄の普天間基地移設問題でも、アメリカに押されてぶれる鳩山総理を押し戻す役割を担えるかもしれない。
アメリカもインド洋での給油問題はどっちでも良いが、キャンプシュワブへのヘリポート移設は譲れないと言ってくるだろう。これは実は移設ではなく、アジアでの作戦行動に基づく、新たな基地機能の拡大だとする見方もあるからだ。日米地位協定の見直し、思いやり予算の見直し、などなど、いきなりゼロにすることは困難だが粘り強くアメリカ側への譲歩を迫って行かなければならない課題が、ここには山のようにある。
その他にも、ここのところにわかに出番が増えた仙谷由人行政刷新担当大臣、未だ地下潜航中の菅直人国家戦略担当大臣、手腕はこれからの藤井裕久財務大臣、補正予算の削減では頑張った赤松広隆農水大臣、亀井大臣に押され気味の原口一博総務大臣、ちょっと危なそうな仲井国家公安委員長、そして福島みずほ内閣府特命(消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画)と、まだまだおいでである。(とても全員書ききれない)
福島大臣について言えば、4つの担当のほかに、共生社会政策として「青少年健全育成、食育、高齢化社会、障害者政策、交通安全対策、犯罪被害者対策、自殺対策、銃器対策、薬物乱用対策、定住外国人対策なども担当するのだと言う。
しっかりやれば、さすが社民党となるはずだが、さしたるスタッフも持たずにこれだけのことをカバーできるのだろうか?新設の消費者庁大臣として花王のエコナ問題では「政治のイニシアティブ」を見せるチャンスだったが、華々しく出る前に花王側がなにやら認可を返上して一件落着になった。男女共同参画など得意中の得意のはずだが、追求する立場ではなく自分が実行する立場である。今まで主張して来たことを「やるぞ」と宣言すれば人は動き始めるのだが、「人の活用」ということでは、不得手な人なので前途多難である。
閣僚全体では百点満点はもとより望むべくもなく、まだ皆さん力を出し切っていないということもあるが、現状は期待値にもまだまだ届かないかなという残念な結果である。それでも内閣支持率は高い。来年度予算、そして各政治課題ををどう乗り切るのか、国民は期待値で見守っているのだろう。環境関係はすでに幻滅の気配となりつつあるが、もう一度盛り返しを期待したいところである。
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