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みなさんは西山事件って知ってます?
太平洋戦争後、ある日突然、アメリカ軍が基地用に土地を占有していまい、
本来の土地所有者には名ばかりの地代が払われるだけでした。
1971年の沖縄返還協定に際して、本来の持ち主に土地を返還するため、
本来であれば当然アメリカ政府が負担すべき「米軍基地の土地原状回復補償費
400万ドルを日本政府が肩代わりする」という密約が日米の政府間でありま
した。
日本政府はこの密約の存在を今でも認めていませんが、これは日本国民にとって
とても大きな問題です。
本来であれば、この密約の是非、国民の知る権利が問われるべきところ、時の
政府は、機密文書の漏洩に焦点を当てることで、論点をずらし、元毎日新聞
記者の西山太吉氏と取材源の外務省女性職員が国家公務員法違反罪に問いま
した。
一審こそ無罪でしたが、その後最高裁まで争い、2000年に有罪が確定して
しまいました。
その後、密約を裏付ける米公文書が見つかり、西山氏は05年に国家賠償訴訟を
起こしましたが、最高裁はこの上告を棄却・・・
私は、恥ずかしながら、この事件のことをまったく知りませんでした。
私の大好きな作家の一人である山崎豊子さんの最新刊『運命の人』は、この
西山事件をテーマに、日本で唯一地上戦があった沖縄の悲劇も伝えるという
本当に久し振りの、そしてひょっとすると彼女の最後の著書になるかもしれま
せん。
だから発売されたことを知って、すぐ買い求めて読みました。
今回の作品は、私にとっては、沖縄戦の悲劇、そしてその悲劇は戦争が終わって
もず~っと続いていたということ、さらに沖縄返還に伴う日米間の密約とその
発覚後、見えないところでうごめく国家権力の恐ろしさ、こういう終戦そして
その後の日本の近代史を学べたということで、とても価値ある本でした。
一方小説として見た場合は、これまでの山崎さんの作品と比べ魅力が少なかった
ですね。小説というより何だかノンフィクション作品のように感じました。
シベリア抑留(『不毛地帯』)、太平洋戦争中の日系2世(『二つの祖国』)、
中国残留日本人孤児(『大地の子』)、そして今回の沖縄戦(『運命の人』)。
どれも日本人として忘れてはいけないことばかりです。子どもたちにもぜひ
読んでもらいたい。
「コバルトブルーの海が、真っ赤な血の色にしか見えなくなった」
沖縄は決してただのビーチリゾートではありません。
この本を読んでいて、一番気になったのが、この外務
省の女性事務官です。
いくら取材源への忠義とは言え、あそこまで一方的に
捻じ曲げられた証言をされっ放しっていうのはどう
だったのでしょうか?
そういった西山氏の姿勢のせいで、家族にどれだけの
苦痛を与えたか。
またそれを裁判の争点にすり替えた検察も嫌ですね。
先ほどのコメントのタイトルに関する部分を書き忘れ
たので、追記します。
お兄さんはこの毎日新聞の記事をよく憶えていたよう
ですが、妹さんは、私同様、この事件をまったく
知りませんでした・・・
これでコメントタイトルとの関連付けがやっと完成
しました。