磯輪日記

世界の段ボールビトを幸せに!
自分と自分の愛する家族の幸せのために働ける
世界一社風のいい会社を目指しています。

『漆の実のみのる国』

2006年06月17日 23時04分57秒 | こんな本読みました

ジョン・F・ケネディが大統領に就任して、日本人記者団から

 「あなたが、日本で最も尊敬する政治家はだれですか?」

と聞かれて、

 「上杉鷹山です」

と答えたけど、その時質問した日本人記者はこの上杉鷹山を
知らなかったというエピソードがあったそうです。

私も恥ずかしながら、上杉鷹山の名前は聞いたことはある
程度であとは何も知りませんでした。

でもみなさん、

 「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 
  為さぬなりけり」

は知ってますよね。これ実は上杉鷹山の言葉なんです!

この上杉鷹山(小説の中では「上杉治憲」。「鷹山」は晩年剃髪後
の名)とその家臣たちが、当時最も貧しい国、米沢藩の財政再建に
立ち向かう姿を描いたのがこの本です。

『蝉しぐれ』に続いての藤沢作品です。

戦国時代や、幕末、維新など、華やかな時代の小説はたくさん
読んでいますが、江戸後期の封建制度が崩壊しつつある様子や、
飢饉の恐ろしさ、農民、そして下級武士の生活の苦しさなどを
扱ったものは、今までほとんど読んだことがなかったので、
新鮮な気持ちで読めました。

でも私にとってこの本がすばらしかったのは、「経営者の心構え」
を今までに無い切り口で教えてくれたことだと思っています。

藩校を再興するくだりで次のような文があります。

 「分領は腹の内より分領、侍組は腹の内より侍組、襁褓
  (むつき)の内より諸人に頭をさげられ、己に西東を知る
  に至れば、自ら高貴なるをしらぬ童子もなく、驕泰の心
  知るとともに長し。亢(こう)傲の態心とともに来り、
  四書一通も読み知らねども、元服すれば終には十五万石の
  執権になる身分と落付たる痼疾、いかなる良薬を用いてか
  仁厚恭敬の君子とはなるべき」

身分制度に守られて、生まれる前から驕ることが身に付いていて、
勉強もしないまま大人になれば、どんないい薬を使っても立派な
為政者になれるはずがない。

とか、治憲が養子に藩主の座を譲る時に贈った

 一、国家は先祖より子孫へ伝候国家にして我私すべき物には
   これ無く候
 一、人民は国家に属したる人民にして我私すべき物にはこれ
   無く候
 一、国家人民の為に立たる君にて君の為に立たる国家人民には
   これ無く候
 右三条御遺念有るまじく候事

という藩主の心得は、「伝国の辞」としてその後上杉家に代々
伝えられたそうです。


少しでも領民の貧しさを救ってやりたいと、自らも極めて質素な
生活を続けるにもかかわらず、過去の借財、飢饉、自らの保身
第一の上級家臣、古いしきたりなどによって、手足を縛られ、
藩の財政再建が進まず、また民を苦しめる。

そんな中で、精一杯努力する治憲の姿は、民と生きる、民を
愛する、誠の君子であり、私も少しでもこうありたいと願う
姿でした。

決して読んで爽やかという本ではなく、ずっしり重い本でしたが、
「自らを律する」姿勢を今一度学ばせてもらいました。

藤沢周平最後の作品で、本来ならあと数十枚の原稿がこれに続く
はずだったそうですが・・・
残りの部分で藤沢周平は治憲の何を書きたかったんだろう?

 「経営者ならそれは自分で考えなさい」

という彼の遺言なんでしょうか・・・
合掌

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2 コメント

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よく観てますね~ (磯輪)
2006-06-22 21:59:50
 ミヤさん



いろんなドラマ、映画観てますね。私は観ていません。残念!



この本は、本当に会社経営、経営者とは、そして風土改革など、自分がしていること、そして自分の力でどうにもならないことで領民(社員)に苦労を強いらねばならないトップの苦悩など、考えさせられることの多い本でした。
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以前NHKのドラマにて (ミヤさん)
2006-06-22 17:08:41
随分前に「童門冬二」原作「二百年前の行政改革」をNHKがドラマ化したものを再放送?で観た記憶があります。

上杉鷹山公を筒井道隆が主演していたはずですが・・・

確か?公の若き日、日向高鍋藩から上杉家へ養子になって始めてのお国入りする場面からだったと思います。

守旧派の藩の重役達からの抵抗にあいながらもお城の空き地に養蚕用の桑を植えて米沢織を普及させたとか・・・?

そんな場面を覚えています。
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