DESに関する研究を調査すると
この薬が 生まれてきた女の子たちに
重大な影響を与えたことは明らかだった。
男の子たちについては データーははるかに少なかった。
しかし エストロゲンが男性の生殖器の発達に
悪影響を及ぼすかどうかを解明するためには
どうしても知る必要があると確信したシャープは
過去の研究を探した。
すべてのデーターを調べなおすと
シカゴ大学のウィリアム・ギル教授が
「子宮内でDESにさらされた男児では
その結果 男性器の奇形が頻発した・・・」と結論していた。
奇形の程度が記述され その一つ一つが詳細に
感情を示さない科学的な口調で語られていた。
そこには のう胞や極端に小さい精巣 停留精巣
精巣がん 精子数の減少 半陰陽 小陰茎症などが含まれていた。
・・・略・・・
全体から見て すべての研究がDESの悪影響を
報告しているわけではないにせよ
悲惨な症状の報告がそこかしこに登場し
子供たちの一生を台無しにした例も見られた。
「さまざまな研究から 停留精巣や尿道の奇形が
頻発しているのははっきりしていた。
成人後に精子の数が少なく 精液の質が悪い傾向もあった。
つまり 予想していたすべての異常が実際に起きていたのだ」
と シャープは結論付けた。
「あまりにもデーターが揃いすぎて信じられない というのが
最初の反応だった」とシャープは回想する。
「普通なら 人間のデーターなどないし
いうまでもなく人体実験など考えられない。
だが この場合 はからずも何百万人もの女性とその子供たちが
合成エストロゲンを投与されたという
この上なく不幸な出来事があった。
もちろん 仮説が重大な可能性を持っているとわかって
強いプレッシャーを感じたのも確かだ」
リチャード・シャープとニルス・スキャケベクは
エストロゲンがどのように男性の生殖に
影響を及ぼすかについてまとめた論文を
『ランセット』に発表する準備を開始した。
二人とも あらゆる事実が符合するとはいえ
これは仮説にすぎないと言う事をしっかり自覚していた。
「自分たちの考えを できる限り多くの人々の目で
詳細に吟味して欲しかった。多くの人が知れば
それだけ アイディアを与えてくれるかもしれないし
欠陥を指摘してくれるかもしれない。
たとえ 自分たちの考えが全くの誤りだと解ったとしても
残念には違いないが 誰かの指摘によって
結局は私たちの理解も深まるし
ともかくもみんなが前進することができる」とシャープは言う。
科学者達の厳しい審査を受ける機会は予想外に早く訪れた。
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