あたゝかき風がぐるぐる風車
暖かき座敷の庭に洗濯す
うらゝかや空を見つめる病ミ上り
のどかさや野には用なき人許り
長閑さや障子の穴に海見えて
のどかさや哀れ少なき野辺送り
大仏のうしろ姿も長閑なり
のどかさにうれしき旅の夕哉
1902年(明治35年)9月:死去。満34歳。
東京都北区田端の大龍寺に眠る。
- より、子規の忌日9月19日を「糸瓜忌」といい、
- 雅号の一つから「獺祭(だっさい)忌」ともいう。
死を迎えるまでの約7年間は結核を患っていた。
のどかさや一の鳥居は麦の中
のどかさや小山小山の寺の塔
のどかさや昼は白壁夜は灯
のどかさや豆のやうなる小豆島
のどかさや杖ついて庭を徘徊す
のどかさや障子あくれば野が見ゆる
行き過ぎし短き駅や海のどか
のどかさやつゝいて見たる蟹の穴
あくびした口に花ちる日永哉
死んだ子の道具とり出す日永かな
ちりはてゝ花も地をはふ日永哉
永き日や菜種つたひの七曲り
蜑の子につれだつ磯の日長哉
永き日や隣の屋根を窓の影
永き日を柳の風の幾かはり
牛に乗て飴買ひに行く日永哉
金比羅に大絵馬あげる日永哉
永き日の滋賀の山越湖見えて
病人の仰向になる日永哉
百人の人夫土掘る日永哉
又今日も又今日も日の永くなる
春日野に神馬草はむ日永哉
汽車道にならんでありく日永哉
順礼の札所出て行く日永哉
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