やはりこれも農村部に土地購入し自宅を建てた方の話。少し高台の地域で周囲は果樹園。眺望の良さが気に入り購入したらしいが実際に住んでみたら騒音が酷いとの事。農村地域なのになぜ?と思ったが良く話を訊いて見たら農業機械が騒音源だと言う。例えばトラクターと呼ばれる畑を耕す機械や赤いボディのスプレヤーとか消毒を散布する機械など。これらはエンジン付きでトラクターならロータリーと言う作業機を付けて耕すものでスプレヤーは消毒を噴霧しながら畑の中を縦横無尽に走り回るものだ。当然一般乗用車の様に車検点検制度がある訳ではないのでエンジン音も大きく騒音に等しい。またそれだけでなくスプレヤーは消毒散布するのに飛行機のプロペラみたいな大型ファンを回転させ四方八方に消毒を撒き散らすのでファンの騒音も大きく多少畑から離れている住宅などにも農薬が飛散し洗濯物や壁等に跡がつく。
私ならこの時点で憤慨モノだがココに自宅を建てた方は田舎地域に引っ越してきたので仕方ないと我慢していた。しかしある日我慢の限界を超える新たなアイテムが畑に設置された。爆音器とか言う鳥避装置である。何でもこの装置はプロパンガスボンベの先に点火装置とタイマーが着いており設定した時間で少量のガスを充填させ発火する事で爆音を発生させて鳥を追い払う装置である。
またこの装置は光センサーが付いており日の出から日没まで数分サイクルで丸一日爆音が継続するのである。当然その近所に住む家では赤ん坊は起きるし残業帰りのお父さんは強制的に早朝叩き起こされる。また一日中家に居る家族などは四六時中”ドカン!、ドカン!”と爆音を聞かされているのである。この状況は春先に果樹の花が小さな実になり始めたあたりから晩秋の収穫時期までずっと続く。私が夏休みに尋ねて行った時は蝉の鳴き声に爆音が響くと言う状態で田舎の夏なのに窓を締めきってエアコンを使っていたがそれでも室内に爆音が響いて来たのを覚えている。
このままでは情緒不安定になりそうなのでほぼ同時期に引っ越してきたお隣の方とまずは農家の方へ相談に。もう少し他の対策は無いかと・・・しかしそこで農家の方は「林檎が煮えちゃうから爆音器は外せない!」と意味不明な事を言われて2軒の御主人とも全く相手にされなかったそうだ。
当人同士話し合いをしても解決できそうにないので自治会に相談する事にした。しかし自治会長は”爆音器は農家の関係だから農事会に言ってくれ”との事。農事会を知らない彼らは農事会とは何か尋ねるとどうやら「農家を営んでおる方で構成されている自治組織」らしいのだ。しかしサラリーマンには無縁である営農者の会を紹介された所でどうする事もできず結局二軒で市役所農林課に相談した。
直後市役所から職員が派遣されたらしく数日間は爆音器が鳴らなくなったのも束の間。ほとぼりが覚めたかの如く再度爆音器が鳴り始めたのである。しかも以前より爆音が大きい。真相を確かめる為に設置している畑に行き”林檎が煮える”発言の農家に尋ねたら「これが無いと鳥に突かれて困るし生活できない!。アンタらみたいなサラリーマンは会社に行って・・・・(以下略)」と逆切れされたそうだ。しかも以前より爆音器の位置を動かし筒の向きを住宅側に向けてあったらしい。
その後は市役所に相談→暫く停止するがまた再開の繰返し。結局その年は冬を迎える迄、爆音器の騒音を我慢して過ごした。年も明け自治会の新年会とやらが有り2軒とも出席したのだがその席で耳を疑う噂を聞いた。どうも昨年度自治会長をしていた方と問題になっている農家の主は仲が良く今回の爆音器の件でなんとか新参者の2軒を黙らせる事はできないかと言う方向に動いたのではないか?と言う話しなのである。
農家側は事情伺いに来た市役所職員に対して「あそこのうるさい2軒が騒いでいるだけだ」と報告し自治会側からは会長が「新しく来た人々なので右も左もわからないんじゃないでしょうか」と言った曖昧な対応をしたのではないかという事・・・。しかしこれはあくまでも噂なので真意は判らないが状況や経緯から察すると有ってもおかしくないと納得できてしまう。
当然2軒のご主人らは噂の真相を確かめるべく自治会長に尋ねてみたがそんな事はありません、皆さん仲良くやって行きましょうと言った旨の説明をする始末。
納得できなかった2軒は現在この自治会を脱会し多少離れているがすぐ隣の地域の自治会に加入したらしい。
ここでの問題点は噂の真相はともかく住民が安心安全を訴えているのに全く頼りにならないと言う実態である。想定論に過ぎないかも知れないが特定の役目の人が市職員などに虚偽報告をすれば必然的にそれが正当報告としてまかり通ってしまい真実でなくなってしまうと言う事である。
もう一つ大きな問題としては自治会には直接関係ないがこの営農者はもっと自営業者としての自覚を持って頂きたい事である。これは話が逸れるのでこれ以上言及しない事にする。
最近では地方自治体の条例等で爆音器は規制対象ではあるがまだまだ理解しない農家があり遭遇した時などは爆音に驚かされる事がある。
ちなみに問題の農家は”林檎が煮えちゃう”と言った爺さんはめでたく天寿を全うされ現在息子が農園を継いでいる。息子の代になったら爆音器は無くなり代わりに野鳥の雄叫びが定期的に鳴る機械になったらしい。
それはそれで気持ち悪いらしいが安眠妨害は解消できたのでホッとしているそうだ。