松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

手放してみて、初めてそれに気づくことが出来る   ネルケ無方

2024-05-01 | インポート

手放してみて、初めてそれに気づくことが出来る   ネルケ無方著『迷える者の禅修行』(新潮新書)より

 風薫る五月。余計なものは手放して、気軽になってみよう。なんて言っちゃって。連休が始まった四月末。かねてから断捨離しなければと思っていた不燃物を整理して、処理場へ車で持ち込んだのです。公営の処理場は土曜日曜は休みだけれども、祝日でも月曜日は開いています。とはいえ休日だから、車が列をなすようなことはなく、短時間で済むだろう。なんて思うのは、世の中の動きに鈍感な禅坊主の浅はかな考え。営業車ではなく普通車が、ゴミの重さを計る計量所に行列しています。大型連休だからといって、渋滞の巻き込まれて遠方へ行楽するのではなく、足もとを整理して楽しむという同志が多いのに、風薫る時世を感じたのです。

 さて、5月のことばは、ネルケ無方著『迷える者の禅修行』(新潮新書)から引用しました。著者は一九六八年ドイツ生まれ。高校時代に坐禅と出逢い、仏道を志して来日。兵庫県の山奥にある禅寺「安泰寺」で出家し、のち大阪城公園でホームレスをしながら坐禅修行をする。現在は、得度した安泰寺で住職を務めるユニークな経歴で、曹洞宗の禅僧です。
 わが、松岩寺は臨済宗です。日本の現在の禅宗は、曹洞宗、臨済宗、黄檗宗と三つにわかれています。臨済宗と黄檗宗はかなり近いけれど、臨済宗と曹洞宗はかなり離れています。どのくらいちがうかというと、坐禅するときに、曹洞宗は壁に向かって坐ります。臨済宗は壁に背を向けて坐ります。そのくらい異なります。
 ネルケ無方師は曹洞宗です。今、曹洞宗の禅僧の方々の方が、書籍、映像などに露出することが多いですね。そうした曹洞宗の方の文章などを読むと、われわれ臨済宗よりも発想が柔らかくてセンスが良いかな、と思う。
 柔らかな発想の代表がネルケ師でしょうか。何しろ、ホームレス仲間の輪に加わり、一緒に生活しながら、彼らが「生活の工夫をして、明るく逞しく生きて」いることに感動するのですから。そして、次のように言います。
「ホームレスを救済?とんでもない。ホームレスよりも、毎朝肩を落として駅からビルの群れに向って急ぐ、サラリーマンやOLこそ救済しなければそのように思っていました」、と。
 かつて、京の五条大橋の下でホームレスをしていたのは、若き日の大徳寺開山、大燈国師(1282~1337)だし、美濃の山奥で牛飼いをしていたのは妙心寺開山、関山慧玄禅師(1277~1360)です。禅にはホームレスの系譜があるのです。

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