野蛮への郷愁

2015-04-16 10:14:48 | 日記

只今,」かばんを放り出して門口を飛び出した.

昭平はすでに万端整えて木戸口の石に腰掛けて 唐いもを食べていた.

「お前も食うか.」「うん」と言うと ポケットから焼き芋を取り出して「速く 食ってしまえよ.」

と命令口調で言う.

今日は 近所のかわらで 鰻つりの授業を受ける約束である.

昭平は50cmくらいの肥後竹に 手具酢につないだ釣り針を引っ掛けたものを

二本.用意していた.

一本をわたしに渡した.ミミズを籠から取り出して起用に針にかける.

「チェッ 不器用なヤッだね.」わたしの手際を業笑うように見つめている.

「こいつ」と思うが 野遊びについては昭平にはかなわない.

丹念に 石垣のあいているところに 差し込んでいく.

昭平の見立てど゛おり 見る間にうなぎが喰らいつく.

日は落ちて すっかり 夕刻になっていた.

帰ってみると 父が役所から帰っていた.

「お父さん こら昭平と 鰻取ってきた.」

父の機嫌をとるように顔色窺いながら言うと ちちは「戦利品を出せ」と恐い顔で言う.

「母を呼んで 鰻の処理を任せた.

昭平も武も手足を良く洗ってこい.縁側に正座させられて 父が読み上げる論語の

素読をさせられた.あそぴ゛の開拓者昭平は小学校卒業して八幡製鉄に就職した.

風邪の便りで聞くところでは 昭平は肺ガンですでに他界していた.