花地蔵つれづれ日記

古美術、芸術全般、日々気になること。

銅造千手観音菩薩立像

2020-08-04 05:48:46 | アート 文化 古美術


室町時代の銅造千手観音菩薩立像です。
明治時代の作と思われる木彫の光背・蓮華座が美しく引き立てています。
仏像は愛らしく、小仏ながら顔の表情まで丁寧に表現されています。古銅の味わいが魅力的です。
光背や蓮華座等の表現は精緻で、彫りは力強く巧みです。迫力があり、エネルギーに満ちています。
光背・蓮華座等の台座を作った作者(おそらく仏師)は、この仏像の美しさに感銘を受けて制作に臨んだと思います。
時代を越え、作者同士の心が繋がって出来上がった美しい表現と言えましょう。
座辺に置き、見つめていたくなる仏像です。
眺めていると、静かな気持ちになれるでしょう。
■千手観音菩薩像とは、千本の手のひらにひとつずつ眼があり、この眼があらゆる生き物の願いごとをひとつ漏らさず見とどけ、
千本の手に象徴されるあらゆる手段でそれらをかなえてくれる仏です。ここでの「千」というのは具体的な数字ではなく「無限」という意味で、
救済の能力と手段を無限にもち合わせていることを意味します。

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遮光器土偶・頭部

2020-07-03 05:21:00 | アート 文化 古美術


縄文時代晩期の遮光器土偶・頭部です。
遮光器とは、イヌイットやエスキモーが雪中行動する際に着用する遮光器(スノーゴーグル)のことで、遮光器土偶とは、目にあたる部分がそのような形をしていることからこの名称がつけられました。
構造的には、中が空洞に作られている、「中空土偶」(ちゅうくうどぐう)です。大型の土偶を制作する際に用いられていた手法です。
形状から、東北地方出土のものと推定されます。
参考資料として掲載しました「日本陶磁大系1縄文」 平凡社の図版 9 遮光器土偶 晩期 岩手県軽米町長倉出土 高さ23.7cm と類似した表現がされています。(旧版 陶磁大系1 縄文 平凡社 図版35では同じ土偶が、「中空大土偶」として掲載されています。)
後頭部には流麗な線刻の「雲形文」が配され、力強いフォルムを持つ、祈りの形の象徴を示す土偶です。
眺めていると、思わず笑みがこぼれてしまうような、心が癒される、愛らしい表情をしています。
大型なので存在感があり、見応えがある土偶です。

■遮光器土偶は、東北地方北部の「亀ヶ岡文化」の中で生まれ、短期間のうちに著しい発展を遂げた土偶形式です。そこで生まれた土器の様式は、総して亀ヶ岡土器様式とも呼ばれています。土偶は 縄文人たちの「まつり」に供された後、そのほとんどが、故意に壊され、捨てられたようです。この捨てるという行為自体に、実は、私たちの意識を超えた、ある特別の意味が込められていたと考えられています。これは、病気などで異常のあるところの治癒を願って、あえて破壊したとする説もあります。また、ひとつの遺跡から数多く見つかることから、呪術的に使われたものともいわれています。土偶は、縄文世界の祈りの形「ひとがた」に託した呪術具として、縄文人たちの「まつり」における、祈りを受けとめる精霊の「よりしろ」として機能したと考えられています。

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新鮮な空気を吸いたい

2020-06-28 18:56:55 | アート 文化 古美術


古美術商は、他業種と比べると忙しいことが少ない商売だと思います。
中には忙しい人もいるのでしょうが。
新コロナウイルスの時代の前は、のびのびと「暇だな。」と言っていましたが、
今は、どこか窮屈な感じで「暇だな。」と言っているような気がします。
暇なので、気晴らしに近くの海を見に行きました。
自然に接して、新鮮な空気を吸いたいというのは、人間の本能だと思います。
だから、鎌倉や江の島に人が押し寄せ、密になっているニュースを見ても、仕方ないだろうなと思います。
海では、ウィンドサーフィンを楽しんでいる人も何人かいました。
曇り空で青い海は見れなかったのですが、
「いつでも自然を楽しむことができるのは、田舎に住んでるおかげだ。」
と、つくづく実感しました。

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美濃灰釉盃

2020-06-15 05:24:35 | アート 文化 古美術


桃山時代から江戸時代初期の美濃灰釉盃です。
窯変により、釉薬が虹色に輝く、景色の美しい盃です。
高台に見られる、美濃特有の、もぐさ土の柔らかな表情も、古陶愛好者にとっては堪らなく愛おしいものでしょう。
長年、愛玩され呑み続けられて来た盃です。見込みに、お酒が染み込み、味わい深い景色が広がっています。
盃を伝えて来た人々の、盃に対する愛情が伝わって来るようです。

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石皿「梅図」

2020-06-09 05:52:56 | アート 文化 古美術


江戸時代後期の瀬戸の石皿「梅図」です。
皿いっぱいに、梅の花が愛らしく生き生きと描かれています。筆さばきは、スピード感があり力強く流麗です。大胆な構図で、花が咲き誇っているようです。
使っても重宝しますが、飾って眺め、花を愛でる時のように、おおらかな気分を味わってはいかがでしょうか。存在感のある魅力的な石皿です。

■石皿とは、江戸時代から主に瀬戸で生産された、盛り皿として使われた陶器の大皿です。主に東海道筋の旅籠屋や煮売屋などで好んで用いられた皿です。石のように頑強であることからの呼称ともいわれています。模様は実に様々ですが、草花や樹木が最も好まれ、他に山水とか、鳥、獣、魚、貝なども題材になりました。幕末から明治にかけ、この傍系のものに鉄絵一色のものも現れ、例の馬目皿はその終わりを語るものです。そして遂には全く無地ものとなっていきます。

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李朝 鶏龍山刷毛目茶碗

2020-06-03 05:37:11 | アート 文化 古美術


李朝時代前期の鶏龍山刷毛目茶碗です。
鶏龍山特有の、鉄分の多い茶褐色の胎土の上を、スピード感のある刷毛目が、草原を吹き抜ける疾風のように、一気に勢いよく刷かれています。
胎土と、刷毛目の白土とのコントラスも美しく、碗の側面と見込みの刷毛目跡とともに見事な景色を作り出しています。
使い込まれた年月が、見込みの刷毛目の白土に味わい深い陰影を与え、刷毛目跡からは、この茶碗を愛しんできた人々の思いが滲み出ているようです。
窯の中で生じた器の歪みが、口辺に美しい曲線を描き出しています。日本の茶人はこうした「歪み」を賞玩してきました。
金繕いもアクセントとなり、器の造形の変化の一助となっています。
変化に富んだ、力強い迫力ある造形です。
お茶を点てると、茶の緑が映え、器も生き生きとした姿を見せます。多彩な表情で、目を楽しませてくれる茶碗です。

花地蔵のサイトとfufufufuのサイトに掲載中ですので詳細をご覧ください。

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夕暮れ時のヒナギク

2020-05-24 20:46:33 | アート 文化 古美術


夕暮れ時、駐車場に車を停め、歩いているとドキッとするような白が目に入って来ました。
ヒナギクの鮮明な白です。いつも歩いている道なのに今まで気づかなかったのです。
最近、テレビで大学の先生たちの研究を紹介している番組がありました。
「こんなことを研究している学者がいるのか?」と愕然とする内容で、面白かったです。
でも今は、無駄に思えるものの中に、「後の世に認められ、世の中を動かすようなものがある。」と考えると、今まで、すぐに役立つことや、効率ばかりを考え、いろいろの物を削り、ゆとりの部分を無くし、ギスギスとした世を生きて来たような気がします。
音楽や美術が、疲れた心を癒してくれるように、無駄やゆとりが、世の中の安全弁になったくれていることを忘れていました。
そういえば、この頃テレビで中島みゆきの曲を聞く機会が多くなったような気がするのですが、気のせいでしょうか。

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黄瀬戸茶碗

2020-05-21 05:21:15 | アート 文化 古美術


室町時代後期から桃山時代の黄瀬戸茶碗です。
器全体に釉薬が施されている総釉(そうぐすり)の器です。
ほんのりと黄味を帯びた色彩に、使い続けられた時が深みを与え、味わいある、心引き付けられるような表情となっています。
伝世の茶碗が持つ、しっとりとした潤いのある肌も魅力的です。
側面の張りのあるシルエットと、口辺が描きだす曲線は美しく、眺めていても目を楽しませてくれます。
見込みも深く、繕いも丁寧に施され、茶人の心を喜ばせてくれる趣きのある茶碗です。お茶を頂けば、先人達の、この茶碗に注がれてきた温かい眼差しを感じることができるでしょう。
心にそっと響くような茶碗です。

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