「でも、先を考えなくてはならない。そんな現実も待っていた。
本の出版権や多少の遺産があっても、子供がふたりだけで生きていくことは難しすぎる。
そこで、牧師さんは事故の報告とともに、僕らの今後のことについて、
日本にいる父の兄に連絡を取ってくれた。
ゆっくりと話す牧師さんの英語を完全に理解できなくとも、
伯父は、その悲痛な出来事に相当なショックを受けたと思う。
でも、牧師さんが言うには、終始毅然とした対応ですぐに渡米することを約束して、
電話を切ったらしい。
そして、伯父は可能な限りの最短時間で飛んできてくれた。
その時、初めて、僕は伯父という人に会った。
その人は無口そうな人で、その目は父と同じ色の光を称えていた。
それだけで、絶対的に信頼できる人だと直感できた。
すると、牧師さんが切り出すよりも早くに伯父は、
妹と僕を自分の子供として育てていくつもりだと、
偽りのない気持ちの伝わるストレートな英語で言ったんだ。
そして牧師さんは、彼の目を直視してゆっくり頷いてから一言だけ発した。
“どうか、この子の気持ちは、優先させてあげてください。
もう、自我が芽生えている年齢ですから。”
そう言ってから、今度は僕の目を見たんだ。」
“お待たせいたしました。”
トレイにふたつ乗せて、まだまだ疲れのない笑顔が戻ってきた。
“ありがとう。”
通路側の彼がそう言って、ふたつ並んだ透明なコップを取り上げた。
本の出版権や多少の遺産があっても、子供がふたりだけで生きていくことは難しすぎる。
そこで、牧師さんは事故の報告とともに、僕らの今後のことについて、
日本にいる父の兄に連絡を取ってくれた。
ゆっくりと話す牧師さんの英語を完全に理解できなくとも、
伯父は、その悲痛な出来事に相当なショックを受けたと思う。
でも、牧師さんが言うには、終始毅然とした対応ですぐに渡米することを約束して、
電話を切ったらしい。
そして、伯父は可能な限りの最短時間で飛んできてくれた。
その時、初めて、僕は伯父という人に会った。
その人は無口そうな人で、その目は父と同じ色の光を称えていた。
それだけで、絶対的に信頼できる人だと直感できた。
すると、牧師さんが切り出すよりも早くに伯父は、
妹と僕を自分の子供として育てていくつもりだと、
偽りのない気持ちの伝わるストレートな英語で言ったんだ。
そして牧師さんは、彼の目を直視してゆっくり頷いてから一言だけ発した。
“どうか、この子の気持ちは、優先させてあげてください。
もう、自我が芽生えている年齢ですから。”
そう言ってから、今度は僕の目を見たんだ。」
“お待たせいたしました。”
トレイにふたつ乗せて、まだまだ疲れのない笑顔が戻ってきた。
“ありがとう。”
通路側の彼がそう言って、ふたつ並んだ透明なコップを取り上げた。