はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 55

2012-06-22 03:11:59 | 【Gravity Blue】
「伯父も来てくれるらしいんだ。」

横顔のままで、彼が言った。
「え?」
ゆっくりと首を反転させて聞いた。
ジェットラグのせいか、現実と空想の境が少しぼやけている。

「さっき、空港から電話をしたら、教えてくれたんだ。」
「そうなの。2回目なの、ね?」
変に遠慮をして聞いたので、彼は笑って、
「気にしないでいいよ。複雑な家庭環境の人なんて、大勢いるんだから。」
「ごめんね。」
「だから、謝らなくていいから。」
そう言って、また、笑った。
そして、さりげなく、わたしに心配りをしてくれたように、ドライに言った。
「妹もくるのかな。それとも、連れてこないかな。」
「あなたは、どちらが良いの?」
遠慮と不躾の狭間で、まったくバランスが取れずに聞いてしまった。
「会いたいな、やっぱり。」
深く座席に座り直してから言った。

「もちろん、兄であることを名乗ることはないし、これまで通りでいい。
ただ、大きくなった妹を、幸せに暮らしている妹を見てみたい。」
「そうよね。お兄さんなら、そう思うわよね。」
相当、不躾な上に、間抜けな質問をしたことに、我ながら愛想が尽きた。
「会えるといいね。」
「そうだね。」

そう言った彼の目に、空元気でない、本物の元気が、少し戻った気がした。