「そうだったんだ。」
そう言うと、すっかり冷めた紅茶を一口飲んだ。
ついさっきまでは、西陽で染められていた外も、
気づけば明かりを点けなければ動きづらいくらいのテーブルになっていた。
「今まで、黙っていてごめんなさい。」
母は、話し終わった途端に、さっきまでの毅然としていた姿とは別人になっていた。
いや、普段の母に戻ったと言うべきかもしれない。
きっと、告白という大仕事を終えて、急に力が抜けてしまったのだろう。
「私は大丈夫だから、気にしないでいいよ。お母さん。」
不思議なくらいに、本当に大丈夫だった。
不思議なくらいに、本当に穏やかだった。
そんな予感はまるでなく、心の準備などできている訳でもなかった。
けれど、言われてみれば、とても当たり前のようにも思えた。
ただ、心配だったのは、海のことだった。
「海は、そのことを知っているの?」
「ううん。もちろん、知らないわ。多分。」
急に、自信なさそうに言った。
「海は、まだ2歳だったから、その頃の記憶は残っていないと思う。
それに、あの子が、事実を知っている上で、黙っていたとも思えないし。」
「そうね。」
どんなことでもシンプルに考えようとする海に限って、
あえて複雑にするようなことはないと確信はできた。
「でも、記憶というものは、心のどこかに残っているものだから、
何かの拍子にフラッシュバックが起きても不思議ではないわ。」
「それは、大丈夫よ。海の思い出の量は・・・」
そう言いかけた時、頭の芯で散らばっていたものたちが、爆発的に真っ白な光となった。
そう言うと、すっかり冷めた紅茶を一口飲んだ。
ついさっきまでは、西陽で染められていた外も、
気づけば明かりを点けなければ動きづらいくらいのテーブルになっていた。
「今まで、黙っていてごめんなさい。」
母は、話し終わった途端に、さっきまでの毅然としていた姿とは別人になっていた。
いや、普段の母に戻ったと言うべきかもしれない。
きっと、告白という大仕事を終えて、急に力が抜けてしまったのだろう。
「私は大丈夫だから、気にしないでいいよ。お母さん。」
不思議なくらいに、本当に大丈夫だった。
不思議なくらいに、本当に穏やかだった。
そんな予感はまるでなく、心の準備などできている訳でもなかった。
けれど、言われてみれば、とても当たり前のようにも思えた。
ただ、心配だったのは、海のことだった。
「海は、そのことを知っているの?」
「ううん。もちろん、知らないわ。多分。」
急に、自信なさそうに言った。
「海は、まだ2歳だったから、その頃の記憶は残っていないと思う。
それに、あの子が、事実を知っている上で、黙っていたとも思えないし。」
「そうね。」
どんなことでもシンプルに考えようとする海に限って、
あえて複雑にするようなことはないと確信はできた。
「でも、記憶というものは、心のどこかに残っているものだから、
何かの拍子にフラッシュバックが起きても不思議ではないわ。」
「それは、大丈夫よ。海の思い出の量は・・・」
そう言いかけた時、頭の芯で散らばっていたものたちが、爆発的に真っ白な光となった。