Gravity Blue ５８

それは一気呵成に押し寄せてきた。
有無を言わさず。

感情を超越した感情。
喜怒哀楽、どれにも当てはまらない説明不能な感覚。
ほんの数秒前までは、彼の話を外側から包むように聞いていた、わたし。
瞬時に結界を破って、物語の中の一人になってしまった、わたし。

女性の方が、肉体的にも精神的にも強くできていると言われる。
けれど、これは末期的な衝撃だ。
何かあと一撃でも加えられたら、生命すら危うい状況になると実感できる。
これほどまでに、事実を知ることの恐怖を感じたことはない。
彼と出会ってしまった時から、いつかは知る運命だったのだろうか。
知らなくても済んだのだろうか。
それとも、知っておくべきことだったのだろうか。
どちらにしても、即断即決をできることではないことだけは間違いない。

事実を告げるべきか否か。
彼のもとを離れるべきか否か。

正解なき問いかけに、必死で正解を探そうした。
彼にかける言葉も、自分自身に向ける言葉も浮かんで来ない。
心と体と言葉が完全に分離している。

わたしは、この人の、妹だ。
たった今、ここに向かっている伯父というのは、父だ。
そして、きっと、母も泉も一緒だ。

わたしは、どうすればいいの・・・