はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 50

2012-06-17 10:20:53 | 【Gravity Blue】
「僕ひとりの幼い判断で妹との別れを選んだ時、
湧きあがる妹への罪悪感と自分自身へのけじめとして、牧師さんの家ではなく、
両親と暮らしたその家で、ひとりで暮らしていくことも決めた。

実質的には牧師さんに見守られて育ったとはいえ、
その時の僕の形式的で拙い意見を認めてくれたことが、
何よりも嬉しかったのを今でも鮮明に憶えている。
だから、そんな子供の無謀な考えを、反対もせずに尊重してくれた
牧師さんと伯父と伯母には、今でも感謝しているんだ。」

一気にジュースを飲み干して、続ける。
「そうして、妹は日本という国で新しい家族とともに、新しい一歩を踏み出すことになった。
妹を混乱させないために、僕は一切の連絡を断つことも決心した。
それは、別々のところで、別々の人生を歩むことを完全に決めた瞬間だった。

本当に、辛かった。
いや、今でも。
彼女は幸せでいるのか。
僕のしたことは間違っていたのではないか。
一緒に暮らしていたらどうなっていたのだろう。
と、今でも、あの時の決断から、何一つ前に踏み出せないままでいるような気がするんだ。」

そう言って、少し色あせた、頬を寄せ合う両親の写真を、
大事そうに財布の中から取り出した。