日本司法書士連合会の東北地方太平洋沖地震災害復興支援情報を転載します。http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/info/info_detail.php?article_id=91
<被災された皆様へ>
このたびの大地震や津波などでお亡くなりになられた方へ心より哀悼の意を表します。また、被災され、あるいは避難されている皆様には心よりお見舞い申し上げます。
日本司法書士会連合会では、地震当日に統合災害対策本部を立ち上げるとともに、被災地の司法書士会に災害対策実施本部を立ち上げ、きめ細かな法的市民救援活動を行ってまいります。
具体的には、各自治体をはじめ関係諸団体並びに法テラスと連携し、被災者の皆様の法的な不安を少しでも取り除くための電話相談、さらには被災地等での無料相談会を開催いたします。
また、このたびの大震災では、法律関係でも数多くの特例的な措置がなされると考えられますので、これらの情報提供や手続きの方法などについてもご相談に応じる体制を構築してまいります。
司法書士は被災者の皆様に一日でも早く復興していただくため、法的市民救援活動を通じてその社会的使命を果たしていく所存です。
<被災された皆様への法的支援活動>
(1)無料相談のお知らせ
下記の司法書士会にて無料相談を実施します。
○宮城県司法書士会
http://www.miyashikai.jp/20110323-01.pdf
○千葉司法書士会
http://chiba.shihoshoshikai.or.jp/hisaiti_soudan.pdf
○大阪司法書士会
http://www.osaka-shiho.or.jp/
○兵庫県司法書士会
http://www.hyogo-shihoushoshi.jp/index.html
(2)こんな相談なら司法書士へ
このたびの大震災では、地震による建物等の倒壊被害だけでなく、津波によって甚大な被害が発生しました。
これまでの災害では、津波によるものは比較的少なかったため、災害時の法律相談も津波災害に起因するものの事例は少ないのが実情です。
ここでは、阪神・淡路大震災、中越地震、中越沖地震、東海豪雨等の災害に関する司法書士相談で寄せられた相談例を参考までにご紹介します。
※なお、あくまで例示ですので、質問に対する回答は簡略化しております。また、個別事案によって結論が変わることがありますので、ご相談ください。
<不動産の権利関係>
Q.浸水で自宅土地の権利書が流され紛失してしまいましたが、自分の権利が証明できなくなりませんか?
A.法務局に登記されているので、権利書がなくとも権利がなくなるようなことはありません。但し、その土地を売却したり担保に入れたりする場合は、事前通知制度や本人確認情報制度を利用する必要があります。
Q.地震で土砂崩れがあり隣地との境界杭がなくなってしまい境界がわからなくなりました。
A.登記所に保管されている公図や測量図を基に境界の復元を専門家に依頼したり、法務局で行う筆界特定制度を利用する方法もあります。最終的には訴訟による手段がありますが、できるだけADR(裁判外紛争処理)など話合いで解決したいものです。
<住宅ローン>
Q.自宅が倒壊してしまいましたが、住宅ローンの残高は今後も返済していかなければならないでしょうか?
A.自宅が倒壊したり損傷しても、住宅ローンは原則的には継続して返済をする必要があります。しかし災害の場合には金利の減免や支払猶予などの特別な措置がとられることが多いので、金融機関の窓口や被災地の自治体の窓口などに問い合わせましょう。
<借家関係>
Q.地震で借家が一部損壊しましたが、修理すれば居住は可能と思われます。しかし、家主は修理に費用がかかるので借家人に退去を要求しますが、退去しなければなりませんか?
A.契約を解除できる正当理由があるかどうかの問題ですが、正当理由があるかどうかはケースバイケースで、裁判によって争われることもしばしばあります。このケースでも、損壊の程度、修繕費用と耐用年数、立ち退きによって借家人が受ける不利益等様々な事項を踏まえて総合的に判断する必要がありますので、まず話し合うことが必要です。
Q.自宅である借家が水没して居住は不可能な状態です。それでも家賃は支払わなければなりませんか?
A.借家が水没し居住できなくなったのであれば、賃借人には賃料の支払い義務はありません。また、借家に浸水し一部の利用が不能になった場合は、賃借人は賃料の減額を請求することも可能です。
Q.地震に伴う火災で借家が消滅した場合、賃貸借契約はどうなりますか?
A.原則的には、賃貸借契約は履行不能により終了します。しかし、大災害では罹災都市借地借家臨時処理法が適用されることが多いので、その場合には優先的な賃借権が認められます。例えば、地震等で借家が消滅しても、一定の条件の下に借家人が土地の賃借権を取得して建物を建てることができる場合などがあります。
<会社関係>
Q.地震で会社の代表者が死亡しました。会社の業務上直ちに行うべきことはありますか?
A.代表取締役など会社を代表する者が亡くなった場合は、会社の取引上直ちに支障をきたすことも多くありますので、株主総会あるいは取締役会などで後任の代表者を選任し、代表者変更の登記をする必要があります。同時に新代表者が法務局に印鑑届を行い、会社を代表する者としての印鑑証明書が取得できるようにしておくことが必要です。
<財産管理>
Q.父が被災しそれ以来行方不明です。父はアパートなども経営しており財産もありますが、誰が管理すればよいのでしょうか?
A.亡くなったことが明らかでない以上、相続は発生しません。法的には財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。一定期間生死が不明の場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立を行うこともできます。失踪宣告がなされると相続が発生するので、相続に関する手続きを行うことになります。
そのほかに
*大災害に便乗した悪徳商法にうっかりひっかかり契約してしまった
*建築工事中に大地震がきて工事が中断した
*区分所有のマンションが修理不能な損壊をうけた
*借金を抱えた父親が地震で死亡した
など、今回の大災害では様々な法律問題が発生することが想定されます。
災害に起因し生活にも関わるこれらの法律問題に対し、司法書士は精一杯相談をお受けいたします。
(3)日司連市民救援基金の活用
平成7年の阪神・淡路大震災を契機として、平成11年に、日本司法書士会連合会に「市民救援基金」が創設されました。
この基金は、地震などの災害の被災者が抱える法律問題の解決に向けた相談活動を中心に、司法書士へ支払う費用の支援やその他法的支援サービスを的確かつ迅速に行うためのものです。
この基金は、他団体に先駆けて創設された司法書士会独自のものであり、創設以来大小10数件の災害において活用されています。
現在も自然災害が発生するたびにこの基金を活用し、司法書士を派遣したり、生活法務面での被災者の復興支援活動を継続しています。
このたびの災害においても、市民救援基金を活用して被災者復興支援活動を積極的に推し進める所存です。
○市民救援基金
http://www.shiho-shoshi.or.jp/activity/contribute/rescue_fund.html
<災害復興関連法律情報>
・法務局・地方法務局の業務等への影響について(法務省HPへリンク)
・定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて(法務省HPへリンク)
・東北地方太平洋沖地震により権利証(登記済証・登記識別情報通知書)を紛失した場合について
(法務省HPへリンク)
・東北地方太平洋沖地震により滅失した戸籍の再製について(法務省HPへリンク)
・災害復旧における境界標識の保存について(法務省HPへリンク)