日々の便り

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

河のほとりで (15)

2024年11月11日 03時31分55秒 | Weblog

 奈津子は、二人が上京以来3ヶ月ぶりに訪ねて来たことを待ちかねていた様に、理恵子のことは江梨子に任せて、台所でアイスコーヒーやら水菓子を用意して部屋に戻ると
 「田舎と違い、コンクリートの街は蒸し暑つさが事の外感じられるわネ」「こんな日は田舎が恋しくなるゎ」
と言ってエアコンをを弱めにつけて座ると
 「貴女達、お土産なんて無理すること無かったのに・・」
と礼を言いつつも、早速、「戴きましょうヨ」と包装紙を解き「アラッ! 果物もいいわネ」と言って、遠慮気味に少し堅くなっている二人の気持ちをやわらげてから、二人に対しまるで姉さんらしい語り口で
  「皆が、病気もせずに逢えたことが、何よりの幸せネ。 慣れない土地での緊張感やストレスは、それぞれにあったでしょうが・・」
と、同級生時代からのリーダー格らしく、頭脳明晰なところもあるが、二人の先頭に立って来た持ち前の陽気で気性の強さで雰囲気を和ませたあと
  「一番弱わよわしかった江梨子ちゃんが、今日、お逢いした中では最も社会人らしくなったわネ」
  「服装やお化粧も、私や理恵子さんより、断然、先頭を行っているヮ」
  「理恵ちゃんは、美容師だけに抜群のスタイルに合わせて、髪型やお化粧はとっても素敵だが、高校時代と同じで、静かで温和し過ぎるる様に見受けられるが、大きな悩みでもあるの?」
と、インスピレーションを働かせて卒直に話し始めると、江梨子が
  「奈津ちゃん、お部屋に伺った瞬間、まるで新婚家庭の様に家具や調度品が並べられていて、わたし、ビックリしてしまったヮ」
  「実際の生活は、どうなっているの?」  「彼氏が、頻繁に来ているの?」
と聞くと、奈津子は飾り気のない言葉で日常の生活振りについて

 貴女達も御承知の通り、内山君は、まだ、医学部3年生で勉強が大変らしいこと。  
 自分も薬学部のキャンパス内のことしか判らず、共に世間知らずな面があり、それに、どちらも親からの仕送りで生活しているので、人並みにお洒落や観光地を遊んで歩けないが、自分はこれで充分満足して今の生活をエンジョイしているわ。
 彼も、月に一度泊りがけで訪ねてくるが、その晩は奮発して少し豪華な外食を楽しんで帰宅後は、勿論、同じベットで肌を合わせて愛を確かめ合うが、周囲には学生結婚している人達も結講いるらしいの。 
 自分達は、お互いの両親が、将来、私達が一緒になることは承知しているが、正直言って両家とも田舎の小さな医院であるだけに、自分達の収入で生活出来る様になるまでは一緒になることは頭になく、単純に計算しても研修医が終わるまでに、この先6年もかかり、余り先のことまで考えても仕様がないので結婚を焦せっていないわ。
 兎に角、今を大事にして、出来る範囲で学生生活と彼とのデートを楽しむことにしているの。
 それだけに、人それぞれに考えはあるでしょうが、わたし達は、単にsexは快楽だけでなく、二人の愛を確かめ合うためにも、また、自分達の精神的な生活に必要不可欠だが、その反面、瞬間的な感情に流されて避妊を怠ることのないように神経を使うわ。このことは女性の宿命みたいで、貴女達も良く覚えていた方がよいわ。 今時、価値観も大分変わり生娘での結婚は珍しいくらいで、性も大分解放されているが、ただ、赤ちゃんを抱いての結婚式だけは御免だわ。
 ただ、興味半分の遊びは絶対に駄目ょ。 自尊心を傷つけない様に良く考えて行動してね。

と、経験に即した忠告を交えて近況を正直に話をしたあと
  「江梨子は、三人の中で、唯一、自分で収入を得ているが、会社勤めは大変でしょう」
と、話題を江梨子に向けて聞き出したので、江梨子は

 わたしの場合、小島君と共に母親の敷いたレールの上を、ひたすら走り続けている様な生活で、彼は会社の寮生活だが、この会社はやたらと人間教育が最優先と、社是にしており、そのため試用期間中の彼も、女性の出入りは禁止の寮生活で、寮長が自衛隊出身の人で生活の躾は厳しく、休日の外泊は許可せず、外出も届けて帰寮時間も厳守で鍛えられているが、幸い彼も機械好きで夢中になっており、泣き言もいわず、わたしは助かっているわ。
 わたしは、一応営業部に席をおいているが、最初の頃は、先輩の付き添いもあったが、今月からは一人で、大坂や名古屋に出張することがあり、出張先で招待のあと中年の男性から怪しげな誘いを受けることもたまにあるが、社会ってこんなものかなぁ~と、思い適当にあしらっているが、彼が月に一度しか日帰りでしか、わたしの部屋に来れないのが、目下の最大の不満と言へば不満なことだわ。
 今日着てきた服も、半額会社負担で、下宿代を払えば特に大きなお金を使うことも無いので、半分は彼に自由に逢えない腹いせに、思い切って高いかなと思うが、服装やお化粧等身の回りのことで気持ちを癒しているわ。 お陰様で会社の人達は、社長の身内であるとゆうことを抜きにしても、皆が親切にしてくれるので、仕事上の苦労は余り感じないが、今時、贅沢かも知れないが、精神的には悲しきOLと言ったところかな。

と言って笑い、続けて少し恥じらいながら
 
 この前なんか、母親と妹の友子が上京してきて、社長が姉の母親に敬意を表して夕方に、高級料理屋に招待してくれたが、座敷に座るや二人して、わたしのお腹の辺りをジロジロ見ていて、友子が
 「母ちゃん、まだみたいだヮァ~」
と言ってフゥ~と溜め息をつくと、母親も、険しい目でわたしの顔をチラット見ながら、友子と社長にも口説く様に、元気の無い声で
  「本当に、この子ったら意気地がないんだから・・。何のために二人して上京させたのか判んないのかねネェ~」  
  「この分だと、わたしが老いぼれてからでないと、孫の子守が出来ないんかネエ~。寂しいもんだわ」
と口説いたあと、弟の社長を横目で睨んで
  「ヤッパリ わたしが会社に残り、お前が田舎に帰り先祖の墓守りをすれば良かったんだわ・・」 
と深い溜め息混じりに小さい声で呟くと、母親を庇うかのように妹の友子までもが生意気にも、
  「姉ちゃん!あとがつかえているんだからネ」 
  「わたしが、姉ちゃんよりも先に結婚して子供を生んだら村中の笑いものになってしまうんだからネ」
と、母親に便上して、わたしが早く妊娠するのを期待しているかの様に言うので、流石に社長も見かねて、会社の方針で小島君が一人前の技術屋になるまでは、我慢してくれと助け船を出してくれていたが、わたしは、何時、妊娠してもいいと覚悟はしているが、世の中は思う様に行かないわ。

と、自分達の置かれている現実的な立場と悩ましい現在の心境を、愚痴を織り交ぜて溜め息混じりに話した。
 黙って聞いていた奈津子と理恵子は、江梨子が急に大人びいた考えを披瀝したことに驚いて言葉も出なかった。
 

 

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