子供の頃は、ちょっと変だなと思ってもうまく言語化できなかったりするので、外面が異様に良い母は、だいたいの同級生に
「ほんとに優しいお母さん」
と、言われていたが、数人、母の正体を見てしまった友達もいる。
友達がいたり、母親の来客がある時は、猫撫で声で非常に優しいのだが、バイバイした途端
「なんで友達を、連れてくるんだ?」とヒステリーを、起こす。
何度も怖い思いをしたのに、友達は手作りのお菓子を作ってくれてあれこれ世話をやいてくれる優しい、外向けの私のお母さんのことが好きで、うちに遊びに来たがるので、ついついお家で遊んでしまうと、笑顔を貼り付けたオニの目がわたしだけにわかるように
「あとで覚えてろよ、、、」と言っているので友達が帰るのが怖かった。
そう。手作りのクッキーやホットケーキ、プリンやデコレーションケーキ、マドレーヌ、カップケーキ、豪華なゼリー、、、
母はそうしたおもてなしができる人だった。
そこだけ切り取ると、私だって、本当に良いお母さんだよなぁって思う。
家中にお菓子の焼けるあまーい香りが漂っていて、そんなときは、ちょっと誇らしく友達を招き入れていた。
理想のお母さんの一面も確かに持っているのだ。
が、友達が帰り、ドアが閉まった瞬間、目つきが嘘のようにかわり
「おい、、、連れてくるなって言っただろう」
と、、髪の毛を引き摺り回す。
忘れ物をしたお友達がインターホンを鳴らさずにあわてて戻って来てしまったことがあり、その姿を見られてしまった。
母は、咄嗟にわたしを離し、いつもの笑顔を貼り付けて
「どうしたの?」
友達は恐怖に震えて目を見開いていた。
その後しばらくその子は学校では私と距離を置くようになったし、友達はうちに来たいと言わなくなった。
とにかく、いろんなところにイタリア製の陶器でできた花の置物をかざっていたので、普通に子供がはしゃぐと、ぶつかってそれが割れたりしていた。
秩序のない飾り方をするからだよ、、、と思うが、その場で友達は
「大丈夫?」と言われても、その後怒られるのはわたしだった。
地震の時、殆どの置物が落ちて壊れた時、わたしは心が本当にすうっとした。
意外なほどあっさりと、それらを処分する母に苛立ったりもした。
大切なものでもないのに、なぜあんなにたたかれなくてはならなかったのか?
まぁ、友達叩いたら大問題になるんだけども。
そう。何が起きても、悪いのはいつも私なのだ。この家では。