Justice! 社会正義の実現!所得充実政策!ワクチンより検査を積極的に推奨! / 薬剤師・元参議院議員・消防団
ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ
「コンビニ処方」の是非:風邪薬・漢方薬がコンビニで買える!?
7月3日の日経新聞一面トップは、市販のOTC医薬品(医師による処方箋を必要とせず購入できる医薬品)の風邪薬や漢方薬、ビタミン剤・整腸剤などを、副作用を明記することを条件に、薬剤師でない「登録販売者(都道府県ごとの試験)」でも販売を可能にするという内容の記事でした。すなわち、コンビニでも風邪薬や漢方薬を手に入れることができるようになる、というものです。
病医院に頼らずとも、街かど薬局で必要な医薬品を購入することができることは、膨らむ医療費を抑制する上でも重要な手段です。1997年に、胃・十二指腸潰瘍の殆どを外科的に手術することなく治癒率を格段にアップさせた胃酸分泌抑制剤「H2ブロッカー」が、医師の処方によらず薬局で購入できるようになったことは、セルフメディケーションに大きな革命をもたらしました。薬剤師として街かど薬局の店頭に立ち、商品名「ガスター10」の服用方法と留意点を必死に説明していた当時を、私も懐かしく思い出します。
ガスター10を筆頭にH2ブロッカーがスイッチOTC(処方箋医薬品からOTCになったもの)として街かど薬局で手に入るようになったことは、間違いなく国民に利益をもたらしたと言えますが、その代償として、服用管理が万全でなく副作用の被害にあわれた方々もまた少なからずいらっしゃいます。中でも、致死的予後を迎えられた方々にとっては、医師の管理なく、また薬剤師の管理も不十分なまま、簡単にH2ブロッカーを服用できたことが、果たして患者利益に資するものであったのかどうか?非常に悩ましく、スイッチOTCが抱える課題は今後も続く命題になっています。
街かど薬局の薬剤師であっても、当該医薬品を購入された方々の服用管理をすべて徹底することは、残念ながら困難です。H2ブロッカーに代表される「スイッチOTC」の販売は、そこに一定のリスクが生じることを、服用する側も承知の上での解禁であると認識しなければならないのです。そこで、今回の改正薬事法の適用に直面する時、名実ともに「コンビニ処方」がまかり通ることの是非を、私は考えずにはいられないのです。
市販の風邪薬を甘くみてはなりません。薬物アレルギーによるアナフィラキシーショックはもとより、緑内障や前立腺肥大を治療中の方々にとっては、風邪薬は諸刃の剣ともなりかねません。病院で加療中の患者さんが、風邪薬だけは市販のもので済ませようとする行為は、いまや否定できないし、あってしかるべき行動でしょう。だからこそ、風邪薬を販売する薬剤師は、お客様から必要な情報をお聴きして(引き出して)、お客様のセルフメディケーションに真に貢献するために、職責を全うしているのです。
翻って、街のコンビニで、薬剤師でない人の手によって風邪薬や漢方薬が販売されるとなると、事態はどうなるでしょう。果たして、「登録販売者」なる方がお客様のバックグラウンドにまで注意をはらい、必要な情報を得て、お客様の健康に寄与する販売をどこまで行うことができるでしょうか。特に、漢方薬については、風邪薬以上に注意を払わなければなりません。厚労省は、H2ブロッカーと比較して漢方薬の規制を緩和していますが、それは大きな間違いです。小柴胡湯など一部の漢方薬を除き、世の中全体が漢方薬には副作用がないと誤解されている風潮だからこそ、漢方処方の難しさを広く情報提供する必要が厚労省にはあるはずです。
例えば、誰もが知る「葛根湯」には、狭心症や心筋梗塞の既往歴のある人には原則投与してはならない「麻黄(マオウ)」という生薬が含まれています。街かど薬局の薬剤師は、葛根湯を販売する際には、そこまで注意を払わなければならないのです。頻尿などに用いられる「八味地黄丸」は胃腸障害を起しやすく、また婦人科用として用いられる漢方薬には、リウマチやアトピー性皮膚炎の患者さんには要注意の「桂枝(ケイシ)」という生薬が含まれているものもあるのです。これらはごく一例にすぎず、偽アルドステロン症やミオパシー、更には肝機能障害などの重大な副作用の事例は、漢方薬といえども実際に報告されています。複数の漢方薬を同時に服用する場合には、成分の極量にも注意を払わなければなりません。
富国強兵により軍陣医学に傾倒し、負傷者への外科治療の必要性から、明治7年に西洋医学をもって日本の医学とするという『西洋七科の制』が制定され、日本における漢方医学は一時衰退してしまいました。しかし、対症療法というよりもその症状をあらわす体質の根本を解決しようとする漢方は、化学物質が氾濫する今の時代にあって、代替医療としても再び脚光を浴びてきています。一歩間違えれば毒となる漢方薬を、医師や薬剤師の説明なくして販売しても良いとする今回の厚労省の方針は、患者利益の観点からとても同意できるものではありません。使用して効果のある医薬品には、必ず副作用もつきまといます。薬物療法で最も重要なことは、むしろ副作用の管理といっても過言ではないのです。
24時間営業のコンビニで、すべての時間帯に対応するだけの「登録販売者」を配置することができるとは到底思えません。外国人の短期就労者が多く見受けられるコンビニで、公衆衛生上問題なく併用薬との相互作用や副作用についてのフォローも万全に風邪薬や漢方薬が販売されるなど、あり得ない想定です。現在でも、医薬品による副作用であることに気付かない症例は、数多く存在しています。また、事例の少ない副作用は見逃されて良いものではなく、事例が少ないからこそ広く一般に情報提供され、事故を未然に防ぐ体制をつくっていかなければならないのです。
相互作用や副作用の可能性のある医薬品を、ある意味野放しにすることは、医薬品の副作用をこれまで以上にチェックするために医薬品医療機器総合機構の職員を増員すると発表したばかりの厚労省の姿勢との整合性もつきません。医療費抑制につながるセルフメディケーションは、街かど薬局の薬剤師の存在なくして成立しません。単に利便性だけを追及して安易に医薬品の販売の規制を緩和することは、結果的に国民の健康を阻害することにつながります。厚労省が取り組むべきは、氾濫する医薬品や健康食品から国民を守るためのセイフティネットの構築でなければならず、国民をリスクにさらすことでは決してないはずだと、私は思うのです。
病医院に頼らずとも、街かど薬局で必要な医薬品を購入することができることは、膨らむ医療費を抑制する上でも重要な手段です。1997年に、胃・十二指腸潰瘍の殆どを外科的に手術することなく治癒率を格段にアップさせた胃酸分泌抑制剤「H2ブロッカー」が、医師の処方によらず薬局で購入できるようになったことは、セルフメディケーションに大きな革命をもたらしました。薬剤師として街かど薬局の店頭に立ち、商品名「ガスター10」の服用方法と留意点を必死に説明していた当時を、私も懐かしく思い出します。
ガスター10を筆頭にH2ブロッカーがスイッチOTC(処方箋医薬品からOTCになったもの)として街かど薬局で手に入るようになったことは、間違いなく国民に利益をもたらしたと言えますが、その代償として、服用管理が万全でなく副作用の被害にあわれた方々もまた少なからずいらっしゃいます。中でも、致死的予後を迎えられた方々にとっては、医師の管理なく、また薬剤師の管理も不十分なまま、簡単にH2ブロッカーを服用できたことが、果たして患者利益に資するものであったのかどうか?非常に悩ましく、スイッチOTCが抱える課題は今後も続く命題になっています。
街かど薬局の薬剤師であっても、当該医薬品を購入された方々の服用管理をすべて徹底することは、残念ながら困難です。H2ブロッカーに代表される「スイッチOTC」の販売は、そこに一定のリスクが生じることを、服用する側も承知の上での解禁であると認識しなければならないのです。そこで、今回の改正薬事法の適用に直面する時、名実ともに「コンビニ処方」がまかり通ることの是非を、私は考えずにはいられないのです。
市販の風邪薬を甘くみてはなりません。薬物アレルギーによるアナフィラキシーショックはもとより、緑内障や前立腺肥大を治療中の方々にとっては、風邪薬は諸刃の剣ともなりかねません。病院で加療中の患者さんが、風邪薬だけは市販のもので済ませようとする行為は、いまや否定できないし、あってしかるべき行動でしょう。だからこそ、風邪薬を販売する薬剤師は、お客様から必要な情報をお聴きして(引き出して)、お客様のセルフメディケーションに真に貢献するために、職責を全うしているのです。
翻って、街のコンビニで、薬剤師でない人の手によって風邪薬や漢方薬が販売されるとなると、事態はどうなるでしょう。果たして、「登録販売者」なる方がお客様のバックグラウンドにまで注意をはらい、必要な情報を得て、お客様の健康に寄与する販売をどこまで行うことができるでしょうか。特に、漢方薬については、風邪薬以上に注意を払わなければなりません。厚労省は、H2ブロッカーと比較して漢方薬の規制を緩和していますが、それは大きな間違いです。小柴胡湯など一部の漢方薬を除き、世の中全体が漢方薬には副作用がないと誤解されている風潮だからこそ、漢方処方の難しさを広く情報提供する必要が厚労省にはあるはずです。
例えば、誰もが知る「葛根湯」には、狭心症や心筋梗塞の既往歴のある人には原則投与してはならない「麻黄(マオウ)」という生薬が含まれています。街かど薬局の薬剤師は、葛根湯を販売する際には、そこまで注意を払わなければならないのです。頻尿などに用いられる「八味地黄丸」は胃腸障害を起しやすく、また婦人科用として用いられる漢方薬には、リウマチやアトピー性皮膚炎の患者さんには要注意の「桂枝(ケイシ)」という生薬が含まれているものもあるのです。これらはごく一例にすぎず、偽アルドステロン症やミオパシー、更には肝機能障害などの重大な副作用の事例は、漢方薬といえども実際に報告されています。複数の漢方薬を同時に服用する場合には、成分の極量にも注意を払わなければなりません。
富国強兵により軍陣医学に傾倒し、負傷者への外科治療の必要性から、明治7年に西洋医学をもって日本の医学とするという『西洋七科の制』が制定され、日本における漢方医学は一時衰退してしまいました。しかし、対症療法というよりもその症状をあらわす体質の根本を解決しようとする漢方は、化学物質が氾濫する今の時代にあって、代替医療としても再び脚光を浴びてきています。一歩間違えれば毒となる漢方薬を、医師や薬剤師の説明なくして販売しても良いとする今回の厚労省の方針は、患者利益の観点からとても同意できるものではありません。使用して効果のある医薬品には、必ず副作用もつきまといます。薬物療法で最も重要なことは、むしろ副作用の管理といっても過言ではないのです。
24時間営業のコンビニで、すべての時間帯に対応するだけの「登録販売者」を配置することができるとは到底思えません。外国人の短期就労者が多く見受けられるコンビニで、公衆衛生上問題なく併用薬との相互作用や副作用についてのフォローも万全に風邪薬や漢方薬が販売されるなど、あり得ない想定です。現在でも、医薬品による副作用であることに気付かない症例は、数多く存在しています。また、事例の少ない副作用は見逃されて良いものではなく、事例が少ないからこそ広く一般に情報提供され、事故を未然に防ぐ体制をつくっていかなければならないのです。
相互作用や副作用の可能性のある医薬品を、ある意味野放しにすることは、医薬品の副作用をこれまで以上にチェックするために医薬品医療機器総合機構の職員を増員すると発表したばかりの厚労省の姿勢との整合性もつきません。医療費抑制につながるセルフメディケーションは、街かど薬局の薬剤師の存在なくして成立しません。単に利便性だけを追及して安易に医薬品の販売の規制を緩和することは、結果的に国民の健康を阻害することにつながります。厚労省が取り組むべきは、氾濫する医薬品や健康食品から国民を守るためのセイフティネットの構築でなければならず、国民をリスクにさらすことでは決してないはずだと、私は思うのです。
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