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どこかで、音に狂わされて、音によって惑わされて。一瞬、僕は『無音』を感じた。僕の周りのモーターが一切動いていなかったし、風も吹いていなかった。家族は寝静まっていたから、そして、僕も動きを止めていた。精度は落ちるが、一瞬の無音。
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初めて無音を感じたのは、今から8年前。どっかの砂漠は、静寂を絵に描いたほどの静寂をたたえていた。その時。僕はドイツ人の女の子を誘ってタクシーを借りたんだった。何も無いところに連れて行くのに馴れているらしい運転手は、40分ほどでそこに連れて行ってくれた。
静かだった。生命の可能性を否定する静寂。均衡の世界。沈黙の世界。鉱物の世界。その他諸々による、その他諸々の事情により隔絶された世界。
何かの看板は説明に欠き、説明を欲しない輩はその辺の砂を踏みしめた。『疎』であること以外に選択肢があり得ないところであったが、『疎』以外の何らかの摩擦音を携え、僕らは足を踏み入れた。しかし、圧倒的な静寂。
あるべきものはそこに厳然と存在していたが、あるべきものでない僕は申し訳を抱えつつ、そこで奇妙といって言い分からない違和感を感じていた。軽く眩暈。軽い幻覚。
何も振動していない、完全なる無音が未知なる世界として、迫ってきた。僕は具合が悪くなった。
音の無い風以外に、僕らの足音以外に、誰かの笑い声以外に、そこらの鉱物以外に、
そこには何も無かったが、
そこには…、
僕の、輪郭があった。
どこかで、音に狂わされて、音によって惑わされて。一瞬、僕は『無音』を感じた。僕の周りのモーターが一切動いていなかったし、風も吹いていなかった。家族は寝静まっていたから、そして、僕も動きを止めていた。精度は落ちるが、一瞬の無音。
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初めて無音を感じたのは、今から8年前。どっかの砂漠は、静寂を絵に描いたほどの静寂をたたえていた。その時。僕はドイツ人の女の子を誘ってタクシーを借りたんだった。何も無いところに連れて行くのに馴れているらしい運転手は、40分ほどでそこに連れて行ってくれた。
静かだった。生命の可能性を否定する静寂。均衡の世界。沈黙の世界。鉱物の世界。その他諸々による、その他諸々の事情により隔絶された世界。
何かの看板は説明に欠き、説明を欲しない輩はその辺の砂を踏みしめた。『疎』であること以外に選択肢があり得ないところであったが、『疎』以外の何らかの摩擦音を携え、僕らは足を踏み入れた。しかし、圧倒的な静寂。
あるべきものはそこに厳然と存在していたが、あるべきものでない僕は申し訳を抱えつつ、そこで奇妙といって言い分からない違和感を感じていた。軽く眩暈。軽い幻覚。
何も振動していない、完全なる無音が未知なる世界として、迫ってきた。僕は具合が悪くなった。
音の無い風以外に、僕らの足音以外に、誰かの笑い声以外に、そこらの鉱物以外に、
そこには何も無かったが、
そこには…、
僕の、輪郭があった。
雨のない風のやたら強い時
対照的に、よく無音になる
あれは多分
自己確認の儀式か何かかもね
「し~ん…」とは、よく、言ったもんだ。