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OLYMPUS E-M1
OLYMPUS ZUIKO DIGITAL ED 14‐54mm
OLYMPUS ZUIKO DIGITAL ED 50‐200mm
OLYMPUS TG-2 Tough
SONY Xperia Z5
不安定な 大気の中を 走り抜けていく
つい先程まで 激しく降っていた雨は 止んでいた
携帯のナビが導いたのは
奥多摩湖を抜けていくルートだった
久しぶりに見た 奥多摩湖は
水を 欲し 無残な岩肌を見せている
前日の夜に思い立ち
僕は 山梨県 標高1250mのキャンプ地
一ノ瀬高原キャンプ場を目指していた
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だんだん 深い山間部に入り込んでいく
一ノ瀬 高橋というエリアに入ると
携帯のナビが 効かなくなっていることに気づく
僕は 進路を間違え
ちがう道に 入り込んだ様だ
だけど この道からも
行けるはずだ
そのまま 進んでいく
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なんて気持ちのいい道なんだろう
こんな 気持ちのいい道は
久しぶりだった
横には 道に沿って
小さな川が サラサラと流れている
強い雨に 洗い流された大気から
日の光が 周囲の緑も 集落の廃墟にも降り注ぎ
何もかもが 美しい
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しばらく進むと
三界万霊等という石碑が見えてくる
このエリア一帯が 結界になっている
そう感じた
後で この場所のことを調べると
やはり 同じことを感じる人がいる様だ
その感じ方は
人によって 違うらしい
ある人は 恐怖を感じ
引き返した方がいいと感じる場所
いい加減な気持ちで 入ってはいけない場所であり
カメラを向けることさえも 気が引ける
また ある人には 彼岸
日本人の仏教信仰に存在する
死んだ後 三途川(さんずのかわ)の向こう岸の世界
そんな 日本人の故郷の様な 魅力を感じる場所であった
僕にとって このエリアは
居心地の良い 懐かしさを感じる場所だった
そう 彼岸 という言葉が
僕にも理解できた
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廃墟や 古びた別荘等の集落
よく手入れされた 静かな白樺の森
川の流れの横の小さな祠
せせらぎが幾重も流れる場所を横目に進んでいく
東京都の水源地管理の作業員を乗せた車とすれ違った以外
他に人は見なかった
ダートの林道をしばらく進むと 通行止めのゲートがあり
道を引き返す
午後も過ぎ 僕はキャンプ場へ急いだ
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僕は
このエリアにいる時間
心地良さを あまりにも感じていたため
この地域のことが気になり
帰ってから しばらく調べ続けていた
一ノ瀬 高橋という地は
武田信玄の金鉱で働いていた人々の末裔の集落で
今は過疎化が進み 廃墟が多い
その入口には つつましやかな 金色山 放光寺があり
三界万霊等がある
三界万霊等とは 簡単に言えば
この世界の全ての霊
苦しみと救いの必要な者から
この世界で神とも言われる者まで
全ての霊への供養を示すものらしい
ちなみに
昔 金山の口封じのため 殺されたおいらん達の
たたりが恐れられている おいらん淵も
離れた場所ではあるが
一ノ瀬 高橋の地に存在している
僕は この結界に「呼ばれた」「呼んでくれた」
というインスピレーションがあった
その理解で 全て腑に落ちた
また もし機会があれば
もっと時間をかけ 丁寧に向き合いたい
そんな 場所となった
つづく
一ノ瀬 高橋集落 と 一ノ瀬高原キャンプ場
資料
一ノ瀬高橋の春駒 Wikipedia
三界萬霊 さんがいばんれい やさしい仏教入門