精神機能と能力開発:心理学―教育学―社会学

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ワーキングメモリ活動中の自己改善―ADHD研究・臨床のパラダイムシフト―

2012年08月10日 | 学術論文

<学術論文>
Fujita, H. & Maekawa, H. (2012)
Improving performance of children with ADHD through self-generating motivation during working memory:reciprocal influences between
 executive and motivational aspects.
Japanese Journal of Special Education, 49(6),713-727.
(藤田英樹・前川久男:注意欠陥/多動性障害児のワーキングメモリ活動中に自己生成された動機づけによる遂行改善―遂行制御と動機づけの相互影響―)

http://ci.nii.ac.jp/naid/40019220732 
オープンアクセス(刊行6ヶ月以降)
論文PDF>> http://blog.goo.ne.jp/hidefujita/d/20130826

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<要旨>

 ワーキングメモリとは、脳内で情報をオンラインで保持しつつ、その情報を操作する機能である。この機能はプランニングやシミュレーションなどの基盤となってお り、熟慮した計画的な行動を支えている。また、ワーキングメモリ活動中には、環境刺激に対する即時的な反応が留保されることから、ワーキングメモリの障害 は発達障害の1つである注意欠陥/多動性障害(ADHD)を説明するメカニズムの1つとしても挙げられていた。確かにADHD児のワーキングメモリは定型発達児よりも低成績であることが示されていた。しかしその一方で、ADHD児のワーキングメモリが報酬の動機づけや、成人に至るまでの発達的変化、コンピュータープログラムを使ったトレーニングなどにより改善することも示されていた。

 本研究では、あるADHD児は低負荷の言語性ワーキングメモリ活動を行うと、それ自体が認知的刺激となり、自己生成的に動機づけが生じて課題遂行を改善することが示された。適応的なADHD成人はこの自己生成動機づけを利用することを自然と身に付けているのかもしれない。コンピュータープログラムを使ったADHD児のワーキングメモリ・トレーニングにおいても、この自己生成動機づけが作用していると思われる。しかし他のADHD児は逆に、ワーキングメモリ活動を持続させることが負荷となり、遂行が低下した。このことは、ADHDの実行機能と動機づけが相互影響していることを示唆している。

 現在のADHD研究において、ADHDに対して実行機能と動機づけは独立した2要因とされている。それに対して本研究では、ADHDの認知的な中核メカニズムに関して、実行機能と動機づけの相互影響という新たなパラダイムが示唆された。


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