動物の色、形、模様、行動。
みんな理由がある 動物画家 木村しゅうじ
地球上には現在、3000万~5000万種、あるいはそれ以上に生物が存在すると考えられています。
35億年にも及ぶ進化の歴史の中で、生きものたちは実に多様に分化してきました。
こうした生物の多様さは、そのまま、生きものたちが暮らす環境の多様さでもあります。
今回は、哺乳類から鳥類、両性、爬虫類、昆虫にいたるまで、
その姿と行動を描いてきた動物画家、木村しゅうじさんにお話しをうかがいました。
動物画家になろうと思われたのには、何かきっかけがあったのですか?
ぼくは最初は、風刺漫画を描いていたんです。
そうしたら、木村さんの漫画には必ずイヌやネコがでてくるね、なんて言われましてね。
それで動物をいくつか描いてみたんですが、どうも自信がなくてね。
それで動物学者の小原秀雄さんの本を読んでみたら、非常にわかりやすく書いてあるんで、
その頃ちょうど雑誌のルポがあったので、小原さんのところへ行ったんです。
それで動物の絵を中心に漫画を描き始めたんですが、
そのうち漫画じゃなくてちゃんとした絵を描きたいと思うようになった。
35~36歳くらいのときかな。当時、動物画を描く人は日本にほとんどいなかった。
今はけっこういますけど、鳥だけとか、植物専門とか、甲殻類しか描かないとかね、
専門に分かれちゃってますから、哺乳類でも魚でも鳥でも何でも描くのは、ぼくくらいじゃないかな。
ぼくが描き始めた頃は、一人の絵描きがすべての動物を描けなきゃならない時代でしたから。
特に描きたい動物とか、逆にこれは描きにくい、といったものはありますか?
ないです。どんな動物にも興味があるからね。
ぼくのスケッチブックは、ゾウの絵の次にカブトムシが描いてあったり、
その次には魚がいたり。だけども、みんな何かやっている、動きのある絵になってます。
そこは共通していますね。
ぼくは動物の、生き生きとした生活のようすを描きたいんです。
だから、野生動物を見に、ずいぶんフィールドに出かけました。
タヌキが出たなんて聞くとすぐ飛んでいって、一晩二晩泊まり込んだり。
北海道まで行って雪の中で一日中、タンチョウを描いてたこともあります。
羽繕いしたり、走りだしたから飛ぶか、と思うとやめちゃったり、そういう行動を何ページも描きました。
首をぎゅっと前に曲げると、頭の上の赤いところが倍くらいの大きさになるとかね。
オスが一回鳴くと、それに合わせてメスが2回鳴くでしょ。
寒いからオスのくちばしから白い息がポッと出る。メスのくちばしからはポッポッと2つ出る。
とても面白いです。
アフリカに行ったときには、ゾウが鼻を使ってどんな行動をとるか、
観察したものを全部、スケッチしましたよ。
250カットくらい描いたかな。生まれて半年くらいまでの子ゾウは、
鼻を使って水を飲むことができないんですよ。
だから口をじかに水につけて、鼻をもちあげて飲む。
動物のスケッチというと、子供の頃、動物園で写生会があったのを思い出します。
動物園は、自然の姿ではない面がありますから、あまり好きじゃないんだけれど、
先日なくなった獣医の増井光子さんが多摩動物園にいた頃はよく見に行きましたね。
増井さんが動物園の中を歩いていて、チンパンジーの檻の近くまで来ると、
チンパンジーが怒り出すんですよ。
注射されて痛い思いをしたのを覚えてるのね。それで、増井さんめがけて小石を投げつけるんです。
毎日のことだから増井さんはぱっとよける(^^)。
ぼくはチンパンジーの、その一連の動きをスケッチしましてね。
小石をさがして手で土をほじくって、それから肩の毛をびゅーっと立てて、
狙いをつけて、走って行って、だーんとアンダースローで投げる、
それからケージの中をかけずりまわって、
高いところにある鉄の扉にびょーんと飛び上がってぱあんと叩くの。
それで完結。時間にすれば何秒かだけど、一連の動くを見て、要点をとらえると10枚くらいの絵になった。
増井さんには、動物の解剖にも呼んでもらってね。
動物園では動物が死ぬと死因を調べるために解剖するでしょ。
今日はムササビです、なんて電話をくれるんです。
出かけていって脇で、見てると、増井さんが、足のこの腱はここにつながっていて、
こう動くんだとか、教えてくれるわけ。
動物園にあった標本の頭骨も、片っ端から描きましたね。
WWFマガジンより
みんな理由がある 動物画家 木村しゅうじ
地球上には現在、3000万~5000万種、あるいはそれ以上に生物が存在すると考えられています。
35億年にも及ぶ進化の歴史の中で、生きものたちは実に多様に分化してきました。
こうした生物の多様さは、そのまま、生きものたちが暮らす環境の多様さでもあります。
今回は、哺乳類から鳥類、両性、爬虫類、昆虫にいたるまで、
その姿と行動を描いてきた動物画家、木村しゅうじさんにお話しをうかがいました。
動物画家になろうと思われたのには、何かきっかけがあったのですか?
ぼくは最初は、風刺漫画を描いていたんです。
そうしたら、木村さんの漫画には必ずイヌやネコがでてくるね、なんて言われましてね。
それで動物をいくつか描いてみたんですが、どうも自信がなくてね。
それで動物学者の小原秀雄さんの本を読んでみたら、非常にわかりやすく書いてあるんで、
その頃ちょうど雑誌のルポがあったので、小原さんのところへ行ったんです。
それで動物の絵を中心に漫画を描き始めたんですが、
そのうち漫画じゃなくてちゃんとした絵を描きたいと思うようになった。
35~36歳くらいのときかな。当時、動物画を描く人は日本にほとんどいなかった。
今はけっこういますけど、鳥だけとか、植物専門とか、甲殻類しか描かないとかね、
専門に分かれちゃってますから、哺乳類でも魚でも鳥でも何でも描くのは、ぼくくらいじゃないかな。
ぼくが描き始めた頃は、一人の絵描きがすべての動物を描けなきゃならない時代でしたから。
特に描きたい動物とか、逆にこれは描きにくい、といったものはありますか?
ないです。どんな動物にも興味があるからね。
ぼくのスケッチブックは、ゾウの絵の次にカブトムシが描いてあったり、
その次には魚がいたり。だけども、みんな何かやっている、動きのある絵になってます。
そこは共通していますね。
ぼくは動物の、生き生きとした生活のようすを描きたいんです。
だから、野生動物を見に、ずいぶんフィールドに出かけました。
タヌキが出たなんて聞くとすぐ飛んでいって、一晩二晩泊まり込んだり。
北海道まで行って雪の中で一日中、タンチョウを描いてたこともあります。
羽繕いしたり、走りだしたから飛ぶか、と思うとやめちゃったり、そういう行動を何ページも描きました。
首をぎゅっと前に曲げると、頭の上の赤いところが倍くらいの大きさになるとかね。
オスが一回鳴くと、それに合わせてメスが2回鳴くでしょ。
寒いからオスのくちばしから白い息がポッと出る。メスのくちばしからはポッポッと2つ出る。
とても面白いです。
アフリカに行ったときには、ゾウが鼻を使ってどんな行動をとるか、
観察したものを全部、スケッチしましたよ。
250カットくらい描いたかな。生まれて半年くらいまでの子ゾウは、
鼻を使って水を飲むことができないんですよ。
だから口をじかに水につけて、鼻をもちあげて飲む。
動物のスケッチというと、子供の頃、動物園で写生会があったのを思い出します。
動物園は、自然の姿ではない面がありますから、あまり好きじゃないんだけれど、
先日なくなった獣医の増井光子さんが多摩動物園にいた頃はよく見に行きましたね。
増井さんが動物園の中を歩いていて、チンパンジーの檻の近くまで来ると、
チンパンジーが怒り出すんですよ。
注射されて痛い思いをしたのを覚えてるのね。それで、増井さんめがけて小石を投げつけるんです。
毎日のことだから増井さんはぱっとよける(^^)。
ぼくはチンパンジーの、その一連の動きをスケッチしましてね。
小石をさがして手で土をほじくって、それから肩の毛をびゅーっと立てて、
狙いをつけて、走って行って、だーんとアンダースローで投げる、
それからケージの中をかけずりまわって、
高いところにある鉄の扉にびょーんと飛び上がってぱあんと叩くの。
それで完結。時間にすれば何秒かだけど、一連の動くを見て、要点をとらえると10枚くらいの絵になった。
増井さんには、動物の解剖にも呼んでもらってね。
動物園では動物が死ぬと死因を調べるために解剖するでしょ。
今日はムササビです、なんて電話をくれるんです。
出かけていって脇で、見てると、増井さんが、足のこの腱はここにつながっていて、
こう動くんだとか、教えてくれるわけ。
動物園にあった標本の頭骨も、片っ端から描きましたね。
WWFマガジンより