
カオジロオタテガモ
100年で10分の1に減少
カオジロオタテガモの生息環境は、草地や荒地、半砂漠のような景観の中に点在する、
浅い湖沼群である。
水質は、塩水であったり、アルカリ性が高い場合が多いが、そのような水を、このカモは好むらしい。
草の茂った水辺で巣を作り、水に潜って植物やその種、小型の甲殻類やプランクトンなどを食べている。
体の後ろの方についている後足は、歩くには不便だが、泳ぎには非常に適しており、また、ぴんと立った短い尾も、
水の中で舵の役目を果たす。水面、水中での暮らしに、高く適応した鳥なのだ。
このような潜水ガモの特徴は、海に生息するカモ類に比較的多く見られる。が、カオジロオタテガモが主にすんでいるのは、
乾燥地の多い開けた内陸部。中央アジアでは、季節や天候によって、生息地の浅い湖や沼が干し上がってしまうことも、
しばしばあるというから、このような場所での、水への高い適応、進化は、ある意味で驚くべきものといえるかもしれない。
カオジロオタテガモは、20世紀初頭に10万羽がいたとされる。それが、この100年間で1万羽以下まで減少した。
灌漑農業の拡大などにより、水辺の自然環境が広く失われたことが、主な原因である。
さらに、狩猟や干ばつ、汚染、人が持ち込んだ外来種アカオタテガモとの交雑などが、この鳥を追い詰めてきた。
中央アジアからヨーロッパに広がっていた分布域は、今や細かく分断され、姿を消した国も10ヶ国以上にのぼる。
ヨーロッパでは10年ほど前から、保護プランが具体化され、一部ではその成果が出始めているが、
アジアでは調査も十分でなく、保護対策の遅れも目立っている。狩猟規制のほか、湖の水質や水位の維持を視野に入れた、
環境保全が必要とされている。
カオジロオタテガモ
分類:カモ目カモ科オタテガモ属
学名:Oxyura leucocephala
英名:WHITE-HEADED DUCK
分布:中央アジア、地中海沿岸、インド亜大陸北部
WWFマガジンより