丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

BALLAD・名もなき恋のうた を観た!

2009年10月25日 | レビュウ
 小学生の真一は仲良しの女の子をイジメグループから守れないようなヘタレ小学生。自分の勇気のなさにほとほと嫌気がさし、「川上の大クヌギ」という巨木に「勇気を下さい」とお願いする日々を送っている。
 ある日大クヌギの根方から土に埋められた古文書を見つける。そこに書いてある文章を読んでいるうちに真一はタイムスリップ。天正二年、戦国時代ど真ん中へタイムスリップしてしまう。
 そこで出遭ったのは春日城の侍大将・井尻又兵衛(草さぎ剛)。又兵衛の世話になりながら次第に打ち解けていく二人。
 又兵衛と領主の娘である廉姫(新垣結衣)は幼馴染みであり、互いに心惹かれあっているものの、身分違いのためにその想いを表に出せずにいた。
 そうこうしているうちに隣国の武将が廉を嫁に欲しいと申し出る。この婚儀に反対すれば春日の命運は尽きるのではないか。誰もが不安に思う中、廉の父は心を決める。
「どうせ真一の生きる時代まで我らの名は残ることはないのだ。ならば思うとおりに生きていこうではないか!」 
 そして廉の縁談を断ってしまう。激昂した隣国の武将はついに春日に攻め込んでくる!

……と、粗筋紹介はこのへんまでにしようかの(笑)。

 原作は「クレヨンしんちゃん」劇場版であります「嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦」。これは知る人ぞ知る名作という事で、私も弟に勧められテレビ放映時に見ました。確かに、「しんちゃん」と侮ってかかると痛い目にあいます(笑)。そのリメイクかつ実写版という事で、まあ楽しめるだろうとは思っていました。正直、それほど興味のある映画ではなかったのですが、亭主が映画券(なんでも観れるというやつ)を購入していてその期限が今月中だったという事、そして子供も一緒に観られる映画という事でこの映画をチョイスしたのであります。

 まずはいきなり総合点といきましょうか~! 合格です! とっても良く出来た映画でしたよ、うんうん。
 井尻又兵衛役の草なぎ君がイイ! です。この映画の撮影後に例のフリ○ン事件があったんですよね。あれがきっかけで公開が危ぶまれたようですが、公開されて良かったと思える映画でした。
 身分違いの廉姫への恋心をとっても繊細に表現していました。その可愛らしい表情から「鬼井尻」に切り替わる瞬間などは本当に見事です。巧い役者だなあ。ホンマに歌辞めて、こっち一本にすべきじゃないですか~(笑)。話の展開はそれほどびっくりするようなものでもありませんが、又兵衛の男気はしっかり涙腺を刺激してくれます。

 特筆すべきは合戦シーンの時代考証でしょうな。アニメの段階から「めちゃめちゃマニアックな合戦シーン」と評価されていましたが、確かに大河ドラマなどでお馴染みの合戦シーンとは明らかに異なります。エキストラの数も相当ですし、使っている武器やその使い方など見た事がないです。一言でその違いを言い表すのは難しいですが、「土臭い」「泥臭い」「肉の戦い」「生活感」が濃い! 
 例えば、引き上げの合図が聞こえてくると城攻めをしていた敵が「あ~、今日はここまでか~。おら、帰るぞ、帰るぞ!」みたいな(笑)。命賭けてるサラリーマンみたいな感じとでもいいましょうか。ほんでもって城を守る側も「ほらぁ、さっさと帰れよ」とかなんとか言いながら、槍のお尻(穂先じゃない)で相手を押し帰したりして(笑)。「忍たま乱太郎」で霧ちゃんが戦場でお弁当売っていると足軽が弁当買いに来るみたいな空気があって妙なリアリティーを感じさせます。足軽や雑兵にとって戦とは「お仕事」なんだなぁと再確認です(笑)。

 良質な、どちらかと言うと大人向けのファンタジーです。なのに、いま一つ客が入ってないんじゃないですか? 今日なんか、お客の数は子供連れがうちを含めて二組、カップル一組、トータル十名ほど。いくらインフルエンザの影響があるとは言え、土曜日の夕方ですよ? 

 何が駄目なんだろうなぁ……と、帰り道に亭主と検討してみました。

原因其の一:
面白かったけど、全体的に地味というか派手さがなかった。ストーリーテラー的存在であるヘタレ小学生真一とそのお母ちゃんとお父ちゃんの存在感がいま一つ薄かった。アニメでは野原一家はもっと派手に動き回っていましたが、川上一家は比較的大人しかった。せっかくタイムスリップしてきたのだから、もう少し派手に動いても良かったかなぁ……。その分、笑いドコロとかお楽しみ感が少ないような気がします。

原因其の二:
好みの問題もあるけれど、廉姫役の新垣結衣が少々オーラ不足だったなあ。可愛い女優さんですが、目力に欠けるんですよ。廉姫は隣の大国の武将を一喝するような度胸と意志の強さを持っている、そして又兵衛を心から愛する情熱を持った姫様なんですが、ガッキーからはそこまでのパワーとか貫禄を感じないんですなぁ。他の役者が達者なだけに、余計影が薄く感じてしまう。女子高校生の役なら問題ないのですが、過酷な時代に生きる女を演じるにはまだ早いという印象は拭いきれませんでしたねぇ。
 いっそ、芸達者な無名の新人なんかを登用した方が良かったんじゃないですかねぇ……。

 しかし、総合点はさっきも書いた通り合格ですよ。七十点は下らない。そうだな、八十点くらいかな。

 ちなみに私が一番ウルウル来たのは、エンドロールでした。キャストやスタッフの名前がロールアップしている横で、真一が携帯やデジカメで撮影した動画や写真が流れます。その人たちを見ていると、「ああ、この後、この人達は滅びていくのか。でも確かにこの人達は生きてきたのだなぁ……」としみじみ感じさせられるのです。勿論知った顔ばかりの役者さん達ばかりなのに、まるで昔の記録映画を観ている時のような、懐かしさと無常観を噛み締めました。
 ふと思い浮かんだ俳句。
「なつくさや つわものどもが 夢のあと」
 何百年前にこの場所で確かに生きてきた人達がいる。そして時を越えて、今同じ場所に自分は立っている。そんな不思議な、少し胸が痛くなるような感慨を感じさせてくれた映画でした。

 なんだ、結構ベタボメじゃん(笑)。 






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