丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

眠れる細胞の見る夢は……

2014年04月10日 | 四方山話
 STAP細胞……SMAP細胞かと最初は思ってしまいましたが(笑)。昨日は一日中その名前が飛び交っていました。職場のデイサービスでもフロアのテレビでは件の美しきリケ女が涙を流しながら会見をし、雨嵐の如きフラッシュにさらされている姿に、利用者さん達が街頭テレビよろしくテレビの前で真剣に見ていました。
「可哀そうになぁ。あんなんあの子のせいだけちゃうで」
「あの子の発見に周りが『ノーベル賞もんや』とかなんとか舞いあがって、先走って不完全な論文出させたんやろ」
「別嬪さんやから余計に注目されてんなぁ」
……というところが利用者さんの大方の感想のようでしたが、まあ、世間の一般的な見方もさして変わらないのではないかと思います。

 そんな騒動のせいでしょうか。昨夜はなにやら不思議な夢を観ました。




 暗い部屋の中。畳の上にツノの折れたカブトムシが死んでいました。

 ああ、こんなところに置いておくのもなんだから、外に出そう。

 そう思って、庭に面しているガラス戸を開けて外に出ます。砂が敷き詰めてある狭い庭の隅に、なにやら動物の骸がありました。大量の蟻がたかっていて、みるみるうちにその骸は小さくなっていきます。

 このカブトムシもアリに食べられるのがいいだろうと思い、その骸の傍にカブトムシを置きました。

 ふと、足元を見ると、三十センチ四方くらいの広さで地面がえぐれていました。そしてその中から、大きな、それはそれは立派なカブトムシが砂をかき分けながら出てきました。

 その後からもう一匹。今度は更に立派なクワガタが力強く砂をかき分けながら出てきました。大きな顎にはまだ脱皮の名残の皮が残っていて、そのクワガタは両手でそれをゆっくりと脱ぎ捨てました……。


 
 なんだかとても不思議な夢でした。朝、洗面所で顔を洗いながらその夢の事を思い出し、その意味についてぼんやりと思いをはせていました。

 カブトムシやクワガタなどの甲虫はスカラベといって、ユング曰く生命の再生の象徴だそうです。暗い畳の部屋で死んでいる生命、アリに食べられ自然に帰って行く生命、そして力強く蘇る新しい生命。生命のサイクルはそういうものだと示唆されているような気持になります。

 本来の生命の辿るべき道を通って成長した細胞を、人の力によって新たな形に変貌させる。

 確かに医学的には非常に大きな意味のある研究ではあります。その技術によって克服できる難病も少なくありません。

 しかし、死は本当にそこまで忌むべきものなのでしょうか。

 死んだスカラベはアリに食べられて自然に帰り、また別の命となってこの世に生まれる。それは創造主によって作られた完全な生命のリングであり、永遠に命がこの世界に存在するためのシステムではないのでしょうか……。

 


 つかみどころのない夢と思索にふけりながら、新聞に乗っている美貌の人の顔を眺めるのでありました……。



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