今日は一日変な天気だった。桜が咲いているのに、なんだかとっても寒くて、風も強くて、お日様は照っているのに、時折雨がぱらついて……。そんな天気の中、学童が休みだったので家にいるハメになったチビ子を連れて、訪問リハビリのお仕事へ出かけた。
仕事先に子供を連れて行くことは年に何度かある。学童や保育所というのも、そうそう融通の利くものでもないのが現実だ。幸い、現在の訪問先は老人ホームなので、チビ子はスタッフルームで時間を潰すことが出来る。いつも本を何冊か持って行って、大人しく過ごしてくれるので母ちゃんは大助かりなのだ。(チビ太郎ではこうは行かないからね~)
チビ子を乗せて移動している最中、パラパラと雨が降ってきた。
「珍しい天気やなぁ。お日さん照ってるのに、雨降ってる……」
チビ子は興味深げに窓の外を見ている。金色の光の中を静かに降る雨は、なにかしら特別な魔法がかかっていそうだ……。
「キツネの嫁入りって言うねんで」
「ふぅん」
そんな他愛ない会話を交わしながら、車は住宅街の細い路地へ入っていく。ゆっくりゆっくり徐行運転しながら、見通しの悪い角を曲がって……。
「あ、タヌキ」
一匹のタヌキが道の端っこにポツネンと佇んでいる。
「ほんまや、可愛い~!」
茶色い、ホワホワにふくらんだ、でも少し小柄なタヌキが車の方を見ながら、逃げるでもなく、じっとこっちを見つめている。
思わず車を止めて、タヌキに見入った。
タヌキと目が合ったような気がした。怖がるでもなく、怒るでもなく、じいっと見つめている。
しばらくしてタヌキはゆっくり溝の中に入った。逃げるのかなと思いきや、上半身を道に乗り出しながらやっぱりコッチを見ている。
なんだろう、不思議な目の色。哲学者のような、静かで深い目。私達を見ているようで、実はもっと遠くを見ているようにも思えた。タヌキと私達の間に流れる、不思議な時間……。
とはいえ、いつまでも道の真ん中で車を止めている訳にも行かず、ゆっくりとアクセルを踏んだ。タヌキの姿は後ろへと消えていった。
今日の雨にはやっぱり魔法がかかっていたのかもしれない。さしずめ、「キツネの嫁入り」ならぬ、「タヌキの婿入り」。
仕事先に子供を連れて行くことは年に何度かある。学童や保育所というのも、そうそう融通の利くものでもないのが現実だ。幸い、現在の訪問先は老人ホームなので、チビ子はスタッフルームで時間を潰すことが出来る。いつも本を何冊か持って行って、大人しく過ごしてくれるので母ちゃんは大助かりなのだ。(チビ太郎ではこうは行かないからね~)
チビ子を乗せて移動している最中、パラパラと雨が降ってきた。
「珍しい天気やなぁ。お日さん照ってるのに、雨降ってる……」
チビ子は興味深げに窓の外を見ている。金色の光の中を静かに降る雨は、なにかしら特別な魔法がかかっていそうだ……。
「キツネの嫁入りって言うねんで」
「ふぅん」
そんな他愛ない会話を交わしながら、車は住宅街の細い路地へ入っていく。ゆっくりゆっくり徐行運転しながら、見通しの悪い角を曲がって……。
「あ、タヌキ」
一匹のタヌキが道の端っこにポツネンと佇んでいる。
「ほんまや、可愛い~!」
茶色い、ホワホワにふくらんだ、でも少し小柄なタヌキが車の方を見ながら、逃げるでもなく、じっとこっちを見つめている。
思わず車を止めて、タヌキに見入った。
タヌキと目が合ったような気がした。怖がるでもなく、怒るでもなく、じいっと見つめている。
しばらくしてタヌキはゆっくり溝の中に入った。逃げるのかなと思いきや、上半身を道に乗り出しながらやっぱりコッチを見ている。
なんだろう、不思議な目の色。哲学者のような、静かで深い目。私達を見ているようで、実はもっと遠くを見ているようにも思えた。タヌキと私達の間に流れる、不思議な時間……。
とはいえ、いつまでも道の真ん中で車を止めている訳にも行かず、ゆっくりとアクセルを踏んだ。タヌキの姿は後ろへと消えていった。
今日の雨にはやっぱり魔法がかかっていたのかもしれない。さしずめ、「キツネの嫁入り」ならぬ、「タヌキの婿入り」。
ラッキータヌキ!
……だったら良いなぁ(笑)。
とりあえず、化かされなくてよかったです