Sound of Summer

　夏が来た……。まるで風呂場のような重苦しい重量をもった熱さと湿度。肌の産毛がちりちり縮こまってきそうな日差し。ふくらはぎが妙にだるくて重くて、歩く度に活気が足の裏から地面に逃げて行くような気がする。とにかく私は夏は嫌いだ。にも関わらず、我が家のチビ共ときたらクーラーをつけたがらないので、灼熱地獄の中、扇風機のみで夏をやり過ごすというのがここ近年の我が家の習わしである。

　あんまりにも暑いので、当然家中の窓は開け放たれていて、扇風機がブンブン回っている。暑さのせいでやたら眠い。そんでもってついつい畳の上で寝っ転がってぼんやりぐったりと過ごす時間が長かったりするのだ。

　夏の住宅街は静かである。あんまりにも暑いから他の家はみんな窓を閉めてクーラーをかけているのだろう。表を歩く人もあまりいない。ぼんやりと天井を眺めてながら粘っこい風に交じって聞こえてくる音に耳を澄ます。

　鳥のさえずり。

　虫の羽音。

　高いところを飛んでいる飛行機。

　自転車が走って行く。

　どこかの犬の声。

　廊下を歩くコマチの鈴。

　ご近所さんのガレージから車が出て行く。

　また鳥の声が横切っていく……。

　カーテンが風に吹かれて、畳に擦れるかすかな音。

　玄関先の楓の葉が静かにささやいている。

　沁み入るようなセミの声……。



……………はっ？！　いつの間にやら、寝てた。