丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

ベガーズ・オペラを観た!

2008年02月18日 | レビュウ
ベガーズ・オペラ
 出演:内野聖陽・島田歌穂・笹本玲奈・高嶋政宏・森公美子・村井国夫・橋本さとし 他。
 演出:ジョン・ケアード


 ベガーズ・オペラに行って参りました。久しぶりのミュージカル♪に心ウキウキの三時間でございました。
 さて、概要をサラリと説明しますと、劇場全体が18世紀のイギリスはロンドンの芝居小屋という設定になっております。で、その劇場に乞食であり詩人であり演出家であるトム(橋本さとし)率いるベガーズ(乞食達)劇団が「旗揚げサヨナラ講演」をぶち上げに登場してくるのです。ですから物語は厳密に言うと劇中劇。
 さて劇中劇の内容ですが、マクヒース(内野)は追いはぎ軍団のキャプテンを務める色男で女たらし。あちこちで女をひっかけて結婚を約束するという超いい加減な男。そのマクヒースにひっかかったのがポリー(笹本)という一見純情そうな娘。すっかり結婚したと思い込んでいるが、なんのことはない、騙されているだけ。ポリーの両親(高嶋・森)は大激怒の末、マクヒースを絞首刑にしてしまうために密告、牢獄へと送り込む。さて、牢獄の看守(村井)の娘ルーシー(島田)は、以前マクヒースが投獄された時にマクヒースに恋してしまい、子供まで宿してしまっている。マクヒースを罵りながらも、またしても彼の口車に乗せられてメロメロ。挙句に脱獄までさせてしまう……。
 ルーシーとポリーの恋の行方、そしてマクヒースの運命はこれ、如何に?!

……そんな内容です。これ以上はネタバレになるので概要はここまでにしておいて、さてさて、感想と参りましょうか。

 舞台美術は三階建ての劇場を模してあるので大掛かりに見えますが、劇中での場面転換は一切ありません。色々な小道具、大道具を利用して様々な情景を作り上げていきます。例えば机とベンチとトランクを重ねて馬車に見立てたりして、とてもユニークなセットと場面転換です。ジョン・ケアードと言えば何と言っても「レ・ミゼ」のイメージが強いので、今回も物凄い大仕掛けの舞台を想像していたのですが、なんのなんの。いい意味で期待を裏切ってくれました。
 そして、俳優人がなかなか上手い。プロ相手に上手いというのは失礼な表現かもしれませんが、レベルにムラがないように思いました。大きな舞台の時って、時々俳優によって声質やら発声やらで、浮いてしまう人がいるのですが、今回は目だって誰が……というのはなかったですね。
 特筆すべきはやっぱり森公美子と島田歌穂の上手さ! 突出してます。森さんはさすがの歌唱力で綺麗な可愛らしいソプラノから、ウシガエルも真っ青なバアサマ声まで、軽々と歌いこなしています。ほんと、軽々と。凄いっす。そして、歌穂さん! 歌での表現力はさすがとしかいいようがない。演技力は勿論、声の表情や声色のバリエーションの多さといい、歌唱力といい、優秀なミュージカル女優が増えたとはいえ、ここまでのレベルの女優さんはそれほど多くはないでしょう。
 そしてマクヒースの内野さん! 笑えます。「風林火山」の山本勘助とは真逆のキャラクターを、まぁ、これが楽しそうに演じておられる(笑)。舞台上でのディープキスの数は数え切れず、娼婦相手のマグワイ(笑)シーンもあったし、歌っている最中のなんともスケベエな腰の振り具合……。これでもか~! という程のエロエロ・種馬ぶりでした。
 そしてなんといっても、幕間のサービスの良さ! 二十分と十分の休憩が入ったのですが、いずれの休憩時間もベガーズが観客席に下りてきて、お客さん達とコミュニケーションを取ってくれるのです。それも二階席も三階席も! これはとてもお買い得でした。客いじりしてくれる芝居は増えてきたけれど、普通は一階席だけだもんね~。
 てな感じで、かなり楽しめる舞台でした。

だがしかし!

 これでは終らないのがちえぞーのレビューなのでございます(笑)。辛口なコメントも書かないと講評の意味がないでしょう。
 まず、一番惜しいと思ったのは、音楽劇なのに音楽のインパクトがない事でしょう。一曲一曲を取って聴くと、決してマズくはないのです。ハーモニーも綺麗し、音響自体もソフトな感じにしてあって、その点に関しては「レ・ミゼ」よりも耳障りはいいくらい。
 しかしながら、観終わった後、反芻してみるに「テーマ」というべきメロディーが頭に残っていないのですよ。普通ミュージカルやらオペラやら観ると、必ずテーマである旋律は頭にこびりついているものなんですがね、びっくりするくらい今回は記憶にない。
 その原因は恐らく、ソロの曲が少ないことじゃないでしょうか。重唱が多いのですが、一つの旋律をハモるのではなく、異なる旋律を幾つか同時に歌うという手法(対位法っていうの?)がかなり多い印象がありました。役者の歌唱力が高いのでハーモニーとしてはとても綺麗なんですが、私としては溶け合いすぎて結局歌詞の内容も、印象的なメロディーも聞き取れなかったように思います。なんといってもミュージカルですからねぇ。音楽が印象に残らないというのは如何なものでしょう。
 そして、もう一つ。オチが弱い。ネタバレになるので詳細は記述しませんが、「え? それで終わりなん?」というような感じで、なし崩しで芝居が終ってしまうのですよ。いや、多分イギリスでなら通用するオチなのだと思うのです。なぜなら18世紀のイギリスの世相をかなり痛烈に風刺している作品だから、イギリス人が見たら苦笑いして終るオチなのです。でも、如何せん日本人ですからねぇ、観客が。その風刺というかアイロニーがピンとこないのですよ。ついでに個人的にはイギリス人の風刺のセンスって、ちょっとついていけない部分があるし(モンティ・パイソンなんか、とてもついていけないもん、私)。日本人向けに補足が必要な気がします。
 おまけのいちゃもんは、芝居の前半、役者がよく噛んでました(笑)。寒かったからでしょうか。内野さんも歌穂さんも噛んでましたね。

 さんざん文句を言いまくってますが、でも、面白かったんですよ! 今日の観客はなんだかノリが悪くて、「ここは拍手やろ?!」というところで拍手が無かったりで、役者さんが可哀想でした。舞台でノリの悪い客を見るほど辛いものはないんですってば! で、後半になるにつれて、やけくそのように拍手をでかい音で鳴らしまくり、カーテンコールでは「ブラボー!」と叫びまくってやりました。
 皆さん、もっとノリましょう!! 
 
 



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2 コメント

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うわぁぁ行きたかった!! (アクア)
2008-02-20 01:40:13
ちえぞーさん,大変お久しぶりでございます。
お元気ですか?鬼平&斬九郎&山南ファンの
アクアです~。(某bbsで違う人がこのハンドル
ネームを使っていたので変えるべきか悩み中)

生内野を!ベガーをご覧になったのですね!!

エロエロ内野は,歌はヘロヘロじゃなかった
ですか??(エリザベートやマクベスでは一寸
聞くに耐えなかった。大好きなんですけどね)
DVDでしかベガー見た事ありませんが確かにインパクト
はないかも。強いて言うならエロ内野なんですかね?
途中で寝てしまったし。やはり舞台は生が一番という
事で。興奮の余り長文失礼しました。。
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うわぁぁお久しぶり!! (ちえぞー)
2008-02-20 21:56:38
>アクアさま
めっちゃ久しぶりですやん
お元気でしたか?

生内野ね、歌はまぁまぁ。めちゃ下手!って事はないけど、いま一つパンチがない声でした。ちょっと芯がないというか、見た目よりも優しい声質だったかも。腰は色っぽいけど、歌には色気はないかな、正直なところ。
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