てふてふ

　昨年の秋、ベランダで育てていた野菜にくっついていたアオムシを、虫かごに入れて飼うことにした。すぐに動かなくなったので死んだのかと思ったのだが、なんとさなぎになっていた。……そんな話を書いたのは昨年の冬だったろうか。
　その件のアオムシは寒い冬を虫かごの蓋の裏にぶら下がって越していたのだった。暖かくなって来たし、そろそろ羽化するかも……。そう思って蓋を開けて下駄箱の上に置いていたのだが、事情を知らない亭主が蓋をして、ご丁寧に窓際に片付けてしまった。
　目につくトコロにおいてあれば気にもするけど、視界の外におかれるとその存在すらすっかり忘却の彼方へ……といった感じだ。すっかり忘れてしまっていた。
　そして、ついさっき。「そう言えば……。」と思い出し慌てて中を見たら……。

が～ん

　見事に悪い予感は的中。アオムシは黄色い蝶々に見事な変身を遂げ、そして力尽きていた。せっかく長い冬を越えて蝶々になったのに、一度も空を飛ぶ事もなく、花の蜜を吸う事もなく犬死（蝶々だけど）させてしまった。
　しまったぁ！蓋を開けて、外に置いてやるべきだった！！……というか、すっかり忘れていたよ。後悔先に立たず……。
　けっこうショックを受けて嘆いていると、チビ子がやってきてその事実を目の当たりにして大泣きを始めた。

　ごめんね、蝶々とチビ子～。母ちゃんの不注意だったよ。もっと気を配ってやるべきだったね。
　いやぁ、やっぱり忙しい我が家では当分生き物は飼えそうにありませんな。

　蝶々に合掌。