5歳年上の姉の後を追いかけていた子供時代。小学1年生で始めたバレエも姉の影響でした。いつも母の背中に隠れていた内気な私でしたが、バレエを始めてから、ステージに立ってパフォーマンスをすることが大好きになりました。先生にほめられるとうれしい。ほめられると伸びるタイプです(笑い)。小学6年生のとき、初めて出場したコンクールで決勝に進出。自信がつき、ますます練習に熱中しました。
将来はバレエ留学で海外へ、プリマバレリーナとしてデビュー。そんな将来を想像していた頃、HKT48の1期生募集がありました。教えてくれたのは母。「ノリ」で受けてみると、最終審査まで残りました。その段階で、普通に学校生活を送るか、芸能界に進むか、と真剣に考える必要がありました。私は迷いなくHKT48の道を選びました。ステージに立ちたかったからです。ただ唯一、10年間続けたバレエをやめることだけが心残りでした。
HKT48に合格後、思わぬ運命が待ち構えていました。キャプテンに指名されたのです。私はそれまでの人生でリーダーシップを発揮したり、人に注意をしたりすることは一切ありませんでした。
穴井なので「出席番号が1番だから?」「くじ引き?」と不思議でした。一度、スタッフさんに聞くと「人柄かな」と言われました。人柄でリーダーになれるものなのか。ますます謎が深まりました。私は几帳面(きちょうめん)で真面目なタイプです。常に準備を万全にして物事に臨みます。
翌日がラジオ出演のときは、台本をしっかり読んで覚えます。台本どおりにする必要はないのですが、台本が大好き。事前に台本がないと心配になります。テレビの企画があると、何を話すか決めていないと眠れなくなります。
小さい頃から、寝る前に翌日の洋服を準備して、かばんと一緒に置いておかないと気が済みませんでした。夏休みの宿題は始まった1週間で終え、日記は毎日、つけていました。
スケジュールはきっちりと立てます。たとえば、休日は朝8時30分に起きて、朝食を食べて、11時に外出。午後にランチと買い物をして夜6時に帰宅。夕食を食べて、8時からのんびり。きめ細かく決め、その通りに実行します。平日も仕事のスケジュールを事前に把握して、現場には集合時間より早めに入ります。月間スケジュールも月初めに教えてもらい、心の準備をしておかないと心配になります。メンバーからは「まじめすぎる」と言われます。
そんな私ですが、もう一つの顔があります。「ドジ」で「ポンコツ」です。おっとりした雰囲気で、舞台でのおしゃべりが苦手。公演でさっしー(指原莉乃)から、「ポンコツ」と呼ばれることも。私はキャラがなくて、どうしようと思っていたので、「ポンコツ」であっても、名付けてくれたさっしーには感謝しています。
「ポンコツ」と「キャプテン」を掛け合わせて「ポンコツキャップ」とも呼ばれるようになりました。確かに失敗はたくさんします。公演前の円陣で一人多いと思ったらスタッフさんを数に入れていたり、少ないと思ったら自分を入れ忘れていたり。楽屋で滑る場所があって、「みんな、ここは滑るから気をつけてね」と注意した後、真っ先に私が滑って転んで、“お手本”を見せてしまいました。
めちゃ笑われて、めちゃ恥ずかしかったです。テレビ番組でも滑った経験があります。HKT48の番組で、特技を披露しようとギターを演奏したら、自分では弾けているつもりが、まったく下手で……。それ以来、ますますポンコツキャラが浸透しました。
几帳面だけどドジ。気をつけてはいますが、一生懸命になるほど空回りして失敗してしまいます。一生このまま。直らないと思います。でも、生活には支障がないので大丈夫です。
しばらくはキャプテンがイヤでイヤで……。自分のことで精いっぱいなのに、他人のことなんて考えられない。何で私がしなくちゃいけないの、って。
特に、私にとって一番の問題は人を怒れないこと。ミスを見つけても言えませんでした。「自分だってできていないくせに」と思われるのが怖かったんです。
雑誌で、たかみなさん(高橋みなみ総監督)との対談があって、リーダーとして「嫌われる勇気をもちなさい」と言って下さいました。相手を思っての前向きな意味とはわかっていても、私には無理。勇気がもてませんでした。
自信がなくてメンバーやスタッフさんによく相談していました。ある時、さっしーに「キャプテンは私でなくていい」と話すと、「いや、ほかにできる人はいない」と言ってくれました。私のキャプテン像はたかみなさんでした。リーダーシップの力は私とはまったく違います。どうしたら、たかみなさんみたいになれるのか。悩んでいたら、AKB48時代に何人もキャプテンを見てきた、らぶたん(多田愛佳)が「みんなが同じタイプのキャプテンだとおもしろくない。自分なりのキャプテン像でがんばればいいよ」とアドバイスしてくれました。おかげで気負いが小さくなりました。
2月、メンバーの移籍やキャプテンの交代が発表される組閣祭りでは、ドキドキしていました。私は交代になるに違いないと。やる気が出始めた時期だったし、キャプテンをまかされたのに全然できなかった、向いていなかった、と判断されると、自信を失ってしまいそうでした。だから、キャプテンの続投が発表されたときはホッと安心。そこから意識も変わりました。らぶたんがチームKのキャプテンに決まったのも心強かったです。それまではチームHのキャプテン一人だけでしたから。
キャプテンをしながら、真面目な性格でよかったと思います。真面目さをいかし、いつもメンバーのことを考えています。個別の仕事でいつも顔を合わせられるわけではないので、ライブの前日は、大丈夫かな、みんな練習してくれるかなと、LINEでこまめに連絡しています。
私は自分一人で引っ張るというより、仲間と一緒に進んでいくタイプのキャプテンです。同期のなつ(松岡菜摘)やはるっぴ(兒玉遥)には何かと支えられています。私が気づかないところでメンバーを見てくれています。はるっぴとは、HKT48のあり方や未来についてよく一緒に話し合っています。
デビューから3年が経ち、自分自身に余裕ができたのも大きいと思います。今年は九州や全国各地でのツアーがあって、2期生や3期生とも今までになかった信頼関係が築けました。だからこそ「嫌われる勇気」も以前よりもてるようになりました。
次々と後輩が入ってくるし、いつまでもさっしーにたよっているわけにも行きません。HKT48の1期生としての背中を見せていきたい。そして、「キャプテンは穴井千尋で良かったね」といつか言ってもらえるように、真面目でドジな私のままでがんばっていきたいです。
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次回は「乃木坂46日々是勉強」。深川麻衣さんです。