郷土食研究会 うまかっぺ!茨城 

茨城の郷土食に関するあれこれ。また、そこから、「食」だけではない、た~~~くさんの、よもやま話などなど・・・

霞ヶ浦のテナガエビ 今昔

2022-09-19 11:57:22 | グルメ

カワエビとも呼ばれるテナガエビ
テナガエビも、霞ヶ浦・北浦の特産の一つです



写真は、行方市麻生地区付近の霞ヶ浦(2022年8月撮影)。
この辺りは昔ながらの沿岸の風景が残ります。

都心からも近い霞ヶ浦。従って活きがよいまま供給できるということで、
霞ヶ浦や北浦のテナガエビ(川エビ)も、高級食材として、東京の料亭やレストランで使われていると聞きます。


【筑波山南麓 飯名神社の初巳祭にて~昔からの風景】


2月初旬の頃に行われる、筑波山南麓の飯名神社の初巳祭。
参道に屋台や出店が並びます。

その中で行方市の方から、釜茹でのテナガエビを売りに来られる業者さんがおられます。

テナガエビは、つくばの辺りではほとんどが甘く煮たものや佃煮として売られていることがほとんどです。
しかしシンプルな塩茹でのテナガエビは、特に最近、あまり見かけません。
土浦や行方の方まで行くと手に入るのですが


そういった訳で、つくば/筑波山麓でシンプルな塩茹でテナガエビが購入できる貴重な場なのが、神社の縁日です
しかも嬉しいことに、生産者直売のためか、お安い♪
というわけで、毎年テナガエビの購入を楽しみにしている人も多いそうで、出店に数人の人が集まって購入している姿を見かけます。
(写真は2018年2月撮影)


私も、2月の飯名神社の初巳祭に行ける時は、必ずこちらで釜茹で(塩茹で)のテナガエビをたっぷり買います。
食べきれないときは冷凍保存可能なのも嬉しい

売り手の方から、おすすめの料理方法も教えて頂いたりと、そういうやりとりも楽しいです

そして、霞ヶ浦の名産が、筑波山麓で神社のお祭りの時に売られているというのは、食や食材の文化 そして、昔ながらの流通や人の行き来が感じられて、感慨深い風景です。

さてそのテナガエビ、その卵は「えびまこ」と呼ばれ、これまた更に貴重な霞ヶ浦の食材。
えびまこを使ったお雑煮は、当ブログでも以前、記事にしましたので、ご参照ください。

 → 霞ケ浦の「えびまこ」のお雑煮

この「えびまこ」、最近はなかなか採れないそうで、2年前、霞ケ浦の『煮うなぎ』()を買いに行ったお店で、『これは7年ぶりに今年やっと採れたえびまこ』ということで、売られていたえびまこをラッキーにも購入出来ました。

お店の方によると、『これは 冷凍しておけばいくらでも持つ』とのことで、冷凍保存して、少しずつ大事に頂いています。

  霞ケ浦の郷土食『煮うなぎ』についても、以前、記事しましたので、こちらもご参照下さい。
 → 煮うなぎ (うなぎの大和煮・うなぎの佃煮)


【テナガエビ漁の変遷】

現在はトロール漁で行われるテナガエビ漁(詳細:参考サイト1)。
 
昔(昭和の中頃までか?)は、『エビダル』という真竹と棕櫚で作った深い篭や、竹簾のような『オダ』、藁をしずめた『ボッチ』、藁と木の枝を鎮めた『草オダ』と呼ばれるものを使って取ったそうです(詳細:参考文献1)。 

昔は小舟で『エビダル』を沢山乗せて霞ヶ浦の沖まで行って、それを沈めて仕掛けておくと、エビダルいっぱいにテナガエビが採れたそうです。

また、『エビダル』を作る職人さんは、土浦や阿見町におられたそうです。

後述する参考文献1に当時の様子が詳しく聞き書きで記録されていますので、ご興味ある方は是非お読みください。

そうやって採られたテナガエビが茹でられて、店に卸す他に、例えば筑波山麓の神社のお祭りなどの屋台で売られ、
霞ヶ浦から離れた土地の人々はそれを買える貴重な機会だった・・・そういった日本の昔の風景が浮かぶようです。


【都内の料亭や高級レストランでも!霞ヶ浦のテナガエビ】

さて、塩ゆでにされたテナガエビの料理方法

この記事冒頭で紹介した、飯名神社の例大祭でテナガエビを売っておられた女性(生産者さん)によると、

小さいものは、茹でたものをそのままでも食べられる。大きいものは身も大きいくて美味しいけれど、エビの足や口のとんがりが口の中で当たって食べにくい。だから大きいものは、フライパンでさっと焼くか油いためすると、それが気にならなくなるのでそれをおすすめします!
とのこと。


なので、美味しく頂けるテナガエビの料理法としては、まずポピュラーなのは、天ぷらか唐揚げでしょう。
小さなものはかき揚げで、大きめのものは一匹ずつ揚げたりしたり。

ちなみに写真中央奥は小さめのテナガエビのかき揚げ、左は大きいテナガエビ1匹の天ぷら(中央の緑の天ぷらはピーマンの天ぷら)。
サクサクとエビの旨味が口に広がって、美味しい

天ぷらにしなくても、フライパンで炒めるだけで、殻も香ばしく、足や口のとんがりも脆くなってこれまた香ばしくなり、美味しいです

さらに、その生産者の女性によると、
キャベツと一緒に炒めて、パスタと和えるのが、家庭料理ではおすすめ』とのこと。
実際、こちらのテナガエビを使っている東京のお店で、そのようにテナガエビを使ったパスタを出すお店があるそうです。
新鮮なテナガエビは、東京から近い茨城県・霞ヶ浦で捕れたものだからこそ!
ですね(^^)



(写真は2021年2月撮影)

昔ながらの長閑な雰囲気の、筑波山麓の神社の縁日の屋台。
大消費地 東京の料亭・レストラン。
霞ヶ浦のテナガエビから、昔から現代まで連綿と続く人々の営みと食文化、そして食材の流通が見えてきます。


**************************************
参考サイト

 1.「茨城をたべよう いばらき食と農のポータルサイト」> 「万能食材 テナガエビ」
   https://www.ibaraki-shokusai.net/season/fish/ebi/

参考文献

 1.『風と波に生きた人々 霞ヶ浦風土記 新装版』 佐賀純一・文 佐賀進・絵 常陽新聞社
    p.186-196 『第七話 波と星とエビダル』
    p.197-206 『第八話 半農半漁の村』


(市川)
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夏の、霞ヶ浦のシラウオ・ワカサギ

2022-07-29 22:21:00 | グルメ
先週7/21、霞ケ浦の今年のシラウオ漁、ワカサギ漁が解禁になりました
特に霞ヶ浦のワカサギ漁は、全国に先駆けて早く始まるのだそうです。

昔は帆びき網漁でしたが、今はいずれもトロール漁とのこと。
帆引き船は、今は観光帆引き船として、期間限定ですが霞ヶ浦で見ることが出来ますね

シラウオとワカサギについては、
茨城県の公式HPの
① ホーム > 茨城を創る > 農林水産業 > 水産業 > 霞ケ浦北浦水産事務所 > 霞ヶ浦北浦の水産物 > シラウオ
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/kasui/shinko/kasumigaura-shirauo.html
② ホーム > 茨城を創る > 農林水産業 > 水産業 > 霞ケ浦北浦水産事務所 > 霞ヶ浦北浦の水産物 > ワカサギ
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/kasui/shinko/wakasagi.html
に詳しいので、こちらを参考にさせて頂きますと、

シラウオは、主に汽水域に生息するサケ目シラウオ科の魚
そして、海水域に生息するイシカワシラウオとも別種の魚だそうです。

7月21日のトロール解禁時の体長は4センチほどで、それが、12月頃には10センチほどに成長するとのこと
12月の漁を「寒曳き」というそうですが、寒曳きのしらうおは、結構大きいのですね。

そしてキュウリウオ目キュウリウオ科のワカサギは、
7月21日の解禁時の体長は6センチほどで、12月頃には10センチ以上に成長するとのこと。

大きく成長したその寒曳きのワカサギを焼いたものを、江戸時代、霞ケ浦沿岸の麻生藩の藩主が徳川家に献上したところ
大変喜ばれて、それ以来「御公儀の魚」として献上されてきたそうです
ワカサギを「公魚」と書くのもこの「御公儀の魚」からとのこと。

この寒曳きのワカザギを串に刺して焼いたものについては、当ブログの以前の記事
 茨城のお正月料理
でもちょっと紹介していますので、良かったらお読み下さい

そして夏に獲れるワカサギは、「ナツワカ(夏ワカ)」と呼ばれますが、夏のワカサギは実は一番脂がのっているそうで、上記のサイトによると
「食用油の入手が難しかった頃は、漁師さんがナツワカを茹でて煮干しを作る際に、浮いた油を集めて農家さんの育てた野菜と物々交換し、揚げ物などに使っていたそうです」
とのこと! 夏にそんなに脂がのっているとは!


7/21の漁解禁直後の初物のシラウオを頂く機会がありました。


しらうおのお造り。

つやつやで透明で、ピンとした姿が美しい
口に入れると、全く匂いはありませんし、特徴的なのは、なんといっても野菜のようなサクサクした歯ざわりと滑らかな舌触り。
そしてさっぱりながらも、旨味もしっかりあって、美味しかった


こちらは、霞ケ浦の幸の天ぷら盛り合わせ。
緑の美しいピーマンの天ぷらに、赤いのは川エビのかき揚げと天ぷら(小さい川エビはかき揚げ、
大きいものは一匹ずつ天ぷら)、そして白い魚がたくさんあるのが、シラウオのかき揚げ。

お造りで頂くシラウオとはまた違う味わい。
熱々サクサクの衣と一緒に、衣に負けないシラウオの味わいが口に広がります。

※霞ヶ浦の川エビ(テナガエビ)についても、またいずれ触れたいと思います。
 川エビの天ぷらも、甘くて、サクサクして、美味しかったです。
 なお、川エビ(テナガエビ)の卵は「えびまこ」と呼ばれる稀少な食材。
 当ブログでも、以前、「えびまこ」について書いておりますので、良かったお読み下さい
 霞ケ浦の「えびまこ」のお雑煮



お土産に購入した、初物のしらうおの煮干し、同じく初物のワカサギの煮干し。
そして寒曳きのしらうおの煮干しも購入。

写真奥は、新物のワカサギ(夏ワカ)の煮干し。
写真手前の右は、新物のシラウオの煮干し。
そして手前左は、(多分冷凍保存されていた)寒曳きのシラウオの煮干し。
大きさの違いに注目!

一般に「煮干し」と言うと、からからに乾いた固い干し魚をイメージされるかと思います。
ところが、霞ヶ浦沿岸の、ワカザギ、シラウオなどに「煮干し」は、柔らかい半乾燥状態。
「しらす干し」を想像するとイメージしやすいと思います。
塩味がついているので、そのままでご飯のお供にも、お酒のお供にも、とても美味しい

でも、もっといろんな食べ方を知りたいですよね。
そこで
霞ヶ浦沿岸、行方市では毎年、地元食材を使ったレシピコンテストがあり、入賞したレシピは公開されています。
その第4回レシピコンテストが「川魚」で、美味しい食べ方がいろいろ紹介されています。

 詳細 行方市地域ポータル「なめがた日和」 > 第4回 行方レシピコンテスト【川魚】結果発表!!
 https://namegata.mypl.net/mp/recipe_namegata/?sid=66647

実は、以前も書きましたが(私事で恐縮ですが)、そのレシピコンテスト第4回「川魚」レシピコンテストの
「鯉・ワカサギ・シラウオ・川エビの加工品を使った部門(主食・おかず)」で入賞させて頂いたことがあります。
料理名:「おこげの「霞ヶ浦の恵み」あんかけ」

こちらのサイト
なめがたブランド戦略会議 https://namegatafoodvalley.org/
に、レシピが公開されていますので、ご覧になって、是非おうちで作ってみて下さいませ♪
「おこげの「霞ヶ浦の恵み」あんかけ 」

私のレシピ以外も、もちろん、とても美味しそうなレシピばかりです!
レシピコンテスト開催を続けておられるのってすごいと思います。継続は力なり!ですよね


海も、山も、湖も、平野(田畑)もある茨城、食の宝庫だとつくづく思います

写真は、行方市麻生地区から見た霞ヶ浦(2022年7月撮影)


【その他の参考サイト】

茨城をたべよう いばらき食と農のポータルサイト

茨城をたべようTOP > いばらきの農林水産物 > シラウオ
https://www.ibaraki-shokusai.net/brand/shirauo/

(市川)






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すかんぽ(いたどり)の春芽

2022-04-13 18:47:44 | グルメ
先日、ヤマザクラも美しい筑波山麓を歩いていると、山菜らしい植物を抱えて歩いているおじちゃんがいました。

すかんぼ」とのこと。そして、
これの皮を剥いて、生のまま、味噌をつけて食べると旨い!」とのこと


その時の足下には、同じ植物が群生していました。
おじちゃんは、道から離れた山の中で採ってこられたそうです。

一つ頂きました


写真は頂いてから2時間ほど経ってしまっているので、少々葉が萎れていますが、茎はみずみずしい

私の実家の方では、「すかんぼ」は「スイバ」の別名ですが、これは違う植物です。
調べると、これは「イタドリ」でした。

「イタドリ」を「すかんぽ」と呼ぶ地域と、「スイバ」を「すかんぽ」と呼ぶ地域があるようですね


ちなみに「スイバ」はこちらの植物です。
写真がピンボケでごめんなさい

実は私は、今回「イタドリ」を初めて見ました

皮をむいて生のままで、味噌をつけて食べるとのこと
「お酒のおつまみに最高」とのことなので、早速試してみることに。


フキのように、皮は手で筋に沿って縦に簡単に剥けます

皮を剥くと、美しい緑色
そして、水分を多く含んだ、瑞々しい茎。

そのまま茎を囓ってみると、サクッとした噛みこごちで、豊かな水分と共に、爽やかな酸っぱさが口に広がります。
特にえぐみもしぶみなどもありません

山を歩いていて、喉が渇いた時に、これを見つけてかじるという話も聞きました
確かに、酸味が、疲れにも喉の渇きにも効きそう


味噌をつけて食べると・・・。

これは美味しい! 

酸味が味噌と調和して、とても食べやすい。
酢味噌は、酢の香りが強いですが、これは特に強い香りもないですし、サラダのようで爽やかで、あとを引く美味しさ。

たくさん、すかんぽを採っていたおじちゃんの気持ち、分かりました

春の山草、地元の方は、いろいろ堪能されているようです

(市川)

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赤餅・もろこし餅

2022-02-01 20:58:01 | グルメ
昨年末に坂東市に行く機会があり、「坂東市の名産品」(坂東市名産品会 発行)というパンフレットを見つけました

その中で「郷土食」の「赤もち」を最中に入れた創作和菓子がありました。
古くから郷土食として親しまれてきたモロコシ原料の赤もち」の一文に、私はくぎづけ

写真をみる限りでは、最中の餡の中にある四角いお餅は柔らかそうで、滑らかな感じです

残念ながら、その日は時間が無くて、紹介されていた和菓子は購入出来なかったので、
坂東市の「赤もち」がどういうものかまだ知らないのですが
「赤もち」という初めて知るお餅の名に惹かれて、調べてみました


★もろこしとは?★

まず、「もろこし」とは、別名、「たかきび」「コーリャン」「ソルガム」とも呼ばれるとのこと。
・・・「コーリャン」という名は、中学・高校の頃の地理で、中国の農産物として習った記憶があります。
そして、中国のお酒「白酒(パイチュウ)」の原料・・・酒好きなので、ついそんな連想が(笑)。

余談は置いといて、大事なポイント
「もろこし」という名前から、「とうころこし」や「きび」とも混同されやすく、
 ・もろこし/たかきび/コーリャン:イネ科モロコシ属
 ・とうもろこし:イネ科トウモロコシ属
 ・きび:イネ科キビ属
で、それぞれ違う植物です(Wikipedia「モロコシ」より)。

・・・勉強になります。


★「あか餅」について文献で調査★

さて、「もろこし」=「たかきび」を使ったお餅「赤もち」「もろこし餅」について手元の文献等で調べました。
すると以下のようにいろいろあるようです。

(1)農林水産省ホームページ 食文化 > うちの郷土料理 > 茨城県 赤餅(あかもち)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/akamochi_ibaraki.html
こちらのサイトに、「赤餅」の写真とその云われや、原料の「もろこし」の写真があります。

こちらのサイトによると、
鎌倉時代ごろ、阿弥陀寺中興開基安養上人が、「赤餅」の原料であるもろこしの種を生国である現在の群馬県より坂東市長須の地に持ち帰り伝えられたといわれている
とのこと。

やはり、板東市の郷土食ですね!

また「もろこし」についても説明があり、
もろこしは、イネ科の1年草で、夏になると穂がなり、秋の収穫の時期になると、赤紫色に変化する栄養価の高い穀物」で、

稲や小麦が育ちにくい地域でも育てられることから、利根川、那珂川(なかがわ)、久慈川流域の農村地帯など、よく水害が起こる地域で栽培されていた

とのこと。
昔の人々の生活の知恵が伝わってきます。

なお、こちらに紹介されている「赤餅」のレシピは、後述する(2)の文献(「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」)から引用されたものです。


(2)「いばらきの味-郷土料理献立集 食・彩・百・景」(茨城県衛生部成人病対策課 編集・発行 1995年1月発行)

こちらは上記(1)の農林水産省の「赤餅」の記事の参考文献となっています。
旧 岩井市(現在の坂東市)の「赤餅」として紹介されています。
作った赤餅や、たかきびの実がたわわになった穂も写真になっているので分かりやすいです。
この写真から、やはり、ここでいう「もろこし」は「たかきび」なのが分かります。

 材料: もろこし粉、湯、きな粉、砂糖
 おおかまな作り方: もろこし粉に湯を入れ、耳たぶくらいの柔らかさになったら丸める。
           それを茹でて、熱いうちに、きな粉をかける。

砂糖ときな粉を使うので、甘くして頂くお餅ですね


(3)「聞き書 茨城の食事 日本の食生活全集⑧」(発行:社団法人農山漁村文化協会)

こちらの文献では、同じ「もろこしもち」の名で、県央畑作地帯、北部山間地帯、鹿島灘沿岸 それぞれの食として紹介しています。
ただし、いずれも写真がなく文章だけなので、「もろこし」が「たかきび」なのか実ははっきりしません。

 ① 県央畑作地帯の「もろこしもち」 
   概要:
   もろこしは「もちもろこし」を使う。精米所で搗いてもらい、もち米と一緒にひやし、せいろでふかす。
   3割くだいもち米を入れた方がいい。
   搗きたてのうちにあんをまぶして食べる
   残ったら円筒形にして輪切りにしておく。焼きながら、醤油、きな粉、あんをつけて食べる。
   「冷めるとまずい」とのこと。

   筆者註:ここでいう「もろこし」は「もちもろこし」という記述から、
       もしかすると「きび」かもしれません。
       きび(黍)には、お米と同じように、「うるしきび」と「もちきび」がある
       とのことなので、「たかきび」でなくて「きび」を使った餅の可能性があります。
       この書籍には写真がないので詳細は不明ですが。

② 北部山間地帯の「もろこしもち」
   概要:
   精白したもろこし二升と、もち米1升の割で搗く。
   焼き餅にすると香ばしく、腹にもたれない。
   また薄く切って干しもちにし、春先の間食やお茶菓子にする。
 
 ③ 鹿島灘沿岸の「もろこしもち」
   概要:
   寒中、もろこしを搗いて水にさらす。毎日水を取り替え1ヶ月くらいおく。
   それを二、三日からからになるまで干して、それを石臼で粉にしたものを団子にする。
   茹でてお汁粉に入れる。つるつるしておいしい。
   もろこし粉を「もろこしの寒ざらし」というとのこと。

「赤餅」「もろこし餅」も、作り方も食べ方もいろいろあるようです


★「おらげの赤餅」にトライ!★

で、とにかく、実際に作ってみました

「もろこし」という名では売られていることは少ないようですが、
「たかきび」という名ですと、市販品もあり比較的手に入りやすいです。
私はつくば市内の自然食材のお店で購入しました。

昔はもち米の代わりに使われたとのことですが、現代ではたかきびの方が高級食材です・・・

上の参考HPや文献にあるような粉は手に入りませんので、たかきびは粒のままもち米と一緒に炊いたものをすりこ木で搗いて餅状にして、作ってみました。

レシピも上の文献からも特に決まってはいないようなので、まずはトライ
「おらげの赤餅」ということで、今回のように作ってみました

★材料★
たかきび 120cc
もち米  80cc

(合計1合程度)

お好みの調味料:今回は醤油
 砂糖、きな粉、小豆あんなど、お好みで。

★道具★
すり鉢
すりこぎ
クッキングシート
オーブントースター

★作り方★
1.たかきびは1日ほど水につけておく。

2.もち米は洗った後、30分程ざるにあげておく。

3.炊飯器に、1と2を入れ、1号の米を炊く時と同じ分量の水(炊飯器内釜の1合の目盛り)を入れて、普通に炊く。

(写真は炊き上がったものをすりこぎに移したところ)


4.すりばちに炊きあがった たかきび+もち米を移し、すりこぎで粒々をつぶすようにして搗く。

 機械で搗くとなめらかなお餅になると思いますが、根性のない私が数分程度すりこぎで搗いたもので、たかきびのつぶつぶが残って、素朴といいますか、ちょっとワイルドです(笑)。もっと長い時間丁寧にすりこぎで搗いたら、もっと滑らかになるかと思います。

 また上の文献にある赤餅は、もろこし粉から作ったり、専門の所で搗いてもらったりするようなので、実際はこの写真のものよりずっと滑らかで、たかきびの粒々は残っていないかと思います。その点、ご理解下さいませ

★食べ方★

①まずは、つきたてに、お醤油をちょっと垂らして。

 私が作った「おらがの赤餅」は一見ワイルドでつぶつぶは残っていますが、柔らかいです。
 (数分程度のすりこぎでの搗きでも十分柔らかく美味しい
 クセが全然なくて、食べやすいです。もち米だけのものより少し歯ごたえがある感じです。
 ぱくぱく食べられちゃいます


② 次に、残りをクッキングシートの上で薄く広げ、そのまま1日ほど乾かしました。

(写真は1日乾かしたもの)
表面は乾き、中はまだしっとりしているセミドライの状態ですが、これを食べやすい大きさにカットして、オーブントースター(1000W)で7~8分ほど焼いてみました。

 
それにちょっとお醤油を垂らして頂きましたが、香ばしくてとてもおいしい
家族から「また作って」とリクエストがあったくらいです
 
今度作る時は、もっとお餅をからからに乾かしてみたものを、焼いて食べてみたいです

すり鉢とすりこぎで、手で搗くと量は沢山作れませんが、ちょっとしたおやつにはちょうど良い量かもしれません。
たかきびが手には入ったら、是非お試し下さい。
素朴な味わいで、実においしいです 


また、実際に「赤餅」・「もろこし餅」を召し上がったことのある方、是非、教示頂けると幸いです。



(市川)
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「祝い食」にも地域の魅力が♬

2021-08-23 20:26:14 | グルメ
チョー、久しぶりとなる投稿です。いつもコンビの市川さんにおんぶにだっこでこのブログ・・続いております・・
感謝です

今回のテーマ「祝い食」ですが、実は、このテーマ、江田がパーソナリティをしている番組で、メッセージテーマとした時に、地域食に触れる興味深いメッセージを頂きました。コンビの市川さんから、そういうメッセージもったいないから、ここに載せたいよね♪とのアドバイスがあり、そうだそうだ!という事で、こちらにUPすることになりました

番組のメッセージで興味深い祝い食が2つ

1つが県西の(下妻など)「うどん」です。お祝いの席で、皆でうどんを食べるというメッセージを複数頂きました。
お酒の席だからの、一般にいうところの締め?で出るのかと聞いたところ、
しめではなく、普通に「祝い食」の一品として、卓上に出るとのことです。
その日のゲストに、茨城、茨城の自然に非常に詳しい方が出演してくださっていて、
そのお話をしたところ、県西地区は、小麦が良く獲れるという事を教えてくれました

なるほど、やはり地産は関係するというところでしょうか?

その地産からというのが明らかなのが、
2つめの行方地域(旧麻生や玉造)や鉾田などでの「鯉のうま煮」です。


まさしく、この地域で名産の鯉を使った料理が「祝い食」とのことです。

リスナーの”いもむすこさん”(御本人了解)からの多大なご協力でのお話をもとにで、
上の写真のように、鯉を輪切りにしてのいわゆる甘露煮にしたものだそうです。

家庭や業者によって、味付けが多少違ったり、ちょっと泥臭い場合もあったり(笑)とのことです。
業者、といいましたが、さすがに名産品なので製品化されていて、
市町村によっては、ふるさと納税の返礼品にもなっているようです。

「鯉のうま煮」、と検索すると、長野、上越方面でも、地域食としてあがってきますが、
この地域の養鯉屋さんがそちらの鯉処地域にも鯉を卸しているとのことですから、本場ですね。

この「鯉のうま煮」ありとあらゆるお祝い事の席で頂くそうで、
他の一般的なお祝い食と卓上に並び、
その場で食べなかった場合はお持ち帰りなどにするそうです。
しっかり、煮てあるし、味付けもしっかりなので、持ちもよさそうですね

いもむすこさんは、幼少期から食べていて、いつからかなど明確ではないとの事です。
それくらいなじんだ一品という事になるかもしれません。
地域ならではの食が、「祝い食」というお題の時に、ぱっと浮かぶ

そういう食があるって、とても魅力的だと思いませんか?

(江田)







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