今年は古希という人生の区切りの年齢で幕を開けたので、しばらく私の建築について振り返って見ようと思う。初めにちょっと変わったところから。
私は人間性豊かな集住体という研究会を主宰していた時期がある。
そこで議論したかったのは、建築が街になっていく要素、街になるために必要なことはなんなのか?ということで、突き詰めて言えば建築の集合体はどのようにして街になるのか?ということ。
そこでの結論は建築が集まっているだけではダメで、建築に個性が反映されていて、かつそこにコミュニケーションが生まれ、「人間的コミュニティを形成できるか」どうかという点にあるということで、どのようにすればそれを実現できるか?が課題だった。
そこで実践的にそれを実現すべく、研究会メンバー数人が核となり、あるところでコーポラティブハウスを企画、建設、運営支援まで行い、コミュニティの創出を計画することとなった。コーポラティブハウスを選んだのは、家づくりの各段階から共同で話し合いをして完成後の住まい方の方向性を共有できると考えたからだった。
その際、研究会でコミュニティについて話し合っていた「ズカズカベタベタはダメ」というベースを守りつつ、共有の何かをコミュニティの核になる何かが必要と考えていた。研究会のメンバーの一人が「農ある暮らし」というコンセプトを提案し、中庭に農園を作りそれを囲んで住戸が配置される形式でコミュニケーションを誘発することを考えた。
このコーポラティブハウスが実現した背景や手法の概要は建築学会で発表したが、かいつまんで言えば、「定期借地権方式」「借地権終了時買取特約」「スケルトンアンドインフィル方式による自由設計」「農ある暮らしという明確なコンセプト」と言える。
元は農地だったところなので、農地転用など法的な解決も必要だったが、各方面の協力を得て無事実現できた上、出来上がった後が素晴らしかった。
4軒の参加者たちは土地の段階から共同でことに臨み、定期借地契約、融資、設計、施工段階と進めてきたこともあり、完成後には農園クラブを作り、4季に応じたお祭りを行なっている。さらには近隣の方々にも農園に参加していただけるような活動を展開した。これはコミュニティの卵を育てていることと言える。
これからもこの人たちを暖かく見守っていきたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます